盛り上がりばかりが先行することは試合そのものを骨抜きにしかねない。「田村ー桜庭」など…
鈴木みのるが語る無観客ヒール論。「前提をお前ら、忘れてねえか?」
https://number.bunshun.jp/articles/-/844652?
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客を沸かせる、盛り上げるっていうのは、相手に勝つっていう前提のもとにやることであって、『その前提をお前ら、忘れてねえか?』《本文より》
ホントそれだと思うね。
また本文中には「最近、勝つことより盛り上げることが大事みたいな声をよく聞くけど、いつの間にかプロレスの価値観というものについて、見ているお客も、やっている選手たちも、仕切ってるプロモーターも、なんか勘違いしてるんじゃねえか? って思う。」という言い分もあったが…これについてもしかり。
そして…そこまで読んで思い出したのが、いつぞやの
「田村潔司vs桜庭和志」。
試合を盛り上げるのは大事。
だがそれは、本来選手の闘いぶりで決まるもの。
両者の闘いの中味の濃さ。それに比例・追随するような形で観客が痺れ、結果的に「会場全体が沸いた」というものに繋がる。
ところがこの期待されたはずの「田村vs桜庭」の一戦…解説をしていた高阪剛のように好意的な見方で理解を示す人も少なからずいた。
しかしその反面…失礼恐縮を承知で言わせてもらえば…この試合を『凡戦』としてしか見れなかった人たちも少なからずいたはずだ。実際先輩の田村と親しかった垣原賢人などは「田村さん…本当はU(UWF)の闘いに思い入れなんてないのかも…」と残念そうに呟いていたらしいが…その言葉など象徴的だと思う。
そのコメントには無念さが滲み出ているように思える…
私自身も同感だから、その気持ちはよくわかる。
だが、本人たちにしてみればどうだろうか?そもそも本人たち、2人とも馬乗り状態からのパンチだけの膠着ばかりで納得いく試合ができたのだろうか?思うような試合がお互いできたのだろうか?
できてないんだとしたら主催者側にも責任があると考える。なぜなら試合前の煽りVTRがあまりにも露骨すぎたからである。決してウマが合うとは思えない2人の性格…元々ともに所属していたUWFインターナショナルから離ればなれになってからの2人の生き方の違い…いろいろ考えれば様々な興味を呼び起こすのも無理はあるまい。
しかしだからといって、このときはやりすぎた。
おそらくこの試合前の過剰な「煽りVTR」ばかりが先行しすぎて2人が意地になってしまい、お互いに「負けられない」という意識ばかりが働いてしまい、気持ちが守りに入ってしまったのではないか?
そしてそうした気持ちが強すぎるあまり、本来の持ち味がまったくでないままタイムアウト…
結果的に判定勝ちを収めた田村にしても然り。
田村自身も口にしていたが、「相手に攻めさせて攻めさせてそれを凌ぎ、持ち味を全て出させたあと今度は自分がガッと攻めるとそこに美しい攻防が生まれる」といったような話を聞いたことがある。それをわかっているはずの田村本人がこの日の桜庭に「攻めさせる」ことはほとんどなかった…
つまり勝った田村にもそれだけの余裕がなかった。
だから思うのである。もし2人にとって本来の試合ができていなかったのなら…負けた桜庭はもちろん、勝った田村にとってもあの内容では不本意だったというのであれば「やる前から盛り上げることに現を抜かしまくった運営側の責任」という理屈が成り立つと思う。もし私の考え通りならこれこそ、「盛り上げよう」という思いばかりが高揚したことによる「弊害」以外の何物でもない。カードがカードだから当然勝敗への興味もあったはずだが、勝ち負けを凌ぐような喧騒、例えば2人の因縁だとかはとりあえずほどほどにして、試合後に改めて語ってもよかった…
結局のところ、あの内容で満足したファンや観客がいたとしてもその数はかなり限られていたはずだ。
もちろんベストな試合ができなかった2人も気の毒。
(ただ、それも含めて「彼らはプロだからね、そんな言い分は通じないよ」といった言葉も出てきそうだが…)
だがこんなケースは象徴的なものであって、こうしたある意味「逆転現象」とも言える「『単なる』盛り上がり」と「勝ち負け」(いや正確には『勝ち負けを両者がお互い追い求めることで奏でる会場全体の感情のうねり、など』)の本末転倒は…実は結構多いのではないかと思う。私自身もそれに対して「何か変だ!何か違う…!」と思ったことは何度かある。
で、話を戻すと冒頭の鈴木みのるの「無観客ヒール論」に行き着くわけである。そう、盛り上がりなど枝葉のようなことばかりが一人歩きするあまり、一番肝心な「勝負論」がどこかへふっとんでしまうのである。
「歌を忘れたカナリア」ならぬ「勝敗を忘れて、盛り上がりばかりを求めた闘い」…
盛り上げるというのは相手に勝つという前提のもとでやることであって、『その前提をお前ら、忘れてねぇか?』
鈴木みのるの言葉である。
こうしたプロレスや格闘技に限らず、自分に都合がいいからだかなんだかはそれぞれだと思うが…だからといって一番大事なことが抜けた状態で物事を進めると見事なまでに腑抜けた結末が待っている…
それこそ「背骨を抜かれたイカ」のようなことにもなってしまう…そうなったらどうやってその責任をとる?そもそもそうなったらその責任をとることなんてできるのか?というところで"本題を"結ぼうか…
※で、余談…
これも本文中のみのるの言葉だが、「もしレスラーで『勝ち負けより、いかに盛り上げるかが大事』なんて言うヤツがいたら、『じゃあ、全部負けろよ』っていう話なんで。」
いかにも彼らしい、傑作な言い回しだ…(笑)




























