少し前のお話しになるのですが、私の生まれ故郷でもある 和歌山県田辺市 に私用がありましたので、今回はマイカーでは無くJRを利用して訪問することにしました。

 

ただ、早くて快適な 特急くろしお号 を利用しても良かったのですが、さりとて先を急ぐ用事でもありませんし、先ごろ自由席が廃止されて料金が割高になったことも相まって、普通列車に揺られることにしました。

 

     

 

最寄りの堺市駅を始発で出まして、和歌山駅で乗り継ぐのは 紀伊田辺行きの普通列車 で、発車は6時53分でした。

 

     

 

ただ、訪問したのがたまたま日曜日でしたので、4両の車内は2~3割ほどの乗車率とガラガラでしたが、平日のこの時間帯であれば通学する学生らで立ち客も多いんじゃないでしょうか?

 

     

 

また、車両は関空快速などと同じものが共通運用で組まれていますから、すこぶる快適でしたし、海南駅を出ますと右手に和歌山湾を望めますので、少しだけ旅情のようなものがこみ上げてまいります。

 

     

 

 

 

さて、これより箕島、湯浅などに停車していきますが、やはり旅客流動の先細り路線ゆえに乗るよりも降りる方が多いので、車内は閑散としてまいりましたが、およそ1時間ほどで 御坊駅 に到着しました。

 

     

 

和歌山駅からここまでの距離は54.6kmですので、 表定速度に直しますと約52km/h  ですから、並行する国道42号線のマイカーの速度と比較しても遜色が無いどころか、案外健闘している方だと思いました。

 

ただ、これは国鉄時代に紀勢本線の 複線化を推進した効果 の賜物でもありまして、特に昭和40年代以降には道成寺~紀伊田辺を一部が高速仕様の別線で建設されたことが功を奏しているとも読めるのです。

 

     

 

ですから、特に減速を強いられる急カーブもほぼ皆無なことと、比較的新しい車両を集中配備したことも相まって、紀伊田辺までの所要時間は1時間50分ほどでしたから、国鉄時代の 急行きのくに号 より少し遅い程度のスピードであって、それほど苦にならない道中でした。

 

     

※急行きのくに号/和歌山~紀伊田辺は約1時間40分程度。

 

 

 

 

さて、紀勢本線と言いますと背後に温泉などの観光地を控えておりますので、特に 大阪方面から直通する観光客 は、特急くろしお号に誘導されますが、延伸する 高速道路 の影響もありまして、ジリ貧とまでは言えないものの、今後は微減に推移していくものと予想されます。

 

     

 

また、今回の和歌山駅~紀伊田辺駅までの運賃は1690円に対して特急に乗ると3220円になりますが、普通列車を通しで乗車する者は皆無に等しいものの、地元客の流動も確実に存在しています。

 

ただ、言っも一家に一台どころか 一人に一台マイカーを保有 している地域ですから、主な顧客はやはり主たる乗客は 交通弱者 でもある学生が中心のようです。

 

     

 

 

 

現在の我が国が抱える問題の 人口減少 は、この和歌山県下でも如実に表れていまして、今後の紀勢本線でも更に列車本数の削減などが断行されると思われます?

 

     

 

 

 

他方、輸送密度(一日に通過する人数の平均)に関しては、和歌山~白浜で 6797人/日 ですので、極端な赤字路線では無いものの、ほぼ同じ密度の路線は…

 

姫新線 姫路~播磨新宮 6686人/日

播但線 姫路~寺前 7539人/日

ですから、これら単線で日中2両のほどの輸送量しかない区間と、特急くろしお号も含めた紀勢本線の人数が拮抗しているのが現状なのです。

 

 

 

このようなこともあって、少し前までは和歌山~紀伊田辺までの普通列車4両通し運用が大半でしたが、近年は御坊止まりで以遠は2両の ワンマンカー に連絡するようになったものの、こと現状の旅客需要から見てみますとベストな形ではないでしょうか?

※53.10電化当初は和歌山~紀伊田辺が6連、紀伊田辺~新宮は4連の運用。

 

※御坊以遠の2両編成ワンマンカー

 

     

 

     

 

2024年、天王寺~和歌山~紀伊田辺の運用

 

     

     

 

 

ですから、今後は和歌山市内への通勤・通学輸送(和歌山市のベッドタウン)が一定数見込める和歌山~箕島を日中4両30分ヘッドのまま残し、以遠はコストカットが図られると予想しますが、そう簡単には行かない事柄も少しあるように感じました?

 

 

 

 

 

実は、2020年春、紀勢本線の和歌山~紀伊田辺の全駅に  ICOCA(イコカ) が導入されました。

 

 

     

 

 

ただ、これと並行して あまりにも強引に無人駅化を推し進めた 結果、今回乗車した和歌山駅を除く以遠の駅で、終日駅員の居る駅は皆無 になりましたし、特急が停車する藤並駅、湯浅駅、南部駅では 完全に無人駅 となってしまったのです。

※箕島、御坊、紀伊田辺は日中の一部時間帯のみ有人/海南はほぼ無人に近い状態。

 

 

ですから、悪知恵が回る者であればいとも簡単に 無賃乗車をやりたい放題 の状況にあるのです!

 

     

 

 

 

これは無人小売り店のシステムと同じ 性善説 に立った考え方であって、無人駅では普通「入る時にタッチ」 「出る時にタッチ」で清算が完了するのですが、両方が無人駅ですとタッチせずに突破したとて、誰にもとがめられないのです。

 

     

 

ですから、実際行きの列車は車掌が乗務するツーマン列車であったものの、途中の無人駅ではドアの開閉だけで 集札する様子は全く無く 、これが地方私鉄などと大きな違いであって、やはり安易なコストダウンの弊害が、運賃の取りこぼしという結果に繋がっており、私から見るとやはりJRは 親方日の丸根性 が全く抜けていない印象がしました。

 

 

 

加えて、前述のように 特急停車駅であっても窓口が廃止され 、その代わりに みどりの券売機 が設置されたものの、これまた高齢者を含めた機械音痴には使いづらい代物ですし…

 

     

 

あまり書きたくは無いんだけれど、例えば南部駅から湯浅駅まで 特急くろしお号 を利用するので指定券だけ持っていれば、基本車内改札の対象から外れるのです。

※乗車前に指定券を取ると車掌が持つ端末に表示されるので、近年はキップを拝見されることがありません。

 

     

 

すなわち、指定券だけ持っていさえすれば「きっぷの拝見」に来ないので、その両方が無人駅であった場合、要は 乗車券を買わずして悠々と安価な旅が楽しめる 訳なのです!

 

 

 

 

更に、現状は無人駅となって数年しか経っていませんが、無人ゆえに老朽化や設備の破損などが頻発するのは火を見るより明らかですし、実際トイレなどの状態が悪い駅も散見できました。

 

     

 

ですから、今はまだ持ちこたえています…

 

けれど、公共交通機関であるがゆえに、自社の考え方だけで何でも推し進めるのでは無く、これからは地元自治体と手を携えて協力し、必要な人員はOBやシルバー人材を積極的に活用するとか、例えば交番や役所の支所などと駅を併設するなどのアイデアをどんどん考えていかなければならないでしょう!

 

     

 

 

 

JR西日本の路線は、特に 赤字ローカル線 と言われるものも多く、まずはそちらの方向性を探るのが先かも知れません?

 

しかし、このように和歌山や岡山、広島や鳥取などの地方都市近郊の路線は、黒字化は絶望的であってもおいそれと廃止には出来ませんので、将来的かつ長期に渡って 気持ち良く利用していただく施策 を考えると共に、アホのひとつ覚えのように 何でもかんでも無人化(コストダウン)するのではなく 、何らかの手を打つターニングポイントに来ているとのではと感じました。