戦後、三公社五現業のひとつとして誕生した 日本国有鉄道 は、昭和62年3月にその歴史を閉じ、民営分割化を経て現在はJRとして地域の足を担っています。

 

     

 

あれから36年…

最後に高卒組で国鉄に入社した私の同期らが来年定年を迎えることもあって、これからのJRは 国鉄時代を知らない世代 ばかりで進んでいくことになるのです。

 

そして、JRとして発足当初からくすぶっていた事案のひとつとして、赤字を抱えるローカル線はどうなるのか?という疑問に対し、当時の自民党は胸を張って 廃止はしません! と断言しているますよね?

 

     

 

しかし、「うどん屋の釜」よろしく 言(湯)うだけ だったことは今から考えると明白であって、最近にわかに 廃止前提 での議論が繰り広げられているのは、ご承知の事実だとも思います。

 

 

 

 

まあ、山あいの線路を1両で走るローカル列車は、絵になると言えばそうかも知れないけれど、例えばJR西日本管内で中国地方を走る芸備線は、100円の運賃収入を得るのに 28678円の経費 がかかるのですから、さすがに民間会社として未来永劫まで存続されることは、現実問題として不可能と言えるでしょう。

 

     

 

では、なぜそうなってしまったのでしょうか?

 

 

 

そもそも鉄道と言うのは政治利用されることが多く、戦前から昭和30年代頃までは 我田引鉄 という言葉にもありますように、地方の議員らが 「おらが村にも鉄道を通す!」 と公約を掲げ、国鉄が好むも好まざるも関係なく、当選すると半ば強引に鉄道を敷設させました。

 

     

 

そして、その建設費の全てが国鉄の負担としてのしかかったことから、昭和39年に赤字に転落して以降は 雪だるま式 に借金が増えてしまい、昭和50年代に入りますと、もうどうにもこうにも行かないところまで来てしまったのです!

 

     

 

 

 

 

ただ、当の国鉄としても手をこまねいていた訳ではなくて、 国鉄再建法 に基づいて、それまで全国統一だった旅客運賃を幹線と地方交通線(ローカル線)に分け、ローカル線を少しだけ値上げしたり…

 

はたまた、輸送密度が4000人未満の路線を 特定地方交通線 と位置づけ、要はほとんど客が乗らない路線は廃止するという荒治療を行った後、少し身軽になった状態でJRに引き継がれたのでした。

 

     

 

 

 

 

しかし、あれから30年余り…

 

     

 

 

当時の社会情勢と今日とは大きな違いがありまして、例えばマイカー保有台数が4000万台弱だったのに対し、現在は6000万台を超えていますし、高速道路や幹線道路の整備も飛躍的に進んでいるんですね今は!

 

ですから、地方に行けば一家に車が2~3台と言いますか、一人一台が当たり前の時代ですから、わざわざ一日数本しか走らないローカル線には、免許をとれない高校生くらいしか乗らなくなってしまいました。

 

     

 

すなわち、客が乗らないから減便→さらに乗らないといった負のスパイラルに陥っているのが今のローカル線の現状なのですが、だからと言って 民間企業が赤字垂れ流しを放置できるか どうか?と言うことなのです。

 

 

 

 

上に書いたように、輸送密度4000人未満が廃止対象となったローカル線は、例えばJR西日本に限って言いますと、その半分の2000人すら達成出来ていない路線が、今や社会情勢の変化なんかも受けてこれほど多くあるのです。

 

     

 

よくよく見てみますと、 特急列車が走る紀勢本線や山陰本線 ですら2000人に届かない輸送密度しかありませんから、逆の見方をしますと地域間の普通列車はほとんど客が乗っていないでしょうし…

 

石灰石の貨物輸送が好調だった山口県の美祢線も、荷主の宇部興産が自前のトラック輸送に切り替えてからは、全く寂れてしまいましたね…。

 

     

 

 

もちろん、JR西日本はドル箱の新幹線や大阪近郊で利益は上がっているものの、その利益をローカル線に補填したところで、このまま人口減少を含め更に社会情勢が大きく変わりますと、これらがいずれ破綻するのは火を見るよりも明らかではありませんか?

 

しかし、 「地域が廃れる!」 という理由だけで、地方自治体はその交渉のテーブルにすら付いていませんが、そろそろ互いが腹を割って着地点を決めなければならない時期に来ているのは間違いないのです。

 

 

     

 

絶対に鉄道がいる?

バスではダメなの?

 

そもそも、普段鉄道に全く乗らない者たちが 「イベント列車を走らせて観光客を呼び込もう!」 なんて他人事のように言うけれど、五月雨式に単発花火を打ち上げたところで、その膨大な赤字を埋めることは100%出来ないのです。

 

つづく