今日の朝刊の一面は、その大半が 福知山線脱線事故 に伴う、歴代3社長の無罪確定の記事であった。

 

言わずもがな、未曾有の大惨事でもある脱線事故は、その多くの遺族らからすると、納得いかない判決なのは当然であるが、最高裁の判決がであるがゆえに覆ることは無いであろう…。

 

 

そして、特に矢面に立たされている 井手正敬社長 (写真左/歴代社長)は、今ですら遺族との面会を避けていると言われているが、失礼ながら寸分の余地があるとするなら、彼の功績にも触れてみたいと思う。

(敬称は略します)

 

 

 

国鉄が組織としてどうにも行かなくなり、多額の借金もあって民営化され、時の世論の大半が賛同したこともあって、新生JR各社が誕生したのは、40歳以上の方ならご承知のことと思います。

 

ただ、いざ民営化されたからと言って 順風満帆 ではなくて、ドル箱の首都圏を持つJR東日本や、ウハウハの東海道新幹線を持つJR東海と比較すると、その大半がローカル線であるJR西日本は、スタート早々から大きなハンディを背負うことになったのです!

 

 

 

で、 国鉄改革3人組 と言われた各々は本土の3社へ振り分けられることになるのですが、 井手正敬 はJR西日本の副社長として赴任しましたが、本音の話をすると、西日本は誰が見ても一番の ハズレくじ だったことは、彼も気付いていたでしょう!

 

 

 

 

おまけに、当時の大阪は私鉄が幅を利かせてると言うか、京都や神戸や和歌山、奈良へも 国鉄に乗る という発想は無い土壌があって、まさに先の日米対戦と同じような圧倒的な力の差がある 私鉄王国 でした。

 

 

 

 

でも、まずはそこへ斬り込まないといけない…!

 

 

 

けれど、新生JR西日本の誕生当初は、会長と社長が ズブの鉄道素人 でしたから、プロパーでもある彼の肩に全ての責任がかかる訳であって、要は歴戦のツワモノ達を倒さなければ、JR西日本の未来は無いのも同然でした。

 

 

 

そこで、経営がてんやわんやになるであろう彼の右腕として、かつての千葉鉄道管理局長でもあり、無類の鉄道好きであった国鉄幹部の 草木陽一 を呼び寄せ、まずは鉄道本部長に据えることで、鉄道運営の安定を図るんです。

 

施策は次々とで出来ましたよ!

 

 

 

 

新快速のスピードアップや本数を倍増させ、片福線の開業に阪和~新大阪ルートの確立やらと、やれるものは何でもかんでも片っ端からバンバンやりました!

 

 

しかし、経営が安定しだした矢先に 阪神大震災 が発生し、出鼻を挫かれたかに見えましたが…?

 

 

 

 

これまた、彼が一切の陣頭指揮をとることで、全壊した 六甲道駅 を急ピッチで修復し、平行する阪急や阪神より2ヶ月も早く開通させているんです。

 

 

 

私事ながら、副社長時代の彼にお会いする機会がありましたが、鉄道界の 田中角栄 のようであって、まさに自信満々のブルドーザーのような方だと記憶しています。

 

 

 

組織が世紀に1度すらない大きな転機を迎えるにあたり、大きく改革前進しなければならないけれど、脆弱な経営基盤しかない土地柄だからこそ、正に彼のようなバイタリティー溢れるトップの存在が必要なのであって、もしも彼が居なれば、JR西日本の株式上場は、ずっと先になったと断言できるでしょう!

 

それほどまでに、彼は必死でやってこられた!

 

一度は死に絶えかけた組織を、半ば強引とも言える手腕を発揮し、グイグイと引っ張っていったんです!

 

 

 

 

 

 

ですから、かつてのJR西日本を、よく井手天皇率いる 井手商店 などと揶揄されることもありますが、 ワンマンで何が悪い!  

 

 

いや、ドル箱路線やウハウハ路線は1本も無い土壌をして、ワンマンだからここまで来れたのであって、もしも彼以外の方が社長に就任してチンタラ・ボチボチ経営していたならば、とっくの昔に破綻していますよ!

 

 

 

 

また、儲けに走ってるのはケシカランとの意見もありますが、民間企業だから儲けてナンボ!

 

何なら元の国営に戻しますか?

 

 


それと、事故の影響もあって不参加であった 関西経団連 への復帰も報じられましたが、関西復興へのキーパーソンとしての役割も求められることになるでしょうし、それほどまでに大きな力がある組織として成長させたのは、これひとへに彼の礎(いしずえ)があったからこそと思うのです。

 

 

ただし…

 

判決が無罪であれどうであれ…

 

組織のトップの行動としては、あまりにも潔くない印象ですし、部下が起こした不祥事に対して、当時の最高責任者としてとるべき態度があるではないでしょうか?

 

もちろん、青二才の私ごときが、どうこう意見する立場にはありませんが、 まず人としてどうか と思うのです…?

 

頭(こうべ)を下げ、許しを請うことを一度でもされたのか、どうなのか…?

 

 

 

 

運転士一人に罪をおっ被せて、ワシゃ知らぬ存ぜぬでは、今日までの数々の功績も全て泡と帰すと思うのです。