売買契約が済み、引き渡しに向けた実務を進めていた。

 

契約からしばらく経ったところで、買主様が希望されてホームインスペクションを受けることになった。

 

ホームインスペクションとは、専門家(住宅診断士)による住宅診断のこと。人間で言うと『人間ドック』にあたる。家を専門的かつ客観的に診てもらうことで、その状態を的確に把握することが出来るというもの。過去の使用状況が不明確な中古住宅では特に利用が望ましいとされる。

 

 

買主様によれば、リフォーム工事と並行してどこを補修すべきかを知っておきたかったとのこと。

 

本来これは売買契約をする前に実施し、補修に関して双方の負担と責任を話し合いながら売買契約に進んでいくのが良いとされている。もしそこで大きな不具合が発見されれば、契約前に価格など売買条件を見直すことも出来る。

 

 

しかし、実家は図らずして売出し直後から1日数件ペースで内覧が殺到することとなってしまい、買主さんは

 

「とにかく早く押さえなくては!」

 

と半ば焦りながら真っ先に買付けを入れてくれ、急ぎ足で契約まで進んでくれたのだった。

 

 

売買契約後にこれを受けるにあたり、契約が覆されるようなレベルの重大な欠陥が今さら見つかったらどうしよう…という心配は大きかった。

 

すでに売買価格を決め、解約に際しては高額な違約金を定めた契約を結んでしまっている。これからの契約破棄にはお互いに大きな痛みを伴うことになる。仲介業者も書面の作り直しや手数料額の変更など、影響は小さいはずがない。

 

どうか、このまま契約どおり進められますように…

 

三者とも、固唾を飲んで診断作業を見守った。

 

 

作業には半日かかった。診断士さんは休憩もせず、集中力を切らさずに作業に当たっていた。本当にすごい。ただ立ち会うだけでもかなり疲れた。

 

 

結果は…

 

『築年数なりに劣化しているところがあるが、大きな不具合は無い。きちんと手入れを続けていけばまだまだ問題なく住めます。』

 

とのことだった。

 

良かった…

 

全員ホッと胸をなでおろす。

 

 

細かい経年劣化箇所は売主の責任にならないため、契約には影響を及ぼさないものだった。安心した。

 

引き続き、誠意を持って対応していく。