(1)からの続きです。


さて、初めて踏み入れた放射線治療室。

他の診療科や検査室とは雰囲気が違いました。


最近、初めて足を踏み入れる診療科の雰囲気の違いにどこでもびっくりすることを続けざまに経験をしていますが、ここもまた独特の雰囲気でした。

近い雰囲気をもつのは、リハビリトレーニング室かなぁ。でも、待合室にいる患者さんの雰囲気は全体的に暗いです。家族とかスタッフが付き添っている患者も多いのですが、雑談ひとつ聞こえてきません。


暗い、暗い!

どよーんとしています。


これじゃ、火葬場でお骨あげまでの時間をつぶす待合室の方がよっぽど明るい雰囲気かもと思うくらい。


待合室の向こう側に、放射線治療室があって、その奥は関係者立ち入り禁止の重苦しい管理区域がみえます。

全体的に分厚い壁に囲まれた文字通り重苦しい部屋に放射線装置などが置かれて、それらを操作する専門技師や看護師が出入りしているのが見えました。


待合室は壁や天井の色、照明は明るくデザインされていますが、なにより待っている患者の雰囲気が暗い。

でも、私もその暗い雰囲気の患者の一員となって待合室のソファに身を沈めて順番を待ちました。


待合室で待つ患者はひとり名前が呼ばれるたびに、スタッフが横につき、フルネームと生年月日を確認されて待合室を出ていきます。


その連れ出される雰囲気が暗い!

スタッフも笑顔を見せてくれたらいいのに。


私はというと、マーキング作業の間は体を動かさずに静止させ続けないといけないことから、身体を不意に動かす原因となる痛みをとっておかないといけませんでした。

事前に看護師さんから注意を受けていたので、レスキュー薬であるオキノームを事前に5mg、1時間おいて、さらに10mgと徐痛のためにしっかり鎮痛剤を飲んできました。


そのため、眠い、眠い、ふらふらします。


待合室で待ってる間もほとんど、おめめがまわって、眠気の中にふわふわしていました。


名前を呼ばれて、私の横についたスタッフさんにフルネームと生年月日を確認されて待合室から連れ出されました。


うん、確かに笑顔を見せる余裕はないですね。少しでも明るい応対をしてみようかと、「今日は春の気候で暖かいですね」など天気の話題とかから雑談を振ってみようかと狙っていたつもりが、ドナドナされる牛のように待合室から連れ出されてCTシミュレータの部屋に通されました。


廊下を歩くのも無言です。


牛はドナドナされますが、ヤギはドナドナされないはずなのに、とか、頭の中ではつまらない冗談を浮かべてるのにね。


CTシミュレータの部屋に入ると、技師さんから着ているものを脱ぐように指示された直後に、パウチの中の蓄尿された量を尋ねられました。

ズボンからパウチを取り出して、尿が少しだけたまっているパウチをそのまま見せました。


尿の溜まっている状態の透明パウチをズボンから飛び出して、他者に見せる、、、

こんな動作をするのは初めてだなぁとちらっと思いました。


技師さんは、少量とはいえ溜まっている尿を見て、

「お手数ですが、尿をからにしてきてください」

などと、このタイミングなのにさらりと。


また待合室のそばのトイレへ行く羽目になりました。


実は、パウチの中をできるだけ空にする理由は、このマーキングの作業全て終えた時に理解できたのですが、パウチがマーキング作業の邪魔にならないように上に折り曲げたりしたかったからでした。


事前に、理由くらい説明してくれてもいいよねえ?

もちろん、下着まで脱ぐことになるとかパウチの位置を調整することになると3日まえの看護師から説明を受けてはいたのですが、そんなタイミング?


説明なしにパウチを折り曲げたりされるのでは、ドナドナされる牛の気分になるわけです。


パウチの中を空にしてCTシミュレータ室に戻ったら、CTベッドの上に寝て身体を動かさないように指示されます。

私の場合は、腰椎や骨盤あたりの位置に放射線を当てるため、ズボンと下着を引き下ろされました。

これまた事前の説明なかったので、いきなり、

「ズボンを下げますね」

「下着を下げますね」

と、次々にスッポンポンにされると、頭の中はさらにドナドナです。


CTスキャン装置でなにやら撮像してはお腹や腰の周りに印をつけ、最終的に6箇所に油性ペンでX印などつけられました。

精肉される切り出されるお肉の位置に印をつけられたかのよう。


もうね、頭の中では、

「もしもつばさがあったなら、

楽しい牧場に帰れるものを

ドナドナドナドナ

荷馬車が揺れる」

なんて歌がエンドレスで再生され続けていました。


そして、マーキング作業がすべて終わって、放射線治療室を出た時に、あの独特の雰囲気の理由とおぼしきものを見つけた気がしました。


放射線技師もスタッフは、ただ、たんたんと流れ作業のように、

患者を呼び出して、

治療台の上に乗せて、

精密に狙いを定めて照射ボタンを押す

それを一日中繰り返しているだけなのかなと。


マーキングは、その放射線照射のシミュレーションなので、やることはほぼ同じで、

患者を呼び出して、

治療台の上に乗せて、

正確に照射できるよう機械の位置を調整して、患者の身体に油性インクでマーク

それの繰り返しなんだろうなぁ。


なんだか、わかった気がした途端に、どっと疲れが出ました。


来週には、放射線照射を受けます。


来週も、頭の中ではドナドナがリピートされるんだろうなと思いました。


「ある晴れた昼さがり、市場へ続く道

荷馬車がゴトゴト、子牛を乗せて行く

かわいい子牛、売られてゆくよ、

悲しそうな瞳で、見ているよ

ドナドナドナドナ、子牛を乗せて

ドナドナドナドナ、荷馬車が揺れる」

(安井かずみ作詞、ドナドナ)