母が最後まで気がかりだと言っていた土地売却が済んだ日の夕方遅く、緩和ケア病棟から「もうすぐです」との連絡がありました。


急いで、駆けつけます。

あまりにも慌てていたので、診療時間終了後で正面玄関など施錠されてきる病院にどこから入っていいかわからず、夜間通用口を探せず病院の周りをぐるぐる回ることさえもしてしまいました。


病室に到着すると、すでに弟が到着していて母のベッドの横にいました。

母の様子はというと静かに息をしていて、時折は咳き込むかのように苦しそうな息をすることはあるものの、とにかく生きていて、天井のどこかを眺めているように見えました。


時々、病棟の看護師さんが来て、もうすぐです。少しずつ息が弱ってきて、最後に大きな息をしますというような説明をしていきます。


弟と2人、見守るだけ。


別の看護師さんがやってきて、母に話しかけます。「お兄さんと弟さん2人きてくれて良かったね」


そうするうちに、息が弱くなっていきました。

そして、止まったかと思うと、また少しして息をして、だんだんと呼吸のタイミングが遅くなりました。


最後に大きな呼吸をしたかどうかはわかりません。


最後には静かになりました。


すぐに医師が来てくれるのかと思いきや、病棟の看護師さんが来て、死亡診断は主治医の先生にお願いしますか?それとも当直の先生にお願いしますか?と質問されました。


主治医の先生にというご家族も多くいるらしく、その場合は翌日になるとのこと。弟と簡単に相談して、当直の先生にお願いすることにしました。


でも、すぐには来ないものなんですね。

ただ静かに息を引き取った母の顔を兄弟2人で見ていました。