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フットボールライター itch のブログ

Football goes on 特別編 ~itch ブラジルへ行く~ vol.15


さ、という訳でスキミング被害の保険がきく事を信じて、アメリカンエキスプレスで借金をしながら続けるこの旅。次なる目的はコパ・リベルタドーレスの観戦だ!


簡単に説明するとこのコパ・リベルタドーレスは、南米大陸各国で行われるリーグ戦でチャンピオン、もしくは上位を獲得したチームのみが参加することを許される大会。


このリベルタドーレスを制したチャンピオンチームは、南米大陸チャンピオンとして翌年に開催されるクラブ・ワールドカップに参加する権利が与えられる。昨年総勢2万人ものブラジル人が応援の為にやってきて、そのお行儀の悪さから日本を震え上がらせたコリンチャンスは、去年のリベルタドーレスの覇者、という訳ですね。


ブラジル渡航前に、コンフェデが終わった後に観戦できる試合を調べていたらリベルタドーレスが観戦可能だと知った。さらに現在ベスト4まで絞られたリベルタドーレスで、ブラジルのクラブで唯一生き残っているのがアトレチコ・ミネイロ!このブログを読んでくれている人なら覚えているでしょうか、コンフェデの日本×メキシコで滞在したベロオリゾンテのチームです。


その滞在中にミネイロのオフィスにお邪魔した時、広報の親父がタダでキーホルダーとピンバッジをくれてから、俺の心は白と黒に染まり、「必ずリベルタドーレスを応援に行く!」と心に誓ったのだっ


語尾に小さな「っ」が着く前のめりな感じで、ベロオリゾンテに到着!ベロオリゾンテ滞在終盤、利用していたユースホステルに向かう。


ここのフロントマンのフェルナンドは大のサッカー好き。コンフェデのブラジル対ウルグアイの時には昼間から仕事もせずに飲み倒し、試合が終わってホテルに帰ってみると、ブラジルの勝利からさらにビールが進んだご様子でもうベロンベロン。でかい声で「俺はピザを頼むけど、誰か割り勘しないかーー」と叫び、誰も乗らないと「じゃあ俺一人で食うーー!誰にもやらんぞーー!」と宣言したのち、届いたピザをふた切れぐらい食べただけで「オーケーー、俺の負けだーー。お前ら残り食っていいぞーー!」と振る舞ったりするとてもラブリーな人だ。


そして彼がその時に着ていたのは、カナリア色のシャツでは無く、黒と白の縦じま、つまりはアトレチコ・ミネイロ、通称ガロのシャツだったんである。そう彼は熱狂的なミネイロファン「ガロ」なのだ。


リベルタドーレスのチケットはどう調べても買い方が分からなかったので、フェルナンドなら分かると思いさっそく聞いた。帰ってきた答えは

「ベリー・ベリー・ディフィカルト」

フェルナンド曰く、リベルタドーレスのセミファイナルだぞ?当日にチケットなんてあるわけないだろ!と。ただし、俺はもってるけどね!という聞きたくもない情報まで教えてくれた。どうすればいい?と聞くと。カンビスタだな、と教えてくれた。


カンビスタ、それは日本の野球場なんかにもいる、どういった訳かチケットが余っているらしく、欲しい人にそれなりの値段で分けてくれる、心優しいあのダフな人達だ。


フェルナンドに相場を聞く、200レアルだな今日は、との答え。日本円にしておよそ1万円。奇しくも何度数えてもマンの残り全財産。(何のことか分からない人は前回のブログを読んでね)


しかもフェルナンドは、200で買えればいい方で、お前はジャポネスだからふっかけられるから300ぐらいかも。それと偽物チケットに気をつけろ!とアドバイスをくれた。が、リベルタドーレスの本物のチケットなんぞ見たことがないから気をつけようがない。


どこにカンビスタがいるかを聞いたらスタジアムの周辺か、ガロのオフィスの前だと言う。ダフ屋がクラブオフィスの前にいる?にわかに信じられない情報だけど、現地のサポが言う事だから間違いはないだろう。


しばし悩む。もちろん経済問題でだ。しかしベロオリゾンテまで来てテレビで観るぐらいだったら、リオでも良かった訳だし。リミットを200レアルに設定して、チケットを買う事を決断。試合当日朝から行動を開始した。


まず場所を知っているガロのオフィスに行き、そこでうまくいかなかったら試合開始までスタジアムで探す、という作戦をたてた。フェルナンドに試合会場「インディペンデンシア・スタジアム」への行き方を聞く。「あそこは俺の家だ!」とイカすセリフを吐き、フェルナンドは完璧に教えてくれた。


舐められないために、前日あえてシャワーを浴びず、顔も洗わず、髭もそらず出かける。アッピールする為に世界遺産オーロ・プレットで買ったあからさまに偽物のガロのレプリカユニフォームを着て出かけた。コンセプトは貧乏なガロファン。歯はさすがに磨いた。人として。


2週間ぶりに訪れたベロオリゾンテは、秋の空気に変わっていた。アッピールするために半袖のレプリカユニで出かけたことをちょっと後悔。しかしその悲惨さが良い感じに貧乏臭さを演出するはずだと信じる。ホテルから歩くこと30分、前方にガロのオフィスが見えてくれる。


するとダフ屋がいるわいるわ!日本でダフ屋というとどこか後ろ暗い、属性で言うとダークな方向のオーラを漂わせ、こそこそと物陰でやりとりを行っているイメージだが、ブラジルでは違う。めっちゃオープン!日曜朝市のノリでがんがん売っていた。


しかもここはガロのオフィス前だ!一番ダフ屋がいちゃいけない場所だろっ!念のために言っておくと、ここブラジルでもダフ屋はもちろん違法行為。しかしガロのオフィス前は完全にチケット売ります!買います!の場となっていた。時折パトカーが「まあ上に言われてさ、メンドクセーけど、いやいや見回りで来ました」的にやる気なく登場すると、ほんとコントみたいに口笛を吹きながら展示しているトロフィーを観に来た人の演技なんかを演じて、しかもそれでやりすごす事ができてしまう。素晴らしきこの国のおおらかさ。


さっそく交渉開始!と言っても高度なポルトガル語はできないので、「テイン・ビレーチ?(チケットある?)」と「クワント・クスタ?(いくら?)」と「ン・カーロ~(高いよ~)」の3ワードのみでの交渉だ。


のっけから「500レアル」「400レアル」がぼんぼん飛び出す。こっちは下手くそな「ン・カーロ~」で応酬するも、その発音で日本人だというのがバレて、まったく値が下がらない。諦めずにオフィス周辺の売人ほとんどに声をかけるも、300レアルが精一杯。とりあえず欲しがって無い事をアピールするために、もう既に見たトロフィーを眺めたり、記念撮影を取ったりして、ありもしない余裕を見せつける作戦にでた。


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するとその効果あってか、250レアルまで値下げに応じる奴が現れた!しかしこの男がどうもうさん臭い。スペイン代表監督デル・ボスケに似た感じの白人系の奴だったが、チケットをしっかり見せてくれないのだ。


ブラジルのチケットというのがこれまたうさん臭さを加速させる作りで、日本のチケットみたいにしっかりした感じじゃなくて、ペッラペラのできの悪いテレカみたいな感じ。印刷も乱雑。全部が全部、偽物に見えるのだ。


こっちは本物かどうかを見抜く目なんてないけど、「俺は知ってんだぞ」というハッタリをかます為にじっくり見ようとすると、デル・ボスケはサッと取り上げるのだ。


しかもデル・ボスケの目が気に入らなかった。人を馬鹿にしきっている目だ。信用できない。それにこいつから買うのはなんかヤダ。そう判断して交渉のステージをスタジアムに代えようと、駅の方角に歩き出した。


すると、オフィスから外れた横道で、俺は家族の為にも捕まれないんだよ、という雰囲を醸し出す緊張感のある黒人の売人を見つける。こちらはサングラスをしている事をいい事に、相手の目の動きをじっくり観察しながら「テイン・ビレーチ?」と慣れた感じで低く囁く。すると彼はこう言った。

「ボリビアーノ?(ボリビア人か?)」

俺はこう答える。

「シン(ああ、そうだ)」

キターーー!ここ連日リオの海岸で焼いた肌が、思いもよらない効果を与えた!「貧乏なガロファン」というコンセプトを上回り、「貧乏なボリビア人のガロファン」という斜め上の結果を生んだ!しかしながらちょっと複雑な心境!


いきなり交渉が250レアルから始まる。イッツ、ア、ボリビアンパワー!しかもこの売人の目は、真剣であり切実であり、目がぜんぜん泳がず信用できた。チケットを見せてくれと頼むと、こちらが納得するまで見せてくれる。あえてたどたどしい口調で「200レアルが精一杯なんだ、頼むよ」とお願いすると、しばし考えた後、分かった。200でオーケーだと交渉成立。


念のために、ちょっと待っていてくれと言い、一旦その場を離れ彼を遠くから観察した。彼はそこから微動だにせず、待っている。スタジアムに行けばもしかしたらもっと安く買えるかもしれないけど、フェルナンドが言っていた相場だし、まさかボリビアーノを騙す奴もいまいと、決断した。


200レアルを手渡し、彼からチケットを受け取る。彼は50レアル札4枚を一枚一枚丹念にチェックし。親指を立ててこういった「今日は俺らのガロが3-0で勝つぞ」


たぶんこのチケットは本物だと思った。そう言って笑った彼の目にはサッカーへの愛があったから。

「これがコパ・リベルタドーレスのチケットだ!」
(表)
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(裏)

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昼休憩を終えて、いよいよメトロに乗ってインディペンデンシアへ。セントロからメトロでたったの10分「HORTO」という駅が最寄りの駅だ。クルゼイロのホーム、ミネイロンよりもアクセス抜群だ。


「HORTO」で降りる。だけど、周囲はなんか住宅街の雰囲気で本当にこんな所にスタジアムが?駅員に聞くとガロのシャツを指差しながら「ガロ~」と言い笑顔で道順を教えてくれた。駅から出たら一回右に曲るだけ!その曲るポイントでも念のために道を聞くと、やはりガロのシャツを指差して「ガロ~」と言い笑いながら教えてくれる。「HORTO」ではこのシャツの威力がハンパない!


険しい坂道を10分ほど歩くと、丘の斜面に広がる住宅街の頂上付近で突然風景が切れ、いきなりデーンとでかいスタジアムが目の前に姿を現す。


「Estadio Independencia」

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日本だったら絶対に苦情の対象になるような住宅街のすぐそば、というかその中心に君臨するようにそびえ立つスタジアム。本当になんて国だ。


周囲をぐるりと散策。周辺住民は苦情を言うどころか心からガロを愛しているようで、窓という窓にガロのフラッグが飾られている。


この日の試合はなんと夜の22時キックオフ!試合が終わるのが、じゃなくてキックオフが22時だよ。これまた日本では絶対にあり得ない設定だと思う。下見で訪れたのは16時ぐらい。キックオフ5時間前だったのでさすがに人影は見当たらず。


ただスタジアム入り口前のバーで親父どもがワイワイやってるので、中に入ってみる。試合までにヒマしている親父たちにとって、謎の闖入者は格好の酒の肴。たちまち質問攻めに合う。


ここで言われたのは「アルゼンチーノ?」だった。おそらくインディオ系の。さらに言えばこの日のガロの相手はアルゼンチンのクラブ「ニューウェールズ・オールドボーイズ」だったからか。


「いやいや、俺は日本人だよ、ほら」とサングラスを外すと、オー!と歓声が(笑)。当たり前の質問が来る。「なんで日本人が?」彼らを納得させる答えが無いのでシンプルに「ロナウジーニョとベルナールが好きなんだ」と答えておいた。


この試合を観に日本から来たのか?と聞かれたので、嘘をついて、そうだ、と答えると一斉に「クレイジー」と頭の横でクルクル指を回し、よし!飲め!とビールが注がれる。俺も名古屋で「俺は小川が好きなんだ、その為に来た」とか言っちゃうグランパスの小川のユニを着た外人と出会ったら、喜んでビールを奢ると思う。


みなでスコア予想が始まる。話の内容はチンプンカンプンだけど、数字なら分かる。みんな口々に「トレイス、ゼロ(3-0)」という。


セミファイナルの1stレグをガロは2-0で落としていた。ガロがファイナルに進出するには3-0が必要で、もし1点でも取られたらアウェーゴールルールの関係で4点が必要になる。正直かなり難しい条件だ。だから親父どもの予想は予想じゃない。願望だ。


親父どもに礼を言い、一旦ホテルに戻る。フェルナンドにチケットをゲットした報告をする。いくらで買ったか聞かれたので200だと答えるとやるじゃん的な感じで「グッ~ド!」と称えてくれた。その後に俺は定価の60レアルで買ったけどね、と付け加えるのもフェルナンドは忘れなかったけど。


フェルナンドも「今日はトレイス、ゼロだ」と言い切る。今日1日ガロのユニを着て街をウロウロしていたら、「ガ~ロ~!」と声をかけてきた人のほとんどが挨拶代わりに「トレイス、ゼロ!」と言い指を立てた。パン屋のおばさんまでが!


かなり難しい試合になると思うけど、なんだか本当に「トレイス、ゼロ」が起こりそうな気がしてきていた。1日ぶりのシャワーを浴びて決戦に備える。初めてのブラジルクラブサッカーの観戦、しかもキックオフは22時。期待と不安が入り混じった気持ちで、キックオフを待った。