『N』道尾秀介 感想
どの章から読んでも物語として成り立つ、らしく好奇心で購入しました。
全6章あり、自分は「飛べない〜」→「笑わない〜」→「落ちない〜」→「眠らない〜」→「名のない〜」→「消えない〜」の順番で読みました。
○名の無い毒液と花
主人公、吉岡利香はつい先日婚姻届を提出し、吉岡精一と夫婦になりました。精一は高校の同級生である江添正見と「ペット探偵」を立ち上げました。
今日がその初仕事。ブラッドハウンドを探しに小島に赴きます。江添の能力で無事探しだし、帰ろうとするのですが、利香はこの小島で「飯沼知真」の姿を見るのでした。
新間先生(40代後半、骸骨のような容貌の英語教師)によると、飯沼は母親を事故で亡くしてから不良とつるむようになったらしく、利香にそれとなく会話をしてやってほしい、と頼みます。
○落ちない魔球と鳥
兄を亡くした小湊普哉(こみなと しんや)は漁港の一角でフォークボールの練習をしています。まだ成功させたことはありません。
兄の英雄は野球部員でフォークボールを操り部を甲子園の一歩手前まで連れて行きました。
小湊兄弟を好ましくみているのが「ニシキモ」さん。漁師をしていて何ヶ月かに一度、この街に戻ってくる生活をしています。
ある日「死んでくれない?」と声がすると、そこにはヨウムがいるのでした。
○笑わない少女の死
アイルランドに旅行に来た主人公は元英語教師です。しかし文法や単語を知っていても会話ができず、それがコンプレックスになっています。
街に出てみると、小学校高学年くらいの女の子が白い紙コップを持っています。ホームレスでは無い、という女の子に興味を持ち、アイスクリームを食べながら話を聞くことになります。
○飛べない雄蜂の嘘
大学の昆虫学研究室で働く主人公。彼女は田坂という内縁の男にDVを受けています。本当に「殺される」と思った時、田坂を見知らぬ若い男が羽交締めにしていたのでした。
正当防衛で、主人公は田坂の左胸に包丁を突き刺してしまいます。
見知らぬ男は「ニシキモ」と名乗り、田坂の死体を沈めます。ニシキモは「本当なら自分がその男を殺すつもりだった」と語り、主人公は彼を匿います。
ニシキモの母親は薄明光線、別名天使の梯子が五つ揃って花のようになったところが見たいと彼に語っていました。奇妙な同居生活をする2人です。
○消えない硝子の星
アイルランドで看護師をしている「イイヌマ カズマ」はホリーという女性の終末ケアをしています。
ホリーにはオリアナという娘とステラという妹がいます。ステラはあまり愛が多く無い性格で、オリアナにもホリーが長くは生きられないことも言ってしまいます。
○眠らない刑事と犬
主人公は警察官をしています。彼女の隣の家で夫婦が殺されて、ブッツァーティも行方不明です。
殺人の手掛かりになるかも、と彼女は思い、ペット探偵である江添正見に犬探しに同行してもらいます。
彼の相棒は「吉岡」老犬なのであまり無理をさせたく無いと江添は言います。
【感想】
本当にどの順番から読んでもお話が成り立っていました。
キーワードは「天使の梯子5つがちょうど良い場所に配置されて、光の花のようになる」かな、と思いました。
章のいくつかで光の花が登場します。ニシキモさんは漢字で「錦茂」と書くようで、珍しい苗字だからこそ、他の章に登場しても気づけるようになっているのだと思います。
一つの章を読むことによって、名前だけ出てきた人物の昔や今を徐々に知っていくという読み方もできると思います。