考える
本を読む
夢を見る
嘘をつく

朝起きる
家を出る
寝に帰る
繰り返す

話し合う 確かめる
理解する 推し量る
受け入れる 歩み寄る
抱き合う

見つめ合う 感じ合う
目を閉じる 手を伸ばす
横になる 服を脱ぐ
暗くする 熱くなる

手なずける 分かり合う
支配する 分かち合う
もてあそぶ 信じ込む
裏切る

手をつなぐ 殴り合う
口づける 唾を吐く
愛し合う 殺し合う
添い遂げる 焼き尽くす

やり直す 立ち直る
作り出す また壊す
繰り返す 繰り返す

それだけ。

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ようやく暖かくなってきた春先。
久々の休日なのに特にやる事も無く家にいるのは勿体無いので、今日も「あの街」へ行くことにした。
「あの街」は緑が多く物静か。
レンガが敷き詰められた道の路肩に可憐な花が咲き、路面には様々なお店が立ち並び何処からか美味しそうなパンの匂いがするそんな街。
この街の外れに僕の行きつけのカフェがある。
ここのマスターの入れてくれるコーヒーにはシナモンが入っていていて、付け合わせのアップルパイとの相性は抜群。それはもう絶品である。
大きい窓の外には突き抜ける空と木々の隙間から通り抜ける風。
僕は何をするでも無く、ただこうして時を感じるにが好きだ。
太陽が眠りにつくとき、僕はゆっくりと席を立ち古くなった扉をギギギと音を立てながら開ける。
すると正面に見慣れないお店が一軒佇んでいる。
フラッと立ち寄ってはみたものの、客も店の人も居なく、辺り一面には沢山の見た事の無い靴が並んでいた。真っ白な壁面に配管がむき出しの天井。全てがオシャレで気付けば口を開けたまま店も真ん中に立ち、くるくる回りながら全体を見渡していた。
そろそろ目が回っきたので、お店の人も一向に現れる様子もなかったので店を出る事にした。ドアを開けようと手を延ばとドアのすぐ左の棚に埋もれる一足の茶色でくるぶしが見えるくらいの革靴を見つけた。
僕は一目惚れだった。
お店の人を呼んだがくる気配もない。
「しょうがない、帰ろう。いや、でも試履だけでも。」
そう思う頃にはもう既に僕の両足は革靴を履いていた。
サイズは小指が一本はいるくらい大きさ。
店内をカツカツと音を立てて歩き、靴の感触を忘れないように歩き回っていると、突然大きな物音と共に激しく地面が揺れる。僕は何も持たず慌てて外へ飛び出し、辺りをみると「よかった、ただの地震か。」
むかいのカフェのマスターはクスリと笑って、店閉めの準備をしている。
お店に戻ろうと振り返ると「あれ、何にもない。」
そこにあるのは茫々に生え散らかった草木と、僕の私物だけ。
後ろで店閉めをするマスターにみむきもせず急いで駆け寄る。背の高い草木を見上げ何だったんだろうと考えながら草の上に横たわったトートバックを担ごうと手を延ばしたその先に、一枚の名刺サイズの紙切れが添えてあった。

「お気に召されたようで何よりです。」

そう書き残された紙切れはいきなりの突風によって夜空に舞い上がり、スーッと闇の中へ溶けて行った。


つづきはまた
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ベランダにいると懐かしい香りがする。
負けず嫌いで甘え下手で素っ気ないがとても愛おしい。

大好きだったシクラメン。
僕は窓辺にそれを飾り、寂しげに微笑む一輪の花に、毎日毎日少しずつ水を灌ぐ。
さんさんと降り注ぐ太陽光に目を掠め「おはよう」と呟く時、水の滴る花弁が音も立てず、すーっと地面に落ちる。
あの哀しそうな笑顔と風でなびく癖っ毛の髪が僕の目の前を一瞬で通り過ぎて行く。
「ああなんだ、全て幻だったんだね。」と顔を真っ赤にして涙を堪えながら精一杯の声でひとりごちる。
もうここに君は居ない。


空の中を気まぐれに流れる雲達が僕を何処かへ誘っているかのようだ。
僕は静かに目を瞑りそれに吸い込まれるように新しい一歩を踏み出した。

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いつかの夢で見た、淡いオレンジ色に光るだだっ広い無人の工場。
天井は驚くほど高く、何台ものベルトコンベアがランダムに飛び交っていてその終点は見えない。
丁度背の高さくらいに浮いていたギシギシと鈍い音を立てるベルトコンベアに恐る恐る覗き込む。
それに運ばれているものは人間の腕だった。他にも手、足、指などの身体のパーツがベルトコンベアで運ばれてる。
全身の毛が逆立ち震えを抑えながら「出口…出口…」と二言だけつぶやき出口を探しにごうごうと鳴る幾千のベルトコンベアの中をひたすら歩く。
しかし歩けど歩けど出口は見つからず、むしろ壁すら見えなくなっていった。
もう何時間歩いただろう、そう思った時、奥の方で青白い光を放つものを見つけた。近づいて見るとそれは巨大なガラス張りの箱になっていて、とても一人では開けられそうもない大きなアイアンのドアが一つだけ付いている。
「出口だ!」と恐る恐る中を覗く。
ガラス越しから見たものは、毛の生えてない人間の頭、灰色の脳、血色の良い臓器。
そこにトラックがガラスの向こうから

…ここで目を覚ます。


昔病気を患った時に毎日見た夢。
何を伝えたかったのだろう。

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いつか一緒に観た景色はもう何処にもなくて、お腹に宿った子供ももう今はいなくて、忘れようとしてもなんか辛くって。
間違っちゃいないと思ってても、全部ちがくって。
僕もわかんないですまったく。
まったく。