西部決闘史 | B級パラダイス

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昨夜久々観た映画は、またかよ!と言われそうだが、昨日の記事と打って変わって命の値段の安いマカロニウエスタン(笑)。

リー・ヴァン・クリーフ主演ながら緩めの「マカロニ007」と呼ばれたシリーズ3作目だ!

西部決闘史 RETURN OF SABATA (1972年)

 

監督 : フランク・クレイマー 製作 : アルベルト・グリマルディ 脚本ジャンフランコ・パロリーニ、レナート・イッツォ 撮影 : サンドロ・マンコーリ 音楽 : マルチェロ・ジョンビーニ

出演 : リー・ヴァン・クリーフ、ライナー・ショーン、ジャンピエロ・アルベルティーニ、アナベラ・インコントレラ、ジャンニ・リッツォ、ペドロ・サンチェス、ジャクリーヌ・アレクサンドレ、ニック・ジョーダン


サバタ”シリーズ第3弾は、再びリー・ヴァン・クリーフを主演に迎えての「西部悪人伝」(レヴューはこちらの正式続編。

でも題名に偽りありで、まるで西部劇の名だたる決闘の記録などが絡むのかと思えばそんなことは一切なく(笑)、そのまんま「続・西部悪人伝〜帰ってきたサバタ〜」でいいじゃんって感じの一作だ。

このサバタシリーズ、合間にユル・ブリンナーの「大西部無頼列伝」(レヴューはこちら)がシリーズにカウントされているからややこしいのだが、「悪の上をいく極悪」の黒づくめの主人公サバタは、やはりリー・ヴァン・クリーフの方がしっくりくるので大歓迎だ。しかーし!本作は残念ながら映画の出来としては前作に及ばない今イチの一本であった。

 

冒頭、さっそくサバタが敵に囲まれ、緊張感ある撃ち合いが始まる。

ポスターにデカデカとレイアウトされている「悪人伝」でも印象的なサバタの名刺代わりのような4連デリンジャーが早くも登場!

このデリンジャー、4連だけでも凄いのにプラス銃把部分に更に3連の銃口があるのがいいんだよな(笑)

どんな構造なんだ!のトンデモデリンジャーだがこの辺りがマカロニウエスタンの007と呼ばれた所以か(笑)。


敵をバタバタ倒して「ありゃ?いきなりクライマックス?」とか思っていると、これは「出し物」で、本作でのサバタは、なんとサーカス団の目玉の早射ちショーで人気を博す主役スターとして登場するのだ。


サーカスが留まるホブソンビルの町では、市長の妹を妻に持ち町民からの信用の厚いマキントックが町の建設計画を進めている。

ある日、一座の手品師が行方不明になり女が殺される事件が起こる。サバタはサーカスを離れ町で南北戦争時代の部下クライドに出会い、マッキントックの悪事を嗅ぎつける。

実はマッキントックは町民から集めた税金を金貨に換金し、集めた金は代わりに偽札を残して、私腹を肥やしていて、再建計画など実施しないでドロンを決め込む計画だったのだ。

 

サバタはマッキントックにも繋がり今一つ信用ならないクライドに加えて、町の再建計画には賛成しているお調子者のブロンコ(3作皆勤賞のペドロ・サンチェス)

元々はクラウドの配下だったアクロバティックな軽業をするエンジェルら二人組

あとは出稼ぎ娼婦のマギー(今ひとつ魅力的でないのが難点(笑)

などを仲間にしながら、金貨のありかを突き止めようとするが、マキントックは容赦なく殺し屋を差し向けてくる……


「悪人伝」の“ネコ”役のニック・ジョーダンがエンジェルとして再登場して同じような飛んだり跳ねたりアクロバティックな小気味よいアクションを見せてくれるのが嬉しい。

その相棒も足を使ったパチンコで音もなく敵を倒す技で、「無頼列伝」の“セプテンブレ”みたいでなかなか良いコンビではあった。

しかしブロンコのペドロ・サンチェスは本作ではさほどコメディリリーフとしても活きていないし、何より、時に裏切り、分け前を独り占めしようとする小悪党の相棒クライドはライナー・ショーンが演じているが、「悪人伝」のウィリアム・バーガーのバンジョーほどの凄腕ではないのが残念なのだ。

サバタが南北戦争時に少佐だった過去がわかるが、クライドは元上官でもあるサバタに頭は上がらないし、5000ドルの借りもあって全然対等ではないのが痛い。

この仲間とのチームワークが「悪人伝」ほどスカッとしていないのも難点かなあ。

 

黒づくめサバタが権力者の悪事を暴く物語に、いつ裏切るかわからない胡散臭い相棒、P・サンチェスのコメディ・リリーフ、体技を持つ配下の若者という布陣に加え、フランク・クレイマー監督(脚本ジャンフランコ・パロリーニは同一人物)、製作アルベルト・グリマルディ、撮影のサンドロ・マンコーリも全く同じ。

音楽こそ2作目はブルーノ・ニコライに譲っているが、マルチェロ・ジョンビーニの音楽は相変わらず景気いいものの、これも「悪人伝」のインパクトには及ばないなあ。


サバタを演ずるリー・ヴァン・クリーフは実に楽し気で、他の作品以上に茶目っ気のある表情も見せてくれる。何より不敵な笑顔ながらよく笑ってる気がするな(笑)

前述の4連+3連発デリンジャーに手の平にすっぽり入るパームガンや

ブロンコの太鼓に仕込んだ銃などは楽しいものの、

デリンジャーこそ最後に絡むとはいえ、まあこれら小道具も物語も「おおお!」とのけぞるほどではなく、楽しませてくれるもののピリっとしない「うーむ今ひとつ!」な一本なのであった(笑)


未見の方はまずは「西部悪人伝」からよろしくです!(笑)