ガンクレイジー | B級パラダイス

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おお、10月はマカロニウエスタン記事を書けておらなんだ。
マカロニバイブル哀愁編よりこいつを取り出して鑑賞。

ガンクレイジー (1966)

THE BOUNTY KILLER/EL PRECIO DE UN HOMBRE/THE UGLY ONES


監督・脚本 : エウヘニオ・マルティン   製作・脚本 : ホセ・G・マエッソ 脚本 : ドン・プリンドル 撮影 : エンツォ・バルボーニ   美術:フランシスコ・カネット 編集:ホセ・アントニオ・ロホ 

音楽 ステルヴィオ・チプリアーニ

出演 トーマス・ミリアン、リチャード・ワイラー、エラ・カリン、マリオ・ブレガ、ヒューゴ・ブランコ、ルイス・バルブー、マヌエル・ザルゾ


その筋が好きな方は室賀厚監督の同名映画を思い出すかも知らないけど、これは珍しくマービン・H・アルバートの同名小説を原作にしたマカロニウエスタン 

必殺シリーズや「荒野の用心棒」の「さすらいの口笛」じゃない方のタイトルサントラと並べても違和感のない哀愁のトランペットのテーマ曲が以前から大好きだったのだ。

加えて「ガンマン大連合」や「血斗のジャンゴ  」、「情無用のジャンゴ  」他、お気に入りのトーマス・ミリアンがポスター等でも大きく出ているからてっきり主役で原題の「バウンティキラー」をカッコよく演じているのだろうと期待しながら観だしたら


まずオープニングのタイトルバックが馴染みのあの哀愁のメロディじゃない!(笑)

確かに主役は「賞金稼ぎ」ルーク・チルソンなれど、こちらはリチャード・ワイラーが演じていて、ミリアンは彼に追われる悪党ホセ・ゴメスを演じていたのであった()

かように観る前の予想がことごとく覆されるも、なかなか面白い一本であった。


悪党ホセ一味を追うチルソン。メキシコの良家の息子だったのだが、両親を盗賊に殺されグレてしまったホセの昔を知る村(といっても雑貨屋と宿屋だけ)の人々や、好意を抱く宿屋の娘エデンは「ホセの賞金目当ての殺し屋」として、チルソンを快く思わない。


エデンは護送中のホセの脱走を手助けするべく、休憩所で銃を密かに渡して去る。脱走に成功したホセは、メキシコへの逃亡の前にエデンたちのいる村に向かう。


一方、保安官たちが殺されたことを知り、先回りして村に向かうチルソン。待ち伏せしてホセを捕まえるものの、村人の加勢でチルソンは逆に囚われ、やがてやってきたホセの仲間によっていたぶられる。


宿に泊まっていた客が旅立つのを、役人に密告されるかと殺すホセ。さらに集まるホセの仲間は村でやりたい放題。

自分が渡した銃で、ホセが護送の連邦保安官たちを脅して脱走したと思っていたエデンも、彼らを皆殺しにしていたことを知り「やむにやまれず悪党になったはずのホセ」が、人殺しも辞さないただの悪人に成り下がったことを知る。

エデンは囚われのチルソンを解放し助けを請うのだった


と、まあ、中盤からずーっと縛られている主役の賞金稼ぎリチャード・ワイラーより悪党ホセのトーマス・ミリアンの方がすっかり主役を食っている()

のちの作品での「愛嬌」はまだ乏しいが、流石アクターズ・スタジオ出身だけあって、破滅に突き進む迫力と虚無感は、これがマカロニウエスタン初出演とは思えない存在感なのだ。

ちなみにただの悪役だったホセに「良家の息子だった過去」を設定して物語に組み込ませたのもミリアンだったそうだ。

キューバ出身のトーマス・ミリアンは、この後も前述の通りマカロニウエスタンに数多く出演しているが俺の記憶している限りこの作品が一番小綺麗な格好だ()

メキシコの盗賊だったりアウトローだったり、とにかくいつも無精髭に小汚い格好だったミリアン。本人が好んだのか、いずれも頭の切れる一匹狼のクールなガンマンではなく、仲間思いでよく笑い、だが運命に流されていく「マイノリティ」を演じていた印象が強い。


フランコ・ネロのクールな陰や、ジュリアーノ・ジェンマの爽やかさはないが、変なユーモアと「カッコ悪いことはなんてカッコいいんだ」を体現していた彼も、2017年に鬼籍に入っていたのだった。


冒頭チルソンのシーンのタイトルバックにはかかっていなかった、カッコいい主題曲はホセのテーマのように彼のシーンに多く流れており、その他の劇伴も、必殺仕置人や必殺仕事屋稼業の劇伴と入れ替えてもいいくらいカッコ良かったことも付け加えておきたい。

ではアメリカ版予告編と哀愁の主題曲をどーぞ!