前にも書いたが、中学生の時にマカロニウエスタン にはまり、何ちゃらオーケストラの演奏する西部劇20曲、マカロニウエスタン 20曲のお得なスクリーンミュージック集のLPを購入し、何度も聴いていたものだった。
中でも、哀愁の疾走メロディが多い中、淡々とそして高揚感が増していくスコアで異彩を放っていたこの作品。お気に入りの「ジャンゴ」のフランコ・ネロ主演に加え、「荒野のなんとか」とか「ほにゃららの用心棒(またはガンマン)」的タイトルでもないことも合わせて、ずーっと気になっていたのだった。
当時もテレビ放映ではお目にかからず、レンタルでも見かけず、期待値が高まっているところに加えて、個人的マカロニベスト10に入れたい大傑作「ガンマン大連合」(記事はコチラ)を観てしまい、その前作と知っては「手元に置きたい度」はMAX。先日の「マカロニ備忘録」の手に入れたい作品の真っ先に挙げたくらいで(笑)。
それが先週、これと「さすらいのガンマン」「帰ってきたガンマン」という未見3作品のBOX セットが、なんと970円でオークションに出ていたんで即座に落札した次第(笑)。首を長くして待っていたのが昨日無事到着したのだ!
豹/ジャガー(1968年)
IL MERCENARIO/THE MERCENARY/A PROFESSIONAL GUN
監督・脚本 : セルジオ・コルブッチ 製作 : アルベルト・グリマルディ 脚本 : ルチアーノヴィンチェンツォーニ、セルジオ・スピーナ、アドリアーノ・ボルツォーニ 撮影 : アレハンドロ・ウロア 音楽 : エンニオ・モリコーネ、ブルーノ・ニコライ
出演 : フランコ・ネロ、ジャック・パランス、トニー・ムサンテ、ジョヴァンナ・ラッリ、エドゥアルド・ファヤルド、ブルーノ・コラッツァリ
マカロニウエスタンではメキシコ革命を題材にした作品がいくつもあり、前述の同じセルジオ・コルブッチの痛快な「ガンマン大連合」、セルジオ・レオーネの詩情性とダイナミックさが共存する「夕陽のギャングたち」、左翼革命世代の申し子ダミアーノ・ダミアーニの社会派マカロニとも言える「群盗荒野を裂く」(記事はコチラ)なんかもあり、「ガンマン大連合」「進撃0号作戦」と続くコルブッチの「メキシコ革命3部作」の最初はどんな具合かと早速鑑賞した。
時は革命前夜のメキシコ。金次第でどんな仕事でも引受ける凄腕の“ジャガー”ことセルゲイ・コワルスキ(フランコ・ネロ)は国境に銀山をもつ富豪ガルシア兄弟から、安全な場所へ銀を移送する際の護衛を依頼される。
しかし、銀山はすでにパコ(トニー・ムサンテ)率いる革命軍に占拠されていた。コワルスキはパコから金を受け取って、迫る政府軍を相手にひと暴れ、そのまま報酬を条件に革命軍の参謀に迎えられることになる。
コワルスキの商売敵の殺し屋カーリー(ジャック・パランス)がガルシアに接近、最初は銀の横取りを狙い、やがて二人を付け狙う。
一方革命軍は列車を襲って政府軍の馬を奪い、銀行を襲って軍資金を得て、ついでに美しいメキシコ娘のコロンバ(これがまた綺麗なんだ)も加え次々と町々を解放、仲間を増やしていく。
しかしガルシアと政府軍をも敵に回した革命軍は、パコとコロンバの結婚式の後に、飛行機まで加わった急襲を受け、やがて激しい戦闘の末に壊滅、コワルスキとパコたちは命からがら逃れることになる。
そして半年後。パコとコワルスキは闘牛場で再会。カーリーとの決着をつけ、コロンバの協力を得て再びガルシア&政府軍に反撃を開始する…。
闘牛場での再会シーンがまず冒頭にあって、そのまま回想に入る構成も含め、ほんとに2年後の「ガンマン大連合」の習作のような一編であった(笑)。
嫌〜な悪役カーリーのジャック・パランスは、大連合の時の片腕義手の隼使いというマンガチックな怪しさはないものの、変なパーマ頭で(笑)、人を殺しては十字を切り、オールヌードにもなるなど、こちらも充分変で最高(笑)。
メキシコの労働者から革命の英雄になっていくパコのトニー・ムサンテは、どうしてもトーマス・ミリアンと比べてしまうのだが、恐れていた「物足りなさ」は少なく、最初は革命とは名ばかりで「金持ちから奪う」戦いが次第に「メキシコが好きだから」に転じていくのが良い感じ。
そして、大連合のヨドはスウェーデン人だったが、こちらではポーランド人のコワルスキのネロ。どちらも現実主義者で拝金主義は変わらず(笑)。加えてタバコの火をつけるのに、いつも人の服や靴、歯まで利用する無礼さ加減が笑えた。
最初からオートマチックを撃ったり、ホーキンスマシンガンを車に乗せてバリバリ突撃したり、中盤ではライフルで飛行機を撃墜したり、ラストではジャンゴばりのガトリングも撃ちまくるなど、大連合の時より大暴れ具合は多く、これは痛快。
最初から最後まで金づくで、パコたち革命軍を利用している節もあったが、次第にパコに友情を覚えていくのがいい。
ラスト「俺には夢があるんだ」とメキシコに向かうパコを狙うガルシア(コルブッチ御用達の悪役エドゥアルド・ファヤルドがまた出てる(笑))残党を仕留め、
「夢を見るのはいい。だだし眼を開けてみろよ」と現実主義者らしい一言をかけて去っていくのもまたシビれるところ。
書いたようにオートマチックから自動車、飛行機までは出てくるんで、メキシコ革命ものは「ウエスタン」としてはギリギリの時代設定ながらやはり面白いんだよなあ。
「ガンマン大連合」ではネロもまた革命の思想に感化され、ラストは仲間のために「戻ってくる」のが熱くなるところで、アッパーな音楽と共にアガる要素つるべ打ちで最高だっただけに、あちらと比べると、今ひとつ「どんどん高みに上っていく高揚感」といったものは乏しいのは認める。
総じて評価の低いこちらだが、どうしてなかなかのもの。ある意味「大連合」よりハードでシビアとも言えるかもしれない。
タランティーノが自身のベストマカロニ4位にランクインさせているのもうなづける。
待ち続けて多少評価が甘くなってる自覚はあるものの、やはり待っていた甲斐のある一作。モリコーネ&ニコライの最強タッグの景気の良い音楽と共に、まずこれを観たら次は「ガンマン大連合」と製作順での鑑賞をお勧めします(笑)。
さて、昨夜は懲りずにまたも別のマカロニBOX落札してしまったので、コルブッチのメキシコ革命3作目の「進撃0号作戦」はいつになるかなあ(笑)。