サボタージュ | B級パラダイス

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レビュー書きそびれていたけどちょっと前に見た「フューリー」は凄い映画だった。そのデヴィッド・エアー監督のこの前作。GYAOでの鑑賞だったが、やっぱり一筋縄ではいかない映画だったななあ。

サボタージュ2014) Sabotage


監督・製作・脚本 : デビッド・エアー   製作 : ビル・ブロック、イーサン・スミス、ポール・ハンソン、パラク・パテル    製作総指揮 : ジョー・ロス   脚本 : スキップ・ウッズ   撮影 : ブルース・マクリーリー   編集 : ドディ・ドーン   音楽 : デビッド・サーディ

出演 : アーノルド・シュワルツェネッガー、サム・ワーシントン、オリビア・ウィリアムズ、テレンス・ハワード、ジョー・マンガニエロ、ハロルド・ペリノー、マーティン・ドノバン、マックス・マーティーニ、ジョシュ・ホロウェイ、ミレイユ・イーノス、ケビン・バンス、マーク・シュレーゲル


冒頭、シュワルツェネッガー率いる麻薬取締局(DEA)特殊部隊が麻薬組織のガサ入れに!おお激しい銃撃戦!手際良く一仕事するのかと思えばなんと組織の金をちょろまかすミッションに。

しかもガサ入れ後にみんなで隠したお金を取りに行ったら隠したはずの金が無い!


組織に勘付かれたか、それともと思っていると場面変わって金を盗んだ疑いをかけられシュワルツェネッガー演じるジョンと率いる部隊は活動停止に。みんな共犯だから口は割らないもののもシュワには監視はつくわ、信頼は失うわで立場なし。まさかパソコンに向かってデスクワークするシュワを見るとは思わなんだ。


半年間の活動休止を経て何とか部隊も訓練開始。やれやれこれからまたひと暴れかと思っていると、特殊部隊のメンバーが一人また一人と殺されていくのだ。

それも寝ている間にキャンピングカーが線路に置かれて電車が激突し肉片と化したり、なんと天井に貼り付けられたりと、ある意味連続猟奇殺人の様相。


これは組織の報復なのか、それともまさかの内部の犯行?ハードなアクションものだと思っていたら、いつの間にかサスペンスにシフトしていくのだ。


殺人事件として捜査に来るのが、最初男かと思った女刑事キャロライン。演じるオリビア・ウイリアムズが、俺の大好きなシャーロット・ランプリングのような雰囲気がちょっとあって、瘦せぎすで好みでしたな(笑)。

デビッド・エアー 監督の「色」はよくわからないのだが、山小屋に隠れ住む部下に危険を知らせに赴くシュワと女刑事のシークエンスに、組織がその部下を狙い襲うところを、同じ場所で時間軸を交えて同時に描いていたのには脱帽だった。

最初は「ん?シュワたちも危ない?」と思っていたら、過去の時間軸と混ぜている演出とわかり、思わずのけぞってしまった。緊迫感と「やはり殺されていたか」の虚無感が倍増のすごい演出・編集だと思う。やはり曲者だよなあ。


以下ネタバレだけど、このシーンがあるから組織の報復かと思いきや、結局は内輪揉め、ヤク中の女部下と不倫していた男の部下が金の独占を狙い暴走していくのだが、二人の犯行の発覚からのカーチェイスシーンは、また大きく「アクション」に舵が切られて、市民も巻き込まれる凶悪な暴力描写の連続で凄いの何の。


しかもしかも…何と無くなった金は実はシュワが持っていたという意外な展開。

映画冒頭に拷問を受け悲鳴をあげていたのがシュワの妻子で、麻薬カルテルに殺されたことは中盤でわかるのだが、その金は、まだ果たせなかった復讐のために使われるのだ(凄い使われ方だが…)。


最後にメキシコの麻薬カルテルの酒場に一人殴り込み、否、復讐に行くシュワ。テンガロンハットを被ったカウボーイスタイルなんだが、その姿はタクシードライバーのトラヴィスかっていう虚無感漂わせていて、これまた凄かったなあ。


とまあ、「凄かった!」お気に入りのシーンが多いのは認めるんだけど、話としてはどうにも整合性がつかないところが多いくて…(笑)。


結局シュワが金をネコババしたから、色んな人が死んでしまったわけだし、その使い道が個人的な復讐のためなんだから、あれだけ彼を慕い、信用していた(除くヤク中女隊員)部隊の皆は巻き込まれたただけ?って気になっちゃうのが、脚本の最大の弱点かなあ。


いやいや、待てよ。ってことは妻子の復讐のための金のために、女隊員の暴走は計算外なれど、シュワが全部仕組んで、部下を殺して回ったってたってこと?んんん?えええ??

んー、そういうことなのか?

と、疑問符が後からついて回っちまうわけで(笑)。


いっそ相次ぐ組織の報復に、残った特殊部隊が団結して徹底抗戦するアクションだったらスカっとしただろうし、金の取り合いでレザボアドッグスみたいになっていく特殊部隊の自滅を描いたら、それはそれでよかったのだが。


それにしても、暗くハードで、リアルな暴力に彩られたストーリーの中で、シリアスなシュワルツネッガーは浮くこともなく馴染んでいたのは何よりだった。

「コマンドー」の頃の破茶滅茶な強さが懐かしくもあったが、老境に踏み出した中、こういう映画で、ポスターのように「シュワでござい」と無敵ぶりを誇示しない彼もまたアリだなあと思った次第。


つーわけで、場面場面は無茶苦茶良いのだけど話としてはスッキリしない一本でありました(笑)。