ダーティ・セブン | B級パラダイス

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タランティーノの「ヘイトフル・エイト」郡山で上映してくれるのか心配になってきた今、昨夜に続いてこんなのを観た。

ダーティ・セブン <未> (1972) UNA RAGIONE PER VIVERE E UNA PER MORIRE
REASON TO LIVE, A REASON TO DIE [米] /MASSACRE AT FORT HOLMAN [米・再]

監督・脚本:トニーノ・ヴァレリ 脚本:エルネスト・ガスタルディ 撮影:アレハンドロ・ウロア 音楽:リズ・オルトラーニ
出演:ジェームズ・コバーン、テリー・サバラス、バット・スペンサー、ロバート・バートン、ジョルジュ・ジェレ、テレンス・ヒル、ベニート・ステファネッリ、ホセ・スアレス、ラインハルト・コルデホフ

ジェームズ・コバーンにテリー・サバラスと大物が出ているのに日本未公開の一作。テレビ放映時は“「要塞攻防戦/いのち知らずのならず者」なる題名だったらしいが、自分は初見のマカロニ・ウエスタンだ。
監督トニーノ・ヴァレリは前の記事の「ミスター・ノーボディ」と同じでセルジオ・レオーネの弟子筋だ。あ、何気に連日のトニーノ祭になってたんだな(笑)

舞台は南北戦争の時代。ペンブローク大佐(コバーン)が戦わずして全面降伏したことで陥落した北軍のホルマン砦。ペンブロークは敵前逃亡の卑怯者と呼ばれながらも収容所から脱走、何故か砦の奪還を北軍に申し出る。だがそんな彼に表立っての部隊を預けるわけにいかず、ペンブロークは、戒厳令下で犯罪を犯し絞首刑寸前になっている犯罪者を、命と自由をエサに集めて部隊を編成、一路砦に向かう・・・
っていう粗筋は、アルドリッチの「特攻大作戦」を彷彿とさせる、俺好みの異能集団ミッション遂行映画なのだが、ただの泥棒とか殺人者の寄せ集めなんで「得意技」が無いのが痛い(笑)。おまけに一人一人の描写や寄せ集めが故の軋轢もあまり無いので、ただでさえ知らない役者ばかりということもあり、こちらが思い入れを募らせる前に皆あっさり散っていってしまうのが寂しいところなのだ。

その「特攻大作戦(原題:Dirty Dozen)」に習ったかのような邦題だが、この一味、犯罪者だけなら6人、コバーン入れると7人だが、一癖ある北軍軍曹もついてくるんで出発時は8人と、ややこしい勘定(笑)。もっとも砦に着く前に農家装う強盗一家に仲間の一人が殺されたりするんで勘定はあうのだが(笑)。

少数での砦奪還作戦を訝るメンバーに「砦に隠してある50万ドルを取り返す」という理由で何とか一味を納得させていたのだが、物語の途中で、ペンブロークが何故南軍に一度降伏したのかという理由が明らかにされる。テリー・サバラス演ずる南軍司令官への復讐が真の理由なのだが、回想シーンでもいいからその辺をもう少し丁寧に描いてくれれば、こちらの気分も「おらおあァ!」とアガるのにもったいない。しかし、それを前面に出し過ぎると「犯罪者を集めて砦を奪還!」という作戦の面白さも半減しちゃうし。実は砦奪還作戦もかなりいい加減なんで、そちらのサスペンスもあまり盛り上らないのだけどね(笑)

とは言えコバーンのカッコ良さだけは惚れぼれする。彼の「振り返る顔」ってのが本当にいいんだよなあ。

ジャケットにコバーンとサバラスに次いで大きく出ているのがバッド・スペンサー。前の記事の通りテレンス・ヒルとコンビを組んで数多くの作品に出ている、気のいい巨漢なのだが、今回もペンブロークをいつ裏切るかっていう連中ばかりの中、何故か彼をサポートし、いつもの「信頼のおける大男」を演じてくれている。南軍が支配する村で疑惑の目を向けられた時も機転を利かせて街中お祭りにしちゃうとこなぞ、彼ならでは(笑)

実はこのDVD、裏ジャケにテレンス・ヒルの名前を見つけ、「お、いつものコンビで出てるのか!と購入したのだが・・・。てっきりならず者部隊の一人かと思ったらいないし、どっかでゲスト出演か?と観ていたのだが作品中、どうしても見つけられなかったのだ(笑)。検索するとどのDVD紹介でもヒルの名前が載っているのだが、なんかの事情でカットされちゃったのかなあ?どなたかこのあたりの事情をご存知の方いませんか~。

前述の通り、あまりサスペンスはないものの、侵入がばれてからのレオーネの「夕陽のギャング」のようにジェームズ・コバーンがダイナマイトを投げまくり、ガトリングが何台も炸裂するクライマックスはなかなか派手。地下や吊り橋まである「砦」のセット?もこの映画用に作ったとしたらかなり豪華だ。ただ、撃ち合いというよりこれはもう「戦争映画」ですな。

派手ではあるのだけどコバーンとサバラスとがっぷり四つに組んでいるかっていうと微妙で(苦笑)。今一つ燃えられない一作だった。ただ、もっと「ううむ・・・」という作品があれほど日本公開されていたことを思うと、やはり72年という、時代に遅れてしまった不遇な作品ともいえるのかもしれない。
と言う訳で、タイトルバックなどレオーネに対抗して「南北戦争を正面切って描いてやるぜ!」的なトニーノ・ヴァレリの気合いは感じられるのだが、やはり「ミスター・ノーボディ」はレオーネ作品だったんじゃないの?と思えてしまう惜しい一本でした(笑)。

音楽が「怒りの荒野」を流用してるいい加減な予告編をどーぞ(笑)