ミスター・ノーボディ (1974)
MY NAME IS NOBODY/IL MIO NOME E NESSUNO
監督:トニーノ・ヴァレリ 製作:クラウディオ・マンチーニ 原案:セルジオ・レオーネ、フルヴィオ・モルセラ 脚本・原案:エルネスト・ガスタルディ 撮影:ジュゼッペ・ルッツォリーニ、アルマンド・ナンヌッツィ 音楽:エンニオ・モリコーネ
出演:ヘンリー・フォンダ、テレンス・ヒル、レオ・ゴードン、ジェフリー・ルイス、R・G・アームストロング、ジャン・マルタン、ピエロ・ルッリ
引退してヨーロッパで余生を暮らそうとしている、西部一の速撃ちガンマン=ジャック・ボーレガード。この老ガンマンの前に現われたつかみどころの無い若者、ノーボディ。名無しのその男はボーレガードにことあるごとにつきまとっていく。
フランコ・ネロにちょっと似た風貌でハンサムなテレンス・ヒルが名無しの若者だ。彼がその後長くコンビを組む太っちょのバッド・スペンサーと共演していた「風来坊 花と夕日とライフルと・・・」という滅法楽しいコメディ・マカロニウエスタンがあったのだが、この「ミスター・ノーボディ」はレオーネが世界的にヒットした「風来坊」にライバル心を燃やして作られたようだが、テレンス・ヒルの飄々とした個性が活きた、コメディタッチの快作だ。
ゆるいギャグも散りばめながらも、「ウエスタン」で悪役起用した名優ヘンリー・フォンダの存在が大きい。老眼鏡をかけたりと老いは隠せないが、ずっと独りで生きてきたであろう、ガンマンとしての立ち振る舞いがキリリとしていてカッコいいことこの上ない。
この無敵と謳われたガンマンを自分の手で倒す望みを語りながらも、ボーレガードとの対決はのらりくらりと避け、彼のピンチをフォローするかと思えば、彼を単身150人の無法者集団「ワイルドバンチ」と戦わせようと仕向けるノーボディ。
老ガンマンの凄みと、そのガンマン生活の疲れをさりげなく見せながら、彼に憧れ、そして去りゆく決意をした彼への敬愛を込めてノーボディが仕組んだ、1対150の決闘。
「激闘」というのは憚れる演出ではあるのだが、ボーレガードが経験に裏打ちされた戦法で倒していく敵の数を、キラキラして目で数えているノーボディの表情がいいのだ。
彼の真意はボーレガードを「カッコ良く引退」させ、本当の「伝説」にすること。すべてはそのために仕掛けたことなのだが、マカロニウエスタン末期、本場の西部劇は一足早く終焉を迎えていたこの時代、このテーマ自体がパロディ的な作りと共に、レオーネとトニーノの師弟コンビによる、このジャンルへの挽歌のようにも感じられる。
レオーネは「原案」でしかクレジットされていないが、実際は酒場のシーンなども演出したらしいってほとんどギャグシーンじゃないか(笑)。でも特典のテレンス・ヒルのインタビューではワイルド・バンチとの決闘も演出していたように語っていたが実際はどうだったのだろう。ヨーロッパでは「レオーネの映画」として認識されているらしく、まあ「さすらいの一匹狼」や「怒りの荒野」(好きだけどね)の演出を思うと、トニーノ・ヴァレリの監督作というより、アメリカロケや主人公の「無名性」も含めて、多分にレオーネ印がついて見えるのは間違いない。
墓場に「サム・ペキンパー」の墓標がある(笑)のは、マカロニを通過した西部劇への挽歌でもある傑作「ワイルドバンチ」へのレオーネの意地なのかもしれないし、帽子飛ばしの撃ち合いは「夕陽のガンマン」を思い出すし、「ウエスタン」のパロディもあるしね。
何よりエンニオ・モリコーネの音楽が入ると余計にレオーネ映画に思えてしまうのだ。「夕陽のギャング」のションションション・・・を思い出すすっとぼけたテーマ音楽に、カッコイイメロディ。加えて「ワイルドバンチ」のテーマにはワルキューレの騎行が盛り込まれていて、砂塵を上げて馬を走らせる集団のシーンにピッタリでちょいと興奮させられるのだ。
予告編に主な音楽が盛り込まれているんでお楽しみください。
ラスト、伝説を受け継いだノーボディにあてたボーレガードの手紙がまたいい。先達からの後輩へのメッセージをきちんと受け継ぐラストカットもニヤリとさせられる。
ジョン・ウー監督が「最も好きなウエスタン」と称えるのも頷ける痛快作。お試しあれ。
監督:トニーノ・ヴァレリ 製作:クラウディオ・マンチーニ 原案:セルジオ・レオーネ、フルヴィオ・モルセラ 脚本・原案:エルネスト・ガスタルディ 撮影:ジュゼッペ・ルッツォリーニ、アルマンド・ナンヌッツィ 音楽:エンニオ・モリコーネ
出演:ヘンリー・フォンダ、テレンス・ヒル、レオ・ゴードン、ジェフリー・ルイス、R・G・アームストロング、ジャン・マルタン、ピエロ・ルッリ
引退してヨーロッパで余生を暮らそうとしている、西部一の速撃ちガンマン=ジャック・ボーレガード。この老ガンマンの前に現われたつかみどころの無い若者、ノーボディ。名無しのその男はボーレガードにことあるごとにつきまとっていく。
フランコ・ネロにちょっと似た風貌でハンサムなテレンス・ヒルが名無しの若者だ。彼がその後長くコンビを組む太っちょのバッド・スペンサーと共演していた「風来坊 花と夕日とライフルと・・・」という滅法楽しいコメディ・マカロニウエスタンがあったのだが、この「ミスター・ノーボディ」はレオーネが世界的にヒットした「風来坊」にライバル心を燃やして作られたようだが、テレンス・ヒルの飄々とした個性が活きた、コメディタッチの快作だ。
ゆるいギャグも散りばめながらも、「ウエスタン」で悪役起用した名優ヘンリー・フォンダの存在が大きい。老眼鏡をかけたりと老いは隠せないが、ずっと独りで生きてきたであろう、ガンマンとしての立ち振る舞いがキリリとしていてカッコいいことこの上ない。
この無敵と謳われたガンマンを自分の手で倒す望みを語りながらも、ボーレガードとの対決はのらりくらりと避け、彼のピンチをフォローするかと思えば、彼を単身150人の無法者集団「ワイルドバンチ」と戦わせようと仕向けるノーボディ。
老ガンマンの凄みと、そのガンマン生活の疲れをさりげなく見せながら、彼に憧れ、そして去りゆく決意をした彼への敬愛を込めてノーボディが仕組んだ、1対150の決闘。
「激闘」というのは憚れる演出ではあるのだが、ボーレガードが経験に裏打ちされた戦法で倒していく敵の数を、キラキラして目で数えているノーボディの表情がいいのだ。
彼の真意はボーレガードを「カッコ良く引退」させ、本当の「伝説」にすること。すべてはそのために仕掛けたことなのだが、マカロニウエスタン末期、本場の西部劇は一足早く終焉を迎えていたこの時代、このテーマ自体がパロディ的な作りと共に、レオーネとトニーノの師弟コンビによる、このジャンルへの挽歌のようにも感じられる。
レオーネは「原案」でしかクレジットされていないが、実際は酒場のシーンなども演出したらしいってほとんどギャグシーンじゃないか(笑)。でも特典のテレンス・ヒルのインタビューではワイルド・バンチとの決闘も演出していたように語っていたが実際はどうだったのだろう。ヨーロッパでは「レオーネの映画」として認識されているらしく、まあ「さすらいの一匹狼」や「怒りの荒野」(好きだけどね)の演出を思うと、トニーノ・ヴァレリの監督作というより、アメリカロケや主人公の「無名性」も含めて、多分にレオーネ印がついて見えるのは間違いない。
墓場に「サム・ペキンパー」の墓標がある(笑)のは、マカロニを通過した西部劇への挽歌でもある傑作「ワイルドバンチ」へのレオーネの意地なのかもしれないし、帽子飛ばしの撃ち合いは「夕陽のガンマン」を思い出すし、「ウエスタン」のパロディもあるしね。
何よりエンニオ・モリコーネの音楽が入ると余計にレオーネ映画に思えてしまうのだ。「夕陽のギャング」のションションション・・・を思い出すすっとぼけたテーマ音楽に、カッコイイメロディ。加えて「ワイルドバンチ」のテーマにはワルキューレの騎行が盛り込まれていて、砂塵を上げて馬を走らせる集団のシーンにピッタリでちょいと興奮させられるのだ。
予告編に主な音楽が盛り込まれているんでお楽しみください。
ラスト、伝説を受け継いだノーボディにあてたボーレガードの手紙がまたいい。先達からの後輩へのメッセージをきちんと受け継ぐラストカットもニヤリとさせられる。
ジョン・ウー監督が「最も好きなウエスタン」と称えるのも頷ける痛快作。お試しあれ。