さすらいの一匹狼(1966)
PER IL GUSTO DI UCCIDERE/FOR THE JOY OF KILLING
監督:トニーノ・ヴァレリ 脚本:ヴィクター・アウツ 撮影:ステルヴィオ・マッシ 音楽:ニコ・フィデンコ
出演:クレイグ・ヒル、ジョージ・マーティン、フェルナンド・サンチョ、マルセル・ボジョフィ、ダイアナ・マーティン、フランク・レセル
以前書いたジェンマの「続・さすらいの一匹狼」とは全く関係ない正編。主人公の賞金稼ぎランキー・フェロー(クレイグ・ヒル)のマスクも悪くないし、ウインチェスター風のライフルにつけたスコープが最初の「仕事」から最後の決闘まで効いているけど、全体的には可もなく不可も無くの典型的マカロニウエスタンの1本だったかな(笑)。
実は監督のトニーノ・ヴァレリの初監督である本作。彼はかのセルジオ・レオーネの助監督を務めていた言わば弟子筋。主人公の飄々さというか金への抜けめの無さ、ちゃっかり具合はレオーネの三部作のイーストウッドにちょいと似ているものの、いつもの「題名に偽りあり」でちっとも「一匹狼」ではない賞金稼ぎっていうのが難点かな。
しかもけっこう姑息(笑)。冒頭、大金を輸送する騎兵隊がメキシコの盗賊団に襲われるんだが、前述のスコープでその様を見ているのに襲撃を未然に防ぐことなく、賞金目当てに盗賊団を追い詰めたりとか、その後敵対する悪役である盗賊団の首領ガスの手下を保安官と拷問して犯行計画を吐かせたり、ガスの女とその子供をさらって相手を焦らせるなど、「その手があったか!」と拍手喝采するのはためらわれる汚い手を使うのもちょっとなあ・・・であった(笑)。
実はランキーはガスに弟を殺された過去があり、賞金狙いの他、彼への復讐を兼ねているのだが、これがかなり早い段階で示されてしまうので、「夕陽のガンマン」のリー・ヴァン・クリーフのようにラストで「実はそうだったのか!」とはならないドラマの弱さがある。しかも、その恨みもあって、敵に対して卑怯な手段も厭わないのかなあ・・・とも思ったのだが、弟が殺される過去の回想シーンもまったく無いので、次第に「復讐って本当かいな?」って気にもなってくるのが難点なのだ(笑)。
よくあるパターンではあるが「復讐」がサブストーリーとして物語に重みを与えていたらもう少し手触りも違ったろうになあ。まあこの後名作「怒りの荒野」を監督するが、さらに何を考えているのかわからない主人公テレンス・ヒルの「ミスター・ノーボディ」も監督することになるから、その「軽さ」はまあわからんでもないのだが。
他にも、盗賊団首領であるガスと、今は足を洗ったその兄との確執、ガス一味に攫われる娘と盗賊団側にいる若者とのロマンスとか、コメディリリーフである町の爺さんから鉱山の権利をどうやら横取りしたらしい一癖ある鉱山主の描写とか、思わせぶりのエピソードがあるのだが、どれも中途半端で、ほとんど主人公の話と絡まないって言うのも消化不良だったり難点は多いのだ。
と、まあ文句を言いだすと色々あるのだが、マカロニウエスタンらしく、街の住民も含めまあかなりの犠牲者の出る撃ち合いは派手なことこの上ない。命の値段は安いけど(笑)。
何より冒頭のメキシコ盗賊団首領はフェルナンド・サンチョ!(笑)。相変わらず弾帯を肩からたすきがけして「ガハハ」と笑いながら無駄に撃ちまくってくれて嬉しくなってしまうのだ!もっとも出番は最初だけであっさり倒されてしまい、真の悪役は別だったのは残念だったが(笑)。