昨日は珍しく3本もレビュー書いたところで撃沈でありました。
娘も帰ってきての夕刻。夕食までの時間はやはりホラーで締めるかと、
レンタル落ち3本を1000円で買ってきたうちの1枚を取り出す。
娘がそばでPCやってるけどまあいいかと「家族で観るには憚れる映画祭」締めは
以前一度観てはいたけどもう一度しっかり観たくなったこの映画を・・・。
ゾンゲリア DEAD & BURIED (1981)
監督:ゲイリー・A・シャーマン 製作:ロナルド・シャセット ロバート・フェントレス
原作:チェルシー・クィン・ヤーブロー 原案:アレックス・スターン
脚本:ロナルド・シャセット ダン・オバノン 撮影:スティーヴ・ポスター
特殊メイク:スタン・ウィンストン 音楽:ジョー・レンゼッティ ・バートン アルフレード・メイヨ
出演:ジェームズ・ファレンティノ、メロディ・アンダーソン、ジャック・アルバートソン
デニス・レッドフィールド、ナンシー・ロック・ハウザー、リサ・ブロント、ロバート・イングランド
あ、今、題名で退きましたね(笑)
ま、それもしょうがないか。よくわかります。うちの家族もそうだから(笑)。
当時ヒットした「ゾンビ」と「サンゲリア」を安易にくっつけたこの造語タイトルで
巷のゾンビ映画ファン、ホラー映画ファンには当時から良く知られる映画にはなったが
一般の方には敬遠されてしまうことになったこの映画、
確かにショックシーンはあるけど、題名で損してる映画だと、今でも思う。
今でいう、人を襲い、貪り食い感染する狭義の「ゾンビ」とは一線を画す
素晴らしい「恐怖映画」だと改めて感心しながら観た次第。
平凡な港町ボッターズ・ブラフ。
一見平和なこの町で、旅行者のカメラマンが海辺で出会った美しい女性に惹かれ撮影していると
いつの間にか町民たちに囲まれ、わけもなく殴られ、網に巻きつけられてしまう。
町の連中は彼に「笑え」と強要しながらそれを皆が写真に撮ると
生きたままガソリンをかけ焼いてしまう・・・という異常な事件が起きる。
静かで物悲しい音楽に、ソフトフォーカスの白っぽい画面の海岸。
美しい女性との出会いと異常な事件。このオープニングが最高なのだ。
町に勤務する保安官のダンは、酷い火傷で昏睡状態とは言え一命は取り留めた男の身元を割りだそうと
捜査を続け、彼の意識が回復するのを待っているのだが、
看護婦(に変装した最初にでてきた美女)によってその男は殺されてしまう。
こんなふうに・・・
「ゾンゲリア」と言えばこの1枚の有名なスチール。名付けて「とどめ技!眼球注射針刺し」
(仕事人後半風タイトルにしてみました(笑))ひええぇぇ・・・
ま、こんなようなゴアなシーンはあるけど、この映画の真の魅力は
こういうシーン(少なめ)とミステリ部分が相乗効果をあげている所なのだ。
何故彼が殺されねばならないのか・・・その理由は観ているこちらにもわからない。
そんな中、第二、第三の殺人事件が起こる。捜査を続けるダンだが、なんら手掛かりを得られない。
すべて最初と同じようにダンの周囲の人間も含めた町の連中の仕業だ。
観ているこちらも犯人はわかっているが、動機はさっぱりわからない。
その連中が昼間はダンに「早く事件をなんとかしろよ」などと軽口を叩いている。
同じ連中が、夜は集団で人を襲い、無表情に殺し、写真を撮る。
田舎町の閉鎖的なムードと相俟ってこの不気味な雰囲気がたまらないのだ。
そんな中、燃やされておまけに目を刺されて死んだはずの例のカメラマンが
ガソリン・スタンドで元気に働いているという情報が入る。
半信半疑のダンの捜査。やがてダンの妻で小学校教師のジャネットの不審な言動も浮かび上がってくる。
そんなある夜、ダンは運転中道に飛び出して来た男をはねてしまうが
その男は逃げるように走り去ってしまう。
車のフロント部分に残った皮膚を病院で鑑定してもらったところ、
驚くべき答えが返ってきた。その皮膚は死後三ヶ月は経過しているというのだ・・・。
ダンの捜査はついに、検死官でもあり、葬儀場の経営者でもある男、ドッブスに行き着く。
ドップスは死体を修繕する事に異常な情熱をもっていた・・・。
こんなミステリー・タッチのホラーというのもありそうで意外と少ないのだ。
安易なゾンビ映画にはない「怪奇」の雰囲気を纏っているのがこの映画の魅力の一つだ。
例えばラヴクラフトの小説のような不気味な居心地の悪さと追い詰められるサスペンス感。
「エイリアン」の脚本を書いたダン・オバノンとロナルド・シャセット、さすがの良い仕事ですわ。
以下はネタバレ含むので観たい方は覚悟の上どうぞ。
もう一つの魅力は、数あるロメロゾンビのバッタもんとは違い、しっかり「哀しみ」があることだ。
ロメロのゾンビ映画のの「生きている側の哀しみ」と違い、この映画では違う「哀しみ」がある。
いやゾンビと書くことさえ抵抗があるな。ここは「生かされてしまった死者」と書くべきだろう。
事件の犯人=町民たちは「生かされてしまった死者」であり
劇中にもでてくるヴゥードー教の元祖ゾンビのような「使役される死者」にも似て
ただ「生かされてしまった死者たち」は、仲間=死者を増やすことを「やらされている」のだ。
それ以外は、その昔いがらしみきおが4コマ漫画で描いていたギャグのように
何も日常と変わらず「社会復帰して」生活しているのだ。
ラスト近く。ダンは捜査の過程で、信じたくなかった「我が妻もまた・・・」に行きついてしまう。
(このあたり、ハードボイルドの「愛した人が犯人でした」的パターンの裏返しで、哀しくて好み)
すでに死者だった妻、ジャネット。だがダンはまだ妻を愛している。
再び死ぬことも許されないジャネットは、墓穴に身を横たえダンに向かって泣きながら懇願する。
「私を埋めて・・・、私を埋めて・・・」
シャベルを手に取ると、泣きながら愛する妻を埋葬するダン。
周りには身体が傷み始めた町の住民たち=生ける死者が集まり、
ダンに慈しむような同情的な視線で花を置いていく・・・この悲しくもシュールな画!
原題は『死と埋葬」になるのかな。ニュアンス的には「死んだら、埋めて」って感じだろうか。
この切ないシーンを良く表しているように勝手に思うのだ。
そして映画はさらに驚きの展開で・・・の、ラストシーンを迎えるのだが
これは「エンゼルハート」というより「シックスセンス」だ・・・って書いちゃうともうわかっちゃうかな。
でも当時としても、今見てもかなり捻ったラストだったと再見して素直に思った。
確かに主演は地味だし、低予算の華のある映画じゃないのは否定しようもないが
その手の好きな方にはエゲつないシーンは、しっかりあるし(笑)
上の写真にあるクール・ビューティ、リサ・ブロントの美しい顔も見ものだし
(彼女、愛と青春の旅立ちにも出てたけど、昨年亡くなったそうですね・・・合掌)
その後フレディとしてエルム街で殺しまくるロバート・イングランドも出てるし
家族には絶対嫌な顔されると思うけど、観て損の無い「上品な怪奇映画」として
我が「B級パラダイス」の名に恥じない隠れた名作として、未見の方には強くオススメします。