白竜を俳優として認識している人は多いだろうが
彼がロッカーだったことは意外に知られていないようだ。
内田裕也のプロデュースする「浅草ロックフェスティバル」だったかな、
アナーキーやTHE MODS、ビートたけしや安岡力也なんかも含め自分好みの男気バンドが
大挙して出ていた年越しのロックフェスには当時(80年代)何度も登場していた。
でも自分が何故彼の歌に触れたのかははっきり覚えていない。
光州事件についての歌を歌っているロッカーがいると、新聞か何かで目にした覚えはある。
もしかしたら光州事件を歌っていたために発禁になり自主制作でリリースしたっていう
このアルバム自体の記事だったのかもしれない。
とにかく興味をおぼえ、たまたま大学の時に友人が持っていたので頼んで
2ndの「Asian」ともどもテープに録ってもらったのは覚えているのだが。
まあ、当時からロックの世界でもマイナーだったし、
韓国というキーワード以外にアピールするところも少なかった彼のアルバムだが
彼の深い声といくつかの曲の力強さにすっかり惚れこんでしまったのだった。
そう言えば実際の犯罪を基にした内田裕也主演映画が80年代初期に何本かあって、
クロロホルム暴行事件を下敷きに若松孝二が監督した「水のないプール」に続く第2弾として
警官による郵便局強盗に材をとった「十階のモスキート」(83年)という映画があった。
崔洋一監督が一般映画を撮った最初の映画だったはずだ。
どんづまりの生活、サラ金に手を出し破滅していく警官を内田裕也がリアルに演じていた。
この映画のラストに白竜の「誰のためでもない」がかかっていた。
その曲が無茶苦茶カッコ良くて3rdアルバムに同曲名を見つけて喜んで聞いたら
レゲエバージョンになってて肩すかしをくった記憶がある。
映画が83年だからその前には白竜をもう「知っていた」ことになるなあ。
同じような理由でLPまで買った宇崎竜堂「R.U/DEBUT」(映画は「TATOOあり」ね)を
CDで欲しくて参加したYahooオークション。
どうしても欲しかったこうした廃盤CDがいくつか出回っているのを見てウズウズしてしまった。
そして定価より高いけど納得の金額で手に入れたこの1sアルバム。
何度も聞き返しては彼の声との再会を喜びまた聴き入っていた。
というわけで、手に入れて1か月以上たちますがようやくレビューさせていただきます(笑)
1.「現実」
現実は地球のように丸くはないんだよという苦い歌詞を、意外なほど軽快なリズムで
明るく歌うアルバム冒頭にふさわしいロックチューン。
2.「体を張って」
「厳しい寒さも部屋の中じゃわからない だから外へ飛び出して風に吹かれてみろ」と
これまたやわな連中には厳しい歌詞を明るい曲調で歌うメッセージソング。
3.「飾らない女」
当時今のかみさんと別れる直前で歌詞がいちいち染みてしまったのを懐かしく思い出す
個人的に大好きなバラード。
「いい子ぶってるとこがない/飾り気のない素顔がいい/おまえは汚れを知った天使のようだ」
ああ、歌詞を全部書きたくなるくらい好きな歌だ。今聞くと照れくさいけど(笑)
書き忘れたがこのアルバムは全曲スタジオライブ。
ゲストミュージシャンでキーボードにはあの小室哲哉が参加している。
この曲では特に彼のピアノとギターの石渡輝彦の絡みが泣けるのです
4.「光州City」
この1stのタイトルにもなっているメイン曲。当時軍事政権でもあった韓国の光州市で
民主化を求める活動家と学生、市民が韓国軍と衝突し、多数の死傷者を出した事件について
韓国出身の白竜が静かな怒りをこめて歌っている。
光州事件について興味のある方はこちらで
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%85%89%E5%B7%9E%E4%BA%8B%E4%BB%B6
5.「アリランの歌」
LPの時はB面の1曲目。白竜の出自そのまま、日本にやってきたアボジの青春を想いながら
しみじみと本来もっている「恨」の感情を込めてを歌いあげる前半から
後半は一転して「さてさて俺たちのアリランはともに笑いながら響き渡る喜びの歌」と
前に進むポジティブな決意を力強いリズムで歌う。
6.「俺たちの夜明け」
「チャンスはしっかり掴もう。自分の力を信じて」という力強く歌い上げるロック。
「俺たち」って呼びかけられると今はちょっと居心地悪いけどね(笑)
7.「シンパラム」
ハードロックとも言えるカッコいいリフの疾走チューン。
「光州City」にも通じる「民主化」に向かう自由への渇望を吹き荒れる「風」に例えて
暮らしの貧しさは心の貧しさではないと歌う個人的超名曲。
時代の嵐・風というものが当時の俺が敏感だったのかなあ(笑) でも今聞いてもカッコいい!
8.「パドゥドゥー」
アルバムラストはパンタ作の(そう聴くと実に彼らしい)しっとりとしたラブソング。
ギター・ベース・ドラム・にキーボードというシンプルなロックの音に
白竜の艶のある深い声はバラードだと更に魅力的に響くのだ。
白竜も最近は役者業のほうがすっかり忙しいようで
出すアルバムもAORというかバラードばかりのようだけど
この頃のような「熱いロック」もまたいつか聴いてみたい。
さほど声も衰えていないようだし・・・ほんともったいないなあ、と思うのです。
ああ、こうして書いてみると改めてわかったのは
このアルバムを手に入れたことがオークションはまる理由の一つだったということ(笑)。
元々の宇崎竜堂の「R.U/DEBUT」は未だ手に入らないけど
白竜の「Asian」、「Third」もCDあったら手に入れたいしねえ。
何よりあの頃の「想い」をマジックのように思い出させる音楽や映画を
良い形で手元に置いておきたい、という気持ちがこのところ強くなってる気がします。
ということで、オークションチェックはまだまだ続きそうです・・・。