
蹴りたい田中 (ハヤカワ文庫 JA) 田中啓文
馬鹿な本を手に取ってしまった・・・(笑)
見出しにつられてつい東スポ(大阪だと大スポ)買ってしまったことのある方!(いないか?(笑))
そう、あの感覚を思い出していただければいいのです。
あの脱力感が全編を支配するSF短編集でありました(笑)
内容紹介に「41歳の瑞々しい感性が描く青春群像。第130回(平成15年度下半期)茶川賞受賞作。 」とあるんだけど
あの綿谷りさの『蹴りたい背中』をあからさまにパロったタイトル・・・これだけで笑えるのに
(もっとも元ネタのほうを読んでないからタイトルパロってるとしかわからんわい(笑))
よく見りゃ「芥川賞」じゃなくて「茶川賞」じゃんかよっ!てな具合の内容(笑)。
全体が茶川賞受賞後消息を絶った「田中啓文」の遺稿集の体裁をとっているのが笑える。
曰く「その稀有なる才能を偲んで、幼少時から出奔までの生涯を辿る
単行本未収録作八篇+αを精選、
山田正紀、菅浩江、恩田陸などゆかりの作家・翻訳家らによる証言、
茶川賞受賞時の貴重なインタビュウまでを収録した遺稿集」として
彼の年代ごとの小説を掲載しているスタイルがまた人を食ってるけど
その内容もまた、くっだらねえ駄洒落オチがくるのばかりで
読み進めるほどに深みに嵌る怖ろしい一冊であります(笑)
特撮の神様円谷への愛に溢れつつ(笑)
着ぐるみ巨大怪獣と巨人の果てしない戦いのとばっちりで地球が滅ぶ
「地球最大の決戦 終末怪獣エビラビラ登場」を皮切りに
流星雨の降ったあとに意志を持ったキノコが現れ大繁殖・・・
東京のど真ん中にまるで「アレ」そっくりの巨大なキノコが生える(笑)
映画「人類SOS」の原作をパロってウルトラセブンで味付けした「トリフィドの日」、
続いてたった4行の(爆)続編「トリフィド時代」、
SF作家山田正紀への愛がほとばしり、
しかも不気味なSFにもなってる「やまだ道 耶麻霊サキの青春」、
蚊の女性探偵(!)と人間の刑事のバディものにして
ハードボイルド風本格推理小説になってる(笑)「赤い家」、
おどろおどろというより単に汚らしい「地獄」を舞台に
三途の川の渡し賃をちょろまかしてる悪徳商人と代官相手に
水戸黄門一行が血みどろの活躍をする「地獄八景獣人戯」、
超二枚目俳優が永遠の若さと引き換えに得たもので日本が滅びかける(笑)「怨臭の彼方に」、
第二次大戦下で鬱屈する少年兵たちの、複雑な心象を描破した珠玉作とあるが(おいおい)、
実際は「愛国心」で最後の戦艦を動かそうとする太平洋戦争秘話(笑)「蹴りたい田中」、
最後は疾走した田中啓文の孤独な宇宙旅行記「吐仏花ン惑星 永遠の森田健作」。
・・・これ、孤独な宇宙旅行を癒すのが剣道着姿の森田健作ソフトだし(笑)
辿り着いたところは怖ろしい宇宙船の墓場となってる惑星で
そこは猿が鐘太鼓で合奏して宇宙船を引き込む怖ろしい星・・・
・・・猿が合奏・・・サルガッソーなんだもんなあ・・・(笑)
ほら、紹介してるだけで嫌になっちゃった(笑)。
ほんと1話読み終わるごとに「トホホ」と脱力感に襲われるこの怖ろしい短編集、
表紙も含めて最高なんだけどね(笑)
昔筒井康隆のブラックかつアナーキーなSFで大笑いしたけど、
火浦功の『たたかう天気予報』やとり・みきのSFパロデイ漫画により近いかな。
とにかく頭空っぽにして読んで、読み終わった後は痴呆になる・・・
これがこの本の一番正しい読書法のような気がしますする時すればせよ(笑)