以前にも書いたが、自分のプロフィールの「興味」に「必殺シリーズ」と記すほど
俺はかのシリーズのファンである。いや、かなりマニアだとこの際きっぱり言っておこう。
あ、最初に言っておくが、俺が愛しているのは、あくまで「必殺シリーズ」であり
「仕事人シリーズ」ではないのがポイントである。ここ、些細なようで重要(笑)。
多くの方は「必殺」といえば「仕事人」であり、
「仕事人」と言えば藤田まこと演ずる「中村主水」ということになるのであろうが
そうなってしまったことの「不幸」を以前ブログに書いた。
ありゃスペシャル番組だった「必殺仕事人2007」を観てがっかりして書いた記事だった。
まあ、俺の求める「必殺シリーズ」を書いてますんで参考までに・・・
http://myhome.cururu.jp/django/blog/article/31001308949
長年続いた「必殺シリーズ」が金曜夜10時の放送を終えたのが87年9月。
長年続いたTVシリーズを一度休み、5年間ほどスペシャル番組として年に数回放映した後に
火曜9時という時間ながら久々にレギュラーシリーズとして復活したのが
「必殺仕事人 激突!」だった。
当時は思ったよりハードな設定と「激突!」というタイトルに「おお!」と思ったものだった。
ただ「仕事人狩り」を目的とする奉行所の裏組織「覆面組」が存在・敵対するというその設定は
尻つぼみどころかいつの間にか消えてしまい(涙)、
やがてかつての「仕事人」通り、ぬるい話が続き、いつしか終わってしまうという
期待した割に出来は今ひとつのシリーズだった。
或いは・・・と思った「主水の最後」も描かれぬまま「激突」の放送が終わったのが92年3月。
おっさんの俺にとってはそんなに昔の出来事じゃないんだが
思えばもう15年以上「必殺」はTVに存在してなかったんだよなあ。
だから「必殺」と言えば「仕事人」としか認識されていないのも無理無いのだが。
で、15年ぶりに復活したその「必殺仕事人 2007」は
ジャニーズ事務所のタレントが堂々主役ということと、
(今までのシリーズでも脇役で存在していたから、まあいいんだけどさ)
映画では死んだはずの主水=藤田まことがまだ存在していること
そしてまたも性懲りもなく「必殺仕事人」のタイトルであることで
製作者側の意図が、俺の求めるものと絶対一緒じゃないなと思いつつ観たものだった。
主水キャラをなぞった以外に個性が見えなかったものの、主役の「渡辺小五郎」の東山も
抜け忍という設定の経師屋「涼次」の松岡も、新たに仕事人になる「源太」の大倉も
どれもキャラクターとしては悪くなかった。いや、予想以上に良かった。
まあ、きちんとした俳優にやってもらいたかったとは思ったが(今でも思うが)
そこはそれ、芸達者なジャニーズ故に,演技の「深さ」まではいかずとも
そこそこそつなくこなしていたものだった。
しかーし!脚本が・・・ダメだった。ストーリーとしての整合性は、まあともかくとして
彼らの殺し屋としての在り方、「仕事人」としての設定が甘すぎたのだ。
主水の存在も、なんだか居場所が無くて、中途半端もいいとこ。
俺の好きな「緊張感のあるのプロ殺し屋」の集団ドラマではなく
「仕事人」のフォーマットをなぞって、イケメン使って作ってみました的な、
なんとも歯がゆい失敗作だったのだ。
で、やっとこ今年から始まった「必殺仕事人2009」の話だ(笑)。
「2007」が好評だったことを受けての再登場だけに仕事人メンバーは「2007」と同じ。
よって初回のスペシャルではグループ結成の話は特になかったものの
レギュラーだとばかり思っていた「2007」から続投の水上あさみが
あっさり殺されるという意外な展開で17年ぶりのTVレギュラーシリーズは幕をあけたのだった。
涼次を追う抜け忍という設定の玉櫛=水上あさみの死は恐らくスケジュールの関係と(笑)
妹役の如月(谷村美月)をレギュラーにすることが決まっていたからであろうが
身内は死なないのが「仕事人」の悪しき歴史だったが故に、
この意外かつハードな展開で俺の期待値が高まったのは言うまでもない。
しかしながらスペシャルと1,2回を観終わった感想は率直に「惜しい!」だった。
最大の理由は「やっぱり主水の居場所がないなあ」ということ。
若い仕事人たちはそれぞれの設定・描写も良く、特に東山の同心・渡辺が良いだけに
画面で観てもその「老い」があまりに進んでいた藤田まことが痛々しかったのだ。
初回スペシャルしかでてこなかったが「せん」と「りつ」も同様で、
「もうこの3人は休ませてあげようよ」と思ったものだった。
「老い」以上に「同心である殺し屋」、「昼行燈のムコ」という全く同じ設定の渡辺がいては
元締でもなく、若い仕事人の知恵袋的存在にもなっていない「一人の殺し屋」でしかない
主水の存在価値がまったく感じられなかったのだ。
最初の2回目くらいまでは「早く主水を殺してやれよ・・・」と思ったものだった。
若い仕事人が充実している今こそ引き際を用意してあげようではないか!と思うのだ。
でもそこがマニアの哀しさで、毎回レコーダーに録画して欠かさず観ていると・・・
これがなかなか良い。回を追うごとに尻上がりに良くなってる気がするのだ。
それなりに経験を積んだ殺しのプロである二人、同心・渡辺小五郎と市井の経師屋・涼次。
この二人は「2007」で初めて組むことになったのだが、
同じ殺し屋でありながら立場を違えた二人の「対立」の芽が時折垣間見えるのがいいのだ。
加えて「2007」で素人から「仕事人」となった「源太」の、
プロになりきれない普通の人間の感覚・・・つまりは人を殺めたことへの後悔と葛藤、
そして世の中の不正への義憤の描写が時折混ざるのがポイント高いのだ。
殺しの超ベテラン中村主水を脇に回し、意見を異にするプロ2人と、真面目なルーキー1人
そしてでしゃばり過ぎない女マネージャー兼情報屋(和久井映見)という布陣が
時には互いを理解しつつも、変に馴れ合ったり、絆を深めたりせず、
ある程度の距離を置きながら、時には「仕事」のみで繋がって
怒りとやりきれなさを滲ませながらもきっちりと「プロ」としての仕事をしていく・・・。
まだ「チーム」としても機能してない(収録のスケジュール都合もあるんだろうが)
「緊張感」をたたえたこの布陣のドラマにも「期待」ができそうなのだ。
視聴率も好調なのだろう。6月まで放送が延びることになったのも良いことだ。
無理なハードな設定が初めからなかったこともあるだろうが
被害者・加害者ともにそこそこのゲストを迎えて展開するストーリーも
後期仕事人によくあった、時代劇を逸脱しすぎたあまりにお遊び的な設定もなく
今のところ安心して見ていられる。
単発ではなく「シリーズ」故の強みがこれからますます発揮されることを期待する。
まあ、まだまだ安心できない要素はいっぱいあるんだが
ここはもう少し様子を観ながら楽しみたいと思うのだ。
ただ、涼次=松岡の殺しの衣装&髪型が派手すぎるのだけは
早急に何とかしてもらいたいのだがなあ・・・(笑)。
他にも古寺で、神頼み的に頼み料を置きながら、「正義の味方・仕事人」に
仕事を「お願い」する描写も、「ううむ」と思ったものだったが
途中で消えて安心したと思ったらまた復活したりして、製作側にも迷いがあるんだろうが
あれは止めた方がいい。
「仕事人」は確かに晴らせぬ恨みを代わって晴らしてくれる。
初期と違って「仕事人」シリーズはいつしか「正義の味方」になってしまい
江戸中の人たちがその存在を知ってるような描写になっている。
神様、仏様、仕事人様・・・と頼られる立場になっているのだ。
それを古寺で金を供えて「お願い」してはますます「正義の神様」になってしまうではないか。
彼らは法で裁けぬ「悪」を、裏で裁く「稼業」を選んだ「殺し屋」なのだ。
正義の義憤もあっても、頼まれた仕事を行うプロなのだ。
そのためには悪人どもの上を行く、極悪として仕事を遂行するのであって
「正義の味方」ましてや「神様」であっていいわけがない。
あの「お願い」シーンだけはなんとかならんものかなあ・・・。
「必殺仕事人」が放映されたのが1979年。
今回の「2009」は「仕事人」30周年記念ということらしいが
やはり俺としては「仕事人」ではなく「必殺シリーズ」として
第1弾「必殺仕掛人」からの歴史を意識して欲しいのだがなあ。
それが無理だとしても「仕事人」という名称をそろそろ終わりにして欲しいのだ。
故に先に書いたように「主水の死に場所」が今回こそあることを期待したい。
ジャニーズ仕事人がこのまま充実していけるのなら、
今こそ彼に壮絶な引き際を用意してあげられる最大のチャンスなのではないだろうか?
と楽しんでいる今も思っているのだ。
ま、「2009」、これからも楽しみにチェックさせてもらいつつ
そのうち初期の「必殺シリーズ」名作群と
「仕事人」の何がダメかをまたきっちり書かせてもらいます(笑)。