先週はNHK-BSでジュリアーノ・ジェンマ主演のマカロニウエスタンを毎日昼間放映していた。
録り逃していたのを片っ端から録画して、いつも以上にレコーダーが大活躍の週だった。
イーストウッド&レオーネのマカロニ名作はコレクターズエディションでDVDを所有、
フランコ・ネロの諸作を含め、気に入り分はマカロニDVD BOXをそーっと買い揃えているが
どうにもそこまでして手に入れる気がしないジェンマ主演作(除く「怒りの荒野」)が
一気に揃ってラッキーであった。で、まずはこれから・・・
続・さすらいの一匹狼 ADIOS GRINGO(1965) 日本劇場公開(松竹映配) 1967/09
監督・脚本:ジョージ・フィンレイ 撮影:フランシスコ・センペレ 音楽:ベネデット・ギリア
出演:ジュリアーノ・ジェンマ、イヴリン・スチュワート、ピーター・クロス、ロベルト・カマルディエル、
ネロ・パッツァフィーニ
ささやかな土地を買ったカウボーイ、ジェンマが、偶然会った旧友から安価で牛を買う。
ところがその牛は盗まれたもので、街で本当の所有者から牛泥棒と間違えられたジェンマは
正当防衛ながら相手を死なせてしまう。
無実の罪を着せられた上に賞金までかけられたジェンマは、本当の牛泥棒である旧友ホセを探す途中で、
荒野で裸にされ杭で縛られた女性を助ける。女性は駅馬車での旅の途中に3人組の無法者に襲われたのだ。
ジェンマは彼女の治療のため、自らの危険を顧みず近くの町に連れて行く。
彼女の証言から駅馬車を襲った3人組こそホセたちであり、その中に町の有力者の息子がいることもわかる。
医者は二人の話を信用するが、保安官はお尋ね者のジェンマに対し半信半疑だった
二人が3人組から襲われ、ようやく保安官はジェンマの無実を確信し、町の有力者のところに乗り込むが
息子を溺愛する有力者はジェンマに駅馬車強盗の罪をかぶせようとする・・・。
ということで、ジェンマは最初から土地を持った善良なカウボーイ。
牛泥棒の濡れ衣晴らすために、あの野郎~!とホセを探す旅に出るが、さほど「さすらう」こともなく、
助けた娘に慕われるわ、医者や保安官も味方になり、ちっとも「一匹狼」じゃないのだった(笑)。
これは公開したクレイグ・ヒル主演、スコープ付きのライフルが登場することで有名な
「さすらいの一匹狼」がヒットした松竹映配が勝手につけた邦題ではあるのだが、
ややこしいことこの上ないよなあ(笑)。
加えてストーリーも、主人公始め登場人物の造形も、そし彼らの衣装も含め、なんかアメリカン。
まさに「イタリア製西部劇」であり、いわゆる「マカロニ・ウエスタン」っぽくなかったのだ。
マカロニ・ウエスタンといえば、デタラメなくらいの銃撃戦でバタバタ人が死ぬわ
リンチやドギツイ暴力描写、金に目がくらんだ有象無象が入り乱れて騙すわ裏切るわの復讐劇が普通、
主人公がそもそも一癖ある悪党だったり、まさに流浪の一匹狼であり、こちらもそこに期待してるのに
優等生的爽やかルックスのジェンマに合わせたのか、どうにも「暗い」方向に話は流れない。
「この恨み晴らしてやる!」ではなく「真犯人を見つけて無実を証明する!」だったように
何だか見ているうちにこちらの「期待」を方向修正しなければならない非常にマジメな作り方の1本だった。
主人公を信じ、フォローし、常に理性的な判断ができる味方が、医者。
法に準じ融通は効かないが真実を知れば頼もしい味方になるのが、保安官。
普通のマカロニウエスタンなら前者は酒場の親父で、後者は賞金稼ぎと相場は決まってるのにな(笑)
この2人が若い二人の旅立ちを見届け、笑いあうラストなんてほんと古き良きアメリカ映画仕様。
そのラスト前のクライマックスでも、馬鹿息子と、その息子を盲目的に愛する町の有力者にも
悪は悪なりの親子のドラマと悲劇があったり、
ジェンマの弾丸が尽きて、もはやこれまでって時に保安官と共に駆けつけて、一斉にライフルを構え
味方になるのも権力者に煽動されていた町の住民ってのもアメリカ映画的展開でして(苦笑)。
などなど、ジェンマのキビキビしたアクションやガンプレイ自体に文句はないんだが、
当時のポスターコピーに書かれた「逆光殺法おがみ射ち」っての、両手縛られてるだけじゃんか!とか
エロいシーンも冒頭の裸で杭で縛られたシークエンスだけかい!(それもジェンマが邪魔で裸は見えん!)
とか、こちらもジェンマ作品だから覚悟していたとはいえ、居心地悪くてねえ。
いやあ、無茶苦茶やんけ!と笑いながらツッコめる部分は皆無、音楽も印象薄く、
ジェンマの爽やかな顔のまんま真面目で品行方正な・・・要は悪くは無いのだが
こちらが期待するイタリア的どぎつさ痛快さは無いのに、本場アメリカ西部劇には及ばないわで、
何とも中途半端な、収まりの悪い「マカロニウエスタン」であったのだった。
金曜帰宅後、酒飲んだら床で寝てしまい、朝4時に起きてダビングしながら観たこの1本。
どうにも消化不良でもう1本、ダビングしながら観ることにしたのであった!