ヘルボーイ HELL BOY (2004)
監督・脚本:ギレルモ・デル・トロ 原作:マイク・ミニョーラ
製作:ローレンス・ゴードン ロイド・レヴィン マイク・リチャードソン
製作総指揮:パトリック・J・パーマー 撮影:ギレルモ・ナヴァロ 音楽:マルコ・ベルトラミ
出演:ロン・パールマン、ジョン・ハート、セルマ・ブレア、ルパート・エヴァンス、
カレル・ローデン、ジェフリー・タンバー
なんか好みの匂いがするなあ・・・と思いつつ未見だったまま弟子のマテさんに教えたら
先に観賞、絶賛だったので、師匠慌ててオークションで購入(笑)。
800円で購入した2枚組デラックスエディション、物凄いお得感の1本だった!
第二次世界大戦末期、ラスプーチンと手を組んだナチスが戦局の起死回生を狙い
異界から世界を滅ぼす邪悪な神を召喚しようとするっていう冒頭からいい感じだ。
ナチスとオカルトって組合せだけで「THE KEEP」想い出すくらい大好物なのに、
怪僧ラスプーチンは絡むわ、邪神召喚ってラヴクラフト?クトゥルーっすか?っていう
もう俺的には100点のニコニコしちゃう世界で、もう一気に持ってかれました(笑)。
この陰謀もアメリカ軍がしっかり邪魔して(笑)寸でのところで邪神の召喚は阻止されたものの
代わりに異界から産み落とされたかのようにやってきたのが真っ赤な姿の猿。もとい悪魔の子。
ヘルボーイと名付けられた彼は超常現象学者ブルーム教授が親代わりに愛情持って育てる。
そして成長したヘルボーイは、60歳だけど20代の肉体のまま
教授が設立したFBIの超常現象調査防衛局のエージェントとして魔物との戦いに挑んでいるのだ。
このまさに「異形のヒーロー」のヘルボーイがいい。
なんせ彼自身が魔物だから、デカイわ、真赤だわ、尻尾はあるわ、右手は石だわと強面この上ない。
生えてくる角を毎日グラインダーで削る様も可笑しいが、
葉巻やビールを好み、チョコバーで懐柔されるっていうのもなんか愛嬌あっていいのだ。
ただ「ヒーロー」としてその使命に苦悩するわけじゃなく、
世界の滅亡に立ち向かうのも、「ヒーローの使命感」というより、「俺の仕事」だからってのが
何ともドライでハードボイルド風味でカッコいいのだ。
ただ、気になるリズの後をつけたら新米職員ジョンと2人でいるところを見つけ、ブツブツぼやくのみならず
石まで投げて邪魔しちゃうなど、ちっともハードボイルドじゃないとこも笑えるんだが。
おまけにそんな姿をガキに見られて「隠れてないで告白しろよ」なんて言われるとこなんか
図体のでかい中学生のようで最高。「おう、同志!」って肩叩きたくなる感じだ。
・・・って俺も中学生かよ(笑)。
自分の姿にコンプレックスを持ち、人間扱いされない(人間じゃないけど)という
仮面ライダーやロボット刑事みたいな石森ヒーロー風の「異形の者の哀しさ」を湛えながらも
人間でありながら持ちたくもない「力」を持ってしまった仲間、リズへの想いを胸に
優しく接する「父親」ブルーム教授の想いを汲み、戦い続けるヘルボーイ。
そんな「心を持つ一人の人間」としての存在感がなんとも深みがあっていいんだよなあ。
そう、ヘルボーイは孤高であっても孤独じゃないのだ。
同僚である知的な半漁人エイプ(彼もまたいいキャラだ!)との異形の者同志の関係もクールでいいのだ。
毒づきあいながらも互いの能力を尊重するとこなんざ必殺のチームを思い出す。
そして新米職員ジョン・マイヤーズやブルーム教授たち人間との心の通い合い。
リズが打算の無いヘルボーイに寄せる友情以上の想い、信頼・・・。
これらの要素が、物語を単純な「敵との戦闘」に留めずいいリズムになっている。
むしろこっちのドラマをもっと見たくなるくらいだった。
とは言え敵の一人、クロエネンは最高だった!
百鬼丸かよっていう両腕刀振り回し&香港映画のキメポーズ的な殺陣がナチスに見えない難点はあるが
ヤバイ強さ&冷酷さで(素顔もステキ(笑))憎々しくもカッコ良い!また出てきて欲しいなあ。
それにしてもリズのセルマ・ブレマの不景気な顔は良かった!ああいう幸せ薄い顔に反応しちゃうんだよな。
三白眼気味の温かさを知らない目。それが薄くほほ笑む時の艶っぽさ。こういう目にも滅法弱いのだ(笑)
「パンズ・ラビリンス」で大いに気にいったギレルモ・デル・トロ監督が
マイク・ミニョーラの原作コミックの陰影ある雰囲気をうまく活かしているそうだが
原作読んでないからその辺はわかりませぬ。
ただこのダークな画作りの中で展開するこのキャラクター群像は
続編「ゴールデン・アーミー」の購入も強く決意させるには充分であったぞ!
不勉強で観てなかったブレイドシリーズにも今さらながら手を出したくなってきたのだった!