恐慌が社会を混乱さす「傷だらけの挽歌」 | 流浪の民の囁き

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映画を通した過去・現在・未来について、なぐり書き

不況吹き荒れる三十年代のアメリカで、金のためにはなんでもするモラル・ハザートに陥った

人々の醜い争いと、そんな中で相手に対する純粋な気持ちに感化され、加害と被害の関係を

転化させて歪んではいるが鮮烈な青春を感じる映画が、この「傷だらけの挽歌」である。



流浪の民の囁き-傷だらけの挽歌


http://www.youtube.com/watch?v=VKvG7x4364Q

「傷だらけの挽歌」 七十二年公開作


監督がロバート・アルドリッチで、この監督にしては珍しく若い男女の鮮烈で救い様がない愛情に

当時の不況から来る殺伐とした人間関係と、それとは逆に濃密な家族関係を描いて、金のなさに

よる犯罪を社会的問題として捉える意気込みに、ストックホルム症候群になった主人公と少々頭は

足らずとも相手への思慕には純粋さを感じる青年との恋愛を嵌め込み、殺伐とした世相と相容れない

濃密な家族関係をジックリと描いていた・・・。

で、主人公の金持ちの娘をねキム・ダービーが演じているのだが、これが金持ちの育ちとは少しばかり

見えないのだが、そこはご愛嬌でそのファニー・フェイスでの儚い心情を良く演じていた・・・。



流浪の民の囁き-傷だらけの挽歌スナップ

http://www.youtube.com/watch?v=YZzlEHNZdNM&NR=1

「傷だらけの挽歌」  ワン・シーン


この誘拐される金持ちの娘と、少しばかり知恵が足りない息子に対する母親の

ゴット・マザーぶりが、何とも迫力がある。

体格的には線の細い感じだが、その性根は座っていて、倅が侮辱されれば烈火の

如く怒りだし、そして完全に家族を従えている。

ここらの雰囲気は、あの宮崎駿が好む女性の姿に似通っている。

そう考えると、男の映画が得意のアルドリッチも、女性に対する考え方が投影されて

いるとも見える。家族を従えて信頼される、片や誘拐されながら最後は加害者を庇う

までになる女性と、どちらも自己犠牲の上に存在がある女性・・・。

そこらが透けて見えて、有り触れた恋愛ものでもなく、といってそこを蔑ろに描かない

真摯な態度がともすると、刺身の津の存在を輝かせる・・・。

傷だらけの挽歌 [DVD]
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Amazon.co.jp                        といったところで、またのお越しを・・・。