以前「嫌われ松子の一生」について書いたが、その時主題歌なら中島みゆきの「遍路」がぴったり
来ると思ったものだが、その他の日本映画でも、中島みゆきの歌は映像の中に溶け込めそう。
いや、より女性の心情を際立たせてくれると思えるのがあったので、それに付いて・・・。
先ずは、遍路の歌詞を書くが、これでも著作権でってあれば、即座に削除するが・・・。
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はじめて私に スミレの花束くれた人は
サナトリウムに消えてそれきり戻っては来なかった
はじめて私が 長い長い手紙書いた人は
仲間たちの目の前で大声で読みあげ笑ってた
はじめて私に 甘い愛の言葉くれた人は
私が勤めた店に 前借りに現われ雲隠れ
はじめて私に 笑い顔がいいと言った人は
あれは私の聞き違い隣の席の娘あての挨拶
はじめて私に 永遠の愛の誓いくれた人は
ふたりで暮らす家の 屋根を染めに登りそれっきり
はじめて私に 昔は忘れろと言った人は
今度は 彼の 人違いあまりに誰かを待ちすぎたあげくに
もう幾つ目の 遠回り道 行き止まり道
手にさげた鈴の音は
帰ろうと言う 急ごうと言う
うなずく私は 帰り道も
とうになくしたのを知っている
中島みゆき「遍路」 歌詞の一部
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この歌詞の歌を「嫌われ松子の一生」のあの派手派手しいラストのバックに流したら
また違った印象を観客に与えたのではないだろうか・・・。
どうも中島みゆきの歌は、もろな女性心情が歌詞に表れていて、日本人が表立って
聞く姿勢とは離れて、一人の部屋とかでなら素直に聞いていられる・・・。
それが不特定多数の場では、こそばゆい・・・、他人の視線が気になる・・・。から・・・。
で、男が描いた女性像というものも映画になっていて、それらを思い出すとなんだか
この中島みゆきの楽曲がすんなり作品に溶け染めそうな気がする。
この映画は確か七十年代に公開されたものと思うが、原作を遠藤周作
が書いていて、題名はなんだか紋切り型だが内容は、森田ミツという今
でも以前も「イモねぇちゃん」と吉岡という苦学生の物語で、ミツは周作
風に言えば「理想の女」の心情を持っていて、対する吉岡が功名心に
棄てるというところから、この題名になったものだが、ただし吉岡にすれば
そんな拾得感情でなく、ただ男としての「性欲の対象物」としての存在と、
もう相当に乖離したミツの純真な心情の対比が、よりミツの立場に片入れ
させてくれる。まして「ライ病」の疑いとか、その後の修道院での奉仕とか
この吉岡という男のその一時の快楽行為と、その後の保身と、ラストの
ミツからの手紙とかの場面に、中島みゆきの「化粧」を流せば、こりゃ
号泣されると思える・・・。
http://jp.youtube.com/watch?v=RxBQe2IXWME&feature=related
「化粧」 中島みゆき
この「化粧」の立場は勿論、ふられた女の寂しい心情を溢れんばかりの「優しさ」
で包み込み、慰めているかのようだが、画面から消えている時のミツの心情を
現すのには、最適な曲な気がする。
この「私が棄てた女」には、作者のキリスト教的教示があるのだが、それでも
日本の女性として考えた時、ミツの精神的美しさと中島みゆきの忸怩たる心情が
重なると、何とも労りという、本来的な優しさが喚起される・・・。
また周作は「彼の生き方」という本を書いていて、これが猿の保護に掛けた男のお
話しなのだが、作者が温かく見詰める主人公とみると、やはりこんな歌も・・・。
http://jp.youtube.com/watch?v=JMgUn6h9ads&feature=related
「彼女の生き方」 中島みゆき
上の映画と内容的には同じ男女の功名心と性欲をジレンマに揺れる、こちらは最後
には犯罪者となってしまい、どんでん返しが待っているのが、石川達三の「青春の
蹉跌」である。
ここでも中島みゆきの歌を使ったら、印象が違った女が出ている・・・。
こちらは七十四年公開作だったように思う。
主人公を荻原健一が、そして行動に振り回されながらも自分の
立身出世のためには「邪魔」と疎んじて、最終的には殺されてしまう
尻軽女役を桃井かおりが演じていて、この女の場合は下のような
曲がイメージ出来る。
http://jp.youtube.com/watch?v=LvObt3Nu-ts&feature=related
「アザミ嬢のララバイ」 中島みゆき
感受性豊かなゆえに、傷つくのを恐れ孤立感を薄めるのに破天荒な
行動に出てしまう女、それに振り回されながらも自分の立場のためには
切って棄てようとする男。
この映画も石川達三の社会的批判精神と、当時の左翼的思惑を孕んで
いるから体制的登場人物とか、それに媚びながら自分の苦学の能力に
奢れる青年、そして邪魔になったものを処分しても、それはそれで何より
自分の今後のためには致し方ないと、強引に思い込む身勝手さを持ち合
わせた陰湿な青年像・・・。
そして桃井かおりの役の女の壮絶な裏切りに、石川達三の想いが込めら
れている・・・。
妊娠した桃井に、とたんに自分の立場の窮地を感じる萩原は処分しか頭に
なくなり、それを実行してしまう。それも雪降る場にかつては欲望なのか愛情
なのか、懸命に励んだことも忘れ去って・・・。
しかし逮捕された刑事に教えられる「妊娠していた女の子供は、お前の子で
はない」という、自分の行動を無にする言葉で、映画も小説も終るのだが、
男から見た女として、その尻軽さが軽蔑の対象となるのに、性への欲求は
控えられない・・・。対して心を読む破天荒な女は、それを知り抜いている。
すると、やはり「アザミ嬢のララバイ」が似合う・・・。
と、まぁ、「悪女」をリンクした時、そういえばと思い書いてみた・・・。
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