男だけの空間において、指揮官とそれに従う者達の葛藤を「叛逆」という軍の指揮系統
からは逸脱したものは、映画にする対象としては好素材らしく、今までにも戦艦・潜水艦
とかの映画化がなされている。
この「戦艦バウンティ」も、それらのモノの史実にある事件を描いたもの。
そこから浮かび上がるのは、規律と個々の思惑、そして不利益を被る平の船員とかと、
社会の縮図が、昔から変わることなく不条理が生み出される・・・。
http://jp.youtube.com/watch?v=DyeL44k5dPo
「南海征服」 三十五年公開作
http://jp.youtube.com/watch?v=MEmZ_A0UTrA
http://jp.youtube.com/watch?v=wUlgVqSeLRk&feature=related
「バウンティ 愛と反乱の航海」 八十四年公開作
三作とも同じ素材だが、流石に戦前のものは「叛逆」も仕方ないと思える船長の独裁性を際立たせ
副長の側から描いている。
それが第二作でも受け継がれ、パンの木と人間の生命にとっての貴重な「水」に対しての任務か人
道かで反乱のきっかけと、限られた世界における男達の離反と軍律の狭間・・・。
そこに南国の楽園という甘美な世界が絡まり、人間の怠惰だが「ストレスない世界」への憧れ・・・。
が、軍律に背いても敢行してしまうきっかけを生んでいる。
そして最後のメル・ギブソンの映画では、船長も副長以下もそれなりの苦悩を抱えてと、一番公平な
描き方なのだが、どういうわけか一作目のアカデミー獲得の影響は大きいからか、一作目は宣伝に
これ務め、名作と冠されている。
ここでの主題は、史実にある「叛逆」についての描き方だと思うが、戦前の価値観からすれば、南国の
楽園「タヒチ」が魅力的で、そこで人間らしく生きるというところに、憧れにも似た意識が入り込み、ドラマ
としてやはり名の売れた人だと、それがデフォルメされて善悪として描かれれば、見ている者にとって
楽に見ていられる作品となる。
とまぁ、素材は十八世紀のもので、南の楽園と軍律と男同士の諍いと、船という特殊空間では、起こりう
るべき出来事・・・。南国に残った人々は幸せに暮らしたのか?・・・。
これを思い出したのは新聞の「テレビ欄」でのものだが、時を同じくして戦時下の「言論弾圧」に自衛官
論文騒動と、軍に対するものが報道されて、片や戦時下においての「治安維持法」違反、それに対して
納得出来ない遺族の戦い、「免訴」という最高裁の判断でも納得出来ない。
法律違反はしていないが原動力というよりも、反体制勢力の運動という側面。
片や自衛官の侵略戦争否定の論文、「言論の自由」から言えば、大事なものでもないが特亜が絡むと
とたんにマスコミの論調は激烈になる。
船を追い出される体制側の船長達、片や自由を享受したい反体制側と、こういった縮図も出来上がる。
で、島に残った人々は幸せであったか、後年アメリカの捕鯨船が反体制側の隠れ住んだ島に寄港した時
そこで生き残っていたのは、たった一人きりで、あとは女十人と子供二十三人・・・。
理想的楽園としていた島での生活は、文明とはかけ離れ互いの軋轢に、結局は殺し合いが起こり・・・。
ここらはあの赤軍派の「粛清」という名の「人殺し」と似ている・・・。
そして付け加えれば、船長たちは一人も殺さずイギリスに戻っている・・・。
「地上の楽園」と揶揄された国から逃げ出す人々も重なる後日談ではある。
と、映画が描く後の物語は、ホラーでやれそうな物語かも・・・。
- 戦艦バウンティ号の叛乱
- ¥1,417 といったところで、またのお越しを・・・。