悪役という役柄をしっかりと演じていると、そのキャラが強烈で見ている客
にも、印象深くなる。
マカロニ・ウェスタンで「荒野の用心棒」「夕陽のガンマン」のジャン・マリア・
ボロンテなどは、そのもっともたるものでその髭面の汚さと性格の悪さが
より凶悪な人物と映り、最終的にやられると、観客はよりすっきりする。
その悪役が、キャラクターを生かして主演を演じると・・・。
http://jp.youtube.com/watch?v=W0XtdTRdKX0&feature=related
「群盗 荒野を裂く」 六十六年公開作
革命紛争のメキシコを舞台としたこの映画には、チラッとでも正義面は登場しない。
だけ邦題の「群盗」は良くぞつけた題名だと思う。
ここでジャンの演じる盗賊は、政府軍から武器を掻っ攫い、それを革命軍に売りつける
というあこぎな稼業で生きている。
その風貌から、こういった役柄はぴったりはまって見える。
もっとも盗賊とはいえ、農民出身であり、やはり義賊的な面持ちで盗賊をしているらしい
科白も散見出来、何が何でも金と言う部下を従えても、庶民には銃の撃ち方を教えたり
して、革命軍が陥落させた町の人々に、自己防衛を教え込む気性もある。
その男の元にアメリカの男が列車強盗の折、知り合いとなる。
生きるか死ぬかの刹那の男どもだから、汗臭さが画面から出てきそうな汚さが、ジャンの
キャラにぴたりとはまる。
解放された町にやって来た盗賊達は、アメリカの男の口車に乗り、それを革命軍に売りつ
けるべく、政府軍の反攻の情報に躊躇しているジャンを置いて、出て行ってしまう。
そして町民に前に書いたように迎撃の銃の撃ち方とを教え込み、ジャンは一行の後を追う
ことになる。
しかし盗賊団は政府軍に待ち伏せを受けて、アメリカ野朗とジャンだけが生き残り、二人して
革命軍への武器を届けることになるのだが、苦難の連続により男同士の情が芽生えて、
革命軍の拠点に着いたところでは、ジャンはアメリカ野朗を信頼してしまっていた。
しかしアメリカ野朗は、賞金稼ぎで革命軍の将軍殺しが目的であった・・・。
とまぁ、シナリオもよく練られたものとなっていて、ジャンの心情的には、このアメリカ野朗に
友情を感じても、最終的判断は「殺害」して、どこかへと行方をくらます・・・。
という、男の生き様をリアルに描いた見せた。
マカロニ・ウェスタンとしてよりも、ハードボイルド・ウェスタンと呼んだほうがいい出来である。
もっともこのアメリカ野朗を演じた役者がもう一つパッとしないので、ジャンばかりが目立ち、
まぁ、ここらになると「さらば友よ」のアラン・ドロンとブロンソンと似ているかも知れないが、
フランコ・ネロあたりにやらせたら、より映画全体が引き締まったのでは・・・。
にしてもジャンの言うセリフがいい。
子供に得た金を渡して、パンを買うなら、銃を買え 「銃なら俺が売ってやる」とかのセリフには
盗賊であっても「一寸の虫にも五分の魂」的、男としての生き方を垣間見せる。
勿論革命に目覚めたわけでなく、そんなことには関心がなくとも自分の命は自分で守れの裏が
読み取れて、去って行くのはこれまでのマカロニにはない、泥臭くとも格好いいものだ・・・。
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- Amazon.co.jp といったところで、またのお越しを・・・。