むせ返る嫌悪感「イナゴの日」 | 流浪の民の囁き

流浪の民の囁き

映画を通した過去・現在・未来について、なぐり書き

ドナルド・サザーランドという役者がいる。

個性的な顔立ちとすらりと高い身長から、なんとも強烈に印象に残る。

その俳優が、他の役者達から浮き出てしまって、サザーランド以外、

ミス・キャストではないかと思うのが、この映画「イナゴの日」である。

いや子役は、サザーランド以上にこの陰鬱な映画に欠かせなかったか・・・。



イナゴ

http://jp.youtube.com/watch?v=fJv6x8bjIGE&feature=related

「イナゴの日」  七十六年公開作


群衆の群れる様を「イナゴ」に当てはめ、三十年代のアメリカの世相を七十年代の

批判的視点で描いたもの。

「真夜中のカーボーイ」のトリオが組んでのものだが、明らかにカレン・ブラックは、

ミス・キャストではなかったかと思う。

容姿の好みは人それぞれだが、あの風貌の女性が、男をたらし込む天才みたいに

なっているものだが、こちらはどうしても嫌悪が先に立ち、すっきり役を受け入れら

れない。

これが反対に男に棄てられる薄幸な女等だったら、逆に・・・。

遠藤周作の「私が棄てた女」みたいだったら、それこそ感情移入してしまうのだが・・・。

容姿端麗で、その上のあばずれ、外見からは判断できない精神の荒廃ってなところ

で、役者を見つけていたら、より以上にサザーランドが哀れになる・・・。

そんなだから、サザーランドの傾注振りが「痛い」し、その他の甘ちゃん役者の言動も

うんざりさせられる。

ただ最後は惨殺される子役の憎たらしさはいい、この映画の主題はもしかしたら、この

子役の恐ろしく残虐なところを表したいのではないか、何て考えしまう。

サザーランドは気が小さく、田舎者特有のおどおどした態度とか、演技はいい。

そして最後の最後で、この子役からの嘲りに、感情が爆発してしまう。

それに誘発された群集の騒動は、鬱積した不満や世情不安の爆発・・・。

それは大量発生した「イナゴ」が、すべての作物を食いつくし、後に残るのは何もない

という状態と良く似ている・・・。

とまぁ、真夜中のカーボーイの社会の底辺を静かな悲しみにしたのとは打って変わって、

感情の爆発は、どこに向かうか見当がつかない混乱を巻き起こすってな、少々ハードな

批判的映画に仕上がった。

にしても、子役の憎たらしい演技は、演じているのだったら天才肌だが、成人してからも

同じような演技が・・・。子役は大成しないだな。


ドナルド・サザーランド/イナゴの日

¥1,575                    といったところで、またのお越しを・・・。