音楽が癒す衰退産業の働き手達「ブラス」 | 流浪の民の囁き

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映画を通した過去・現在・未来について、なぐり書き

産業としての役割を終えつつある石炭産業の町に、音楽の持つ「癒し」や「励まし」

を前面に押し出して、最後はほろりとさせてくれる映画に、この「ブラス」があった。

衰退していく産業の町、日本でいえば「夕張」が代表だろう・・・。

そんなところで生まれ、伝統として受け継がれたブラス・バンドの奏者達の悲喜こも

ごもは、生きていくのに音楽も欠かせない要素なのを再認識させる・・・。



ブラス


http://jp.youtube.com/watch?v=FxU9qEltkYk&feature=related

「ブラス」 九十六年公開作


http://jp.youtube.com/watch?v=C8uoY9e5YVY

「アランフェス協奏曲」


http://jp.youtube.com/watch?v=6F5vBsY9VZ8&feature=related

「ダニー・ボーイ」


http://jp.youtube.com/watch?v=FjMWOzeuRiw&feature=related

「ウィリアム・テル序曲」


衰退産業の石炭鉱夫達の苦悩と、音楽に対する真摯な愛着。

そしてイギリスらしい格調が覗く各鉱夫達の立ち位置。

実際に廃坑になった町の音楽隊の物語を、伝統のブラス・バンドの

奏者がこっそり出演して、音楽面からも優れた物となっている。

生活を抱え、廃坑になれば失業の憂き目と、生活困窮から来る諍い

そして仲間の入院・自殺と取り巻く環境は悪化の一途。

それでも音楽が好きの一念で、全国大会のロイヤル・アルバート・ホ

ールを目指して・・・。

団員に入る女性が起こす騒動や、失意の仲間を励ます団員の心遣い

とか、小品では在るがとても心温まる映画になっている。

そして全国優勝を果たしても、待っているのは廃坑の決まった町への

凱旋・・・。しかしやり終えた充実感は、困窮の中での一筋の光に似て

新たな希望を心に持たせてくれる・・・。

この映画は、「ブラス」の題名どおり、ブラス・バンドのもので、実際には

間違ってレンタルしたものだった。

「ブラスト」の日本公演のやつと勘違いしたのだったが、たまには間違った

ところで、拾い物もあるもんだと、見終わってニヤついてしまった・・・。


にしても、衰退産業の城下町の惨状は、深刻な問題を提議している。

「消えた町」は日本にも多いし、残された廃墟のみが当時の栄華を偲ば

せる・・・。廃墟に漂うものうい雰囲気と、そこにある生活の忘れ物は物悲

しく何かを語っている。

それでも「生きている人間」は歩き出さなければならない。

そこに音楽があれば、程度の差はあれど心豊かな時を過ごすことが出

来る。へたくそな演奏でも、懸命な演奏は「人間らしさ」の再生には重要

なものなのだろう・・・。 そんな感想が漏れる映画ではあった。

ブラス!/ユアン・マクレガー
¥2,910
Amazon.co.jp              といったところで、またのお越しを・・・。