視点を変えた復讐劇が認知させた「オルカ」 | 流浪の民の囁き

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映画を通した過去・現在・未来について、なぐり書き

動物パニック映画という範疇で、「ジョーズ」の大ヒットを受け、

亜流のものがどんどん作られ公開されたが、それらのすべてが凶暴な相手に対する

人間の奮闘というワンパターンに陥り、新鮮味も何もない中、この映画「オルカ」は

シャチの視点で描かれていて、擬人化が「シャチ」という動物の認知度を高めた・・・。



オルカ


http://jp.youtube.com/watch?v=b4d74eYeyww

「オルカ」 七十七年公開作

映画は何も攻撃的動物としての「シャチ」を描いていないが、配給会社にすれば、

「ジョーズ」のヒットにあやかりたいとパンフレットもポスターも「シャチ」の脅威を前面に

出しパニック映画と見がもう宣伝取っていた。

まぁ、人間側からすれば、襲い来る動物で間違いないが、ここは脚本の妙があり、まるで

「マカロニ・ウェスタン」を海洋に当てはめた。あるいは「マッド・マックス」の復讐劇を「シャチ」

に行なわせる・・・。

脚本を書いた人物が「夕陽のガンマン」や「続・荒野の用心棒」を書いた人となれば、ラストの

対決へ持っていくのに、強引でもサイド・ストーリーを巧く利用し、観客に「シャチ」に感情移入

させるような描き方をしていた。

布石として研究用のシャチの生け捕りで、メスのシャチを生け捕れども絶命させてしまう。

そしてそのお腹から赤ん坊が出てくる。

それを見詰めるオスのシャチの目が、怒りに燃えて・・・。

もうこれはマカロニが得意とする「復讐」のパターンを踏襲して、観客を一気にシャチの心情

を理解させる。

そして対決に持っていくのに、少々強引だが頭脳明晰で復讐に燃えるシャチは、海に出ざる

得ない立場に漁師を追い込んでいく・・・。

この漁師をリチャード・ハリスが演じ、生物学者にシャロット・ランプリングという少しやせ型で

より不幸そう、いや幸薄そうな女性をつけると、はかなさと不幸とが画面に滲んで、より以上に

「シャチ」の悲しみを倍化させてくる。

で、マカルニのラストはいつもながら、苦難の末復讐を終え、それでも報われない思いを抱い

て寂しく去っていくというニヒルな後姿・・・。

それをそっくり当てはめるから、シャチは氷海の海へ傷ついた身体のまま去っていく・・・。

この人間同士から、人間対動物に持ち込んだアイデアが「ジョーズ」の恐怖一辺倒と違って

「シャチ」という動物の認知度を格段に上げて「オルカ」がシャチの英語名で「シャチ」が「オルカ」

で日本で通じるまでになった・・・。

と、オルカが頭脳明晰で人間的感情があり、家族愛に秀でている動物・・・。

として、今では認知されのに貢献した映画だったのではねないだろうか・・・。

実際のオルカは、鯨の天敵らしいが、さてオルカ対クジラそれも白鯨にして、オルカの子供が食べ

られてしまったら、また違った見方が観客に生まれ、保護運動も衰退するかも・・・。

いや、クジラに大量に食べられている小魚に擬人を当てはめ、「蟻と巨象」並みの対決を映画化し

たら、さてどうだろうか・・・。

ケイコを海へ帰したい―世界でいちばん長い旅をしたオルカ (感動ノンフィクションシリーズ)/辺見 栄
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Amazon.co.jp                      といったところで、またのお越しを・・・。