アラブでの英雄はイギリス人のローレンスであったが、英雄とは権力者にとって
諸刃の剣で、庶民の羨望が高まれば、自分の位置も脅かされかねない。
するといつしか、そういう人物は煙たがれ、追い落としを画策されて刑場の露となる。
そんな消えた方をしたのが、十九歳の「ジャンヌ・ダルク」である。
http://www.youtube.com/watch?v=9zy5-VVAqgU
「ジャンヌ・ダルク」 九十八年公開作
監督はリュック・ベッソン、主人公ジャンヌはミラ・ジュヴォウ゜ィッチ
神の声を聞いた少女として評判が広まり、農家の娘が百年戦争で
疲弊している王族によって、聖戦士として戦場へと登場してくる。
そして現場の騎士団はやがて奇跡的な行動を取るジャンヌに全幅の
信頼を芽生えさせ、「この戦いに勝てるかも」と再び士気を鼓舞させ、
これまで破れることのなかったイギリス軍の砦を撃破してしまうという
快挙を成し遂げてしまい、ジャンヌの名声はいやが上にも盛り上がっ
てくる。するとそれへの不安が王族でさざ波のように広がっていき、
当時のカトリックの王族庇護を失えば、宗教としての地位を失う聖職者
は、宗教裁判という一方的な弾劾を行い、悔い改めを強要するが、ジャ
ンヌは断固拒否し、火あぶりの刑で露と消えてしまう。
その後、死してなお慕うものたちによって、ジャンヌの罪は取り消され、
生前の地位を取り戻す・・・。
と、「アラビアのロレンス」と同じような処遇を受けたジャンヌが生きた時代
は十五世紀、そしてロレンスは十九世紀、そこには四百年のタイムラグが
あるが、人間の権力欲や保身は代々受け継がれ、いつしか「いつか来た道」
へと舞い戻ってしまい、英雄は不遇のうちに名だけの後世に残す・・・。
とまぁ、実際の現場とそれを動かす権力者とでは、感覚も違いまた戦闘の醜
さも体験出来ず、その上の机上の空論に終始し、後世に名を残すことなく、た
だ現世利益はたっぷりと享受するという、まるで「くもの糸」の悪たれと同じ思考
そしてこの現世利益は宗教にとっての教義として、とても重宝なものである。
そこにこのジャンヌの悲劇が起こりえる・・・。
にしても、この主役のミラの視線の鋭さは、「ありえねぇ」敵もたじろぐ女傑と映った
今では「格好いい」と賞賛を浴びるだろう立居振舞いだが、過去の十九才と今の十
九才では、相当な・・・。
この映画、戦闘場面はいいのだが、その他の場面があまりにも緩慢で退屈した。
やはりリュック・ベッソンはシャレとノンストップが、持ち味だろうなぁ・・・。
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といったところで、またのお越しを・・・。