畏怖する巨大猿と潜む残虐な精神性「キングコング」 | 流浪の民の囁き

流浪の民の囁き

映画を通した過去・現在・未来について、なぐり書き

キングコングといえば、諸々のモンスターや怪獣の元祖的キャラクターだが

日本の怪獣が人間では阻止出来ないと、いつも人間の防御は負けるのとは

違い、最後はやっつけられてお仕舞いというところに、やはり違った精神性を

見る思いがする。

歯向かう者は容赦しない、それがたとえモンスターでも倒せないものは無いの

思い上がった精神性は、だから自然も制御出来るとなり・・・、と、見ていて日本

の怪獣映画の根底に流れる人間の叡智の及ばないものはあると、少しばかり

違っては、やはり・・・、残虐な精神性が見え隠れ・・・。



キング001


http://www.youtube.com/watch?v=_JcKdgAQ8s0

「キングコング」 三十三年公開作

モノクロの画面に踊るストップモーション・アニメはウィルス・オブライエン

以後に多大な影響与えた優れものである。

ただ物語りは、山師の映画監督が、一山当てようのスケベ心で探検に出て

遭遇する現地人に崇められる怪物を、都会へ連れ帰るという商売商売の

発想しかない。そこで見世物として披露されると、興奮したコングが暴れだし

それではと退治してしまうと言う、当時の不況はモンスター並でも、人間はそ

れさえも克服出来る「万能の長物」である。という思惑も感じられ、また人質に

なる女性との意志が通じるかのような場面も設定して、心情的に身びいきを

引き起こす場面も挿入と、ただの見世物のエゴを薄めて、悲劇的結末へと

持っていく・・・。

で、見世物屋のおっさんが「コングは美女に殺された」と科白をはいて、なん

だかコングが今でいうストーカー見たいな性格として、仕方なく殺した・・・。

と、物語自体はさほど、練られていない場当たり的出来だが、このコングの

キャラクターはいい、そして当時としては、娯楽の無い時代である。

だからこそ未知の見世物への憧れ・畏怖はすべからく皆抱いていたから・・・。

見入る場面はエンパイア・ステートビルへの登頂、七十年前の映画だという

ことを忘れる、生き生きしたいい場面だ。


http://www.youtube.com/watch?v=w3TwHW8ItAA&feature=related

「キングコングの逆襲」 三十四年年公開作

一作目の大当たりに気をよくして作ったのが、後には日本でも「ゴジラの息子」

として製作されたくらいで、なんと息子コングが出てくるものだが、こちらは未見

であり、こうなるとうんざりさせられるB級に成り下がる。

http://www.youtube.com/watch?v=1qBA750YNiE&NR=1

「キングコング」 カラー修正版 八十九年

モノクロをカラーに再編集したもので、これも未見、探したらあったのでリンク

したまで・・・。


キング002


http://www.youtube.com/watch?v=aanYNjjoCQo

「キングコング」 七十六年公開作

これはあのパニックこそ映画の醍醐味と信じて疑わない製作者が、大見得を切って

製作したリメイク版であるが、最新技術が今一出来が優れず、リック・ベイカーの着

ぐるみ頼った、何ともな映画になったものである。

ただコンピューター制御の手とかには、幾分金をかけた分映像には映っている。

また着ぐるみの表情も豊かになって、そういった点は四十年の歳月の功績・・・。

ここではコングの登るビルは、貿易センタービルになっている。

そしてヘリコプターの指揮官は、あのアーノルド・シュワルネッガーが無慈悲なパイロ

ットを演じている。

ちらっと考えると、コングは素手である。そこに最新の攻撃ヘリを対峙させるって、やは

りどこかに「歯向かう者は許さない」的、精神性があちらの人間にはあるのかしら・・・。

最新兵器があれば生け捕りにして、故郷に帰そうってな発想をしてもいいと思うが・・・。


で、続編で作ったのが「レディ・コング」であったと思うが、こちらはさすがレディファースト

だけあり、故郷へと帰すという努力しているが、映画自体は大コケで見るべきものは一切

ない出来である。



キング003

http://www.youtube.com/watch?v=XqTOgwKwAwQ&feature=related

「キングコング」 〇五年公開作

五年に公開された映画は、三十三年の完全リメイクものであり、怪獣で育った

監督の思い入れが、存分に描かれていて長い映画となった。


http://www.youtube.com/watch?v=CaF_AZ0cumI

エンディング・シーン

出だしから充分に細部まで拘った再現は、見ていてはぁっとびっくりするのだが、

オリジナルどうりの設定だから、最後は複葉機によって殺されるのは変わらない。

ただより人質となった女性とのほのぼのした場面を増やし、やたら郷愁を誘う。

とはいえ、最後の科白も同じでは折角の再現も、「なんだよ、結局、無責任な人間

が人間であるだけで、殺生の権利は人間だけにある」ってな、山師の無責任さに腹

が立つで終わりは、もう少しひねってもらったら、印象も違ったと思うが・・・。


モンスターの映画は、このコングの活躍でそれこそ各国で作られ、公開されている。

そして共存共栄というあの島の伝統は忘れられ、どんどん凶暴な怪獣へとグレート

アップされていくのだが、ここでさすが日本と思うのは、これに影響されても残虐に

殺してしまえというものがなく、防御に専念と国民性を理解している作り手・・・。

ってな、理解も出来る。何しろ怪獣映画において自衛隊は連戦連敗を続けている。

また怪獣は殺されないで、自ら死くんでいくって、やはりどこか精神性は表れる。

「キングコング」の作品をよくよく考えると、そんな感想も生まれる・・・。

キング・コング(トールケース)
¥3,307


                        といったところで、またのお越しを・・・。