生きることに疲れた人が癒される「バクダット・カフェ」 | 流浪の民の囁き

流浪の民の囁き

映画を通した過去・現在・未来について、なぐり書き

アメリカが舞台でも、製作会社・配給が旧西ドイツの映画があった。

旅人と寂れた郊外のレストランの女主人のお話だから、ロード・ムービー

とも取れる、派手なアクションもなく、淡々と流れる日々の社会からは

忘れられているような人々の悲喜こもごもを優しく包む雰囲気が印象的

な映画だった。



bagdat001


http://www.youtube.com/watch?v=MyU1R50_Nc8&feature=related

「バクダット・カフェ」 八十九年公開作

旅行中の中年夫婦のケンカで、置き去りにされた中年女がたどり着いた

砂漠の道の寂れたレストラン兼モーテル、そこを切り盛りするそれこそ人生

自体に疲れ切った中年の女主人との出会いから、諦めきった生き方をドイツ

からのこの「異邦人」によって、甦らせるまでを、淡々とした描写で描いている

ともすると変化のない設定に飽きもする見方も出来る評価が二分しそうな物語

だが、このドイツの中年女の「可愛い性格」が段々に分かりだすと、いつしか音

楽の心地良い響きと共に、ああこういった癒しは万人に受け入れられるものでは

ないかと思えてくる。

中でもジャック・パランスの立ち位置が、これがあの悪役かとほろりとさせる孤独な

中年男をひょうひょうと演じていた。

またこの女主人の生き生きした顔が出だしの暗さとは打って変わって・・・。

にしても不思議な映画だ。

第一題名の「バクダット・カフェ」はこのレストランの店名としても、アメリカである。

それらしい雰囲気は皆無だし、経営者は黒人である。

これを見る時にも、少少それが引っかかった。なぜパクダット・・・。

ただ見終わった後には、無国籍的人間のかかわりというコンセプトにたどり着き、

ありだなぁと、映画の設定を肯定してしまう。

という感想は一重に、この中年太りのドイツ女の言動とユーモラスな雰囲気が、映画

が進むに連れて、はまってくるからだ。

脚立に座り、貯水タンクを掃除するところなど、そこまでやらなくてもとも、ああドイツ人

気質とは、何でも綺麗にしなければ納得しないものなのかと、変な理解も出来る。

この映画、とても夕陽が綺麗である。

夕暮れとくれば、黄昏であるからして、この社会から忘れられているかのような場所に

とって終の棲家とも解釈出来る。

また見終わった後、こんな寂れていても人間的つながりが濃密な場所は、終の棲家に

相応しい場所だなぁ・・・、と、たった一人の汗っかきの中年女の存在が、なんとも癒しの

アイテムに相応しくなって来る。

耳に沁みる音楽と、心に沁みる寂しい人間の交流は、癒しになるなぁ・・・。

今日から三月、春間近には、春の暖かさにも似た汗っかき中年女の甲斐甲斐しいユー

モラスな動きを思い出すのもいい・・・。


banner001
                           といったところで、またのお越しを・・・。