雪原を疾走する哀しき「暴走機関車」 | 流浪の民の囁き

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映画を通した過去・現在・未来について、なぐり書き

極寒の白い風景の中を走る「機関車」の力強い動きに、狂気じみた男二人が

素直に機械は、「暴走」し始める。

印象的な雪原を舞台にした狂気の男のぶつかり合いが、極寒の寒さを熱く

吹っ飛ばす問答無用のアクションが際立った映画が「暴走機関車」である。



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http://www.youtube.com/watch?v=KgJ9qtTpRjw&NR=1

八十五年公開作

この映画の見所の雪原を走る機関車での、脱走囚と刑務所長の

いがみ合いには「北国の帝王」の諍いの理由より、生存の重みが

野性的に描かれている。

そしてほとんど色彩が白黒となる後半の追いつ追い詰められは

極度に疾走する機関車の鼓動と共に、はらはらどきどきを見ている

者へ、どんどん喚起していく。

一説では黒沢明が監督するはずだった作品だと聞く、この人間の

諍いと戦うスピードの連続は、なるほどと納得させられる。

「真夜中のカーボーイ」の田舎の天然青年の面影が微塵もない、ジョン

・ボイドの狂気に、これまた狂気で応える刑務所長の対立軸は、「北国の

帝王」に似ているが、その対立軸をさらに雪原という白い背景に埋め込むと

狂気が鮮明になるし、生への願望、逃れの意気込みが人間の底力・・・。

良く「火事場の馬鹿力」って表現があるが、それに似て物凄い執着心を見せ

られているようだ。

見事なスピード感と演出には、舌を巻く。

それを最大に導き出すのが再び機関車という機械なのが、鉄道好きには

堪えられない。

にしても「暴走」しているのは人間であって、好きで暴走しているわけでない

機関車からすると、迷惑な狂気を帯びた人間どもだなぁ、となる気もする。

「正確無比な機関車を暴走させる人間の狂気」、キャッチ・コピーはこうして

貰いたいものだ。


                   といったところで、またのお越しを・・・。