音楽が映画を格調高くする「炎のランナー」 | 流浪の民の囁き

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映画を通した過去・現在・未来について、なぐり書き

この八十一年公開のイギリス映画「炎のランナー」において、ただ走るだけの競技を

そこはない哀愁で包み、競技自体を格調高く気品の満ちたものに仕上げたものに、

やはり「音楽」が大きな力を発揮していた。

英国ならではのクラシック的映像に、最新の電子音楽が是ほどマッチしていた

のは、先見の明か製作者の理解度が高かったのか・・・。



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http://www.youtube.com/watch?v=e4qDvSC9nqo

パリのオリピックに出場し、ゴールト゜・メダリストとなる二人のイギリス人の

宗教的葛藤や、ユダヤ人ながら国籍上イギリス人になりたい男の野望と

苦悩、それに恋も絡んでイギリスの厳格さや尊厳など、当時の雰囲気を

忠実に再現してドラマとしても見ごたえがある。

もっとも休息日だから棄権だとかという宗教観が、少しばかりスポーツも

当時ではそんな扱いだったのに、少しがっかりするがただ走るだけの競

技をスロー・モーションを巧みに使い、競争自体を人間の生き方の過酷さ

として、体現している映像は見事である。

もっとも「バンゲリス」の音楽が、そのバックボーンとして強力に映像を威

厳ある物に高めている。

これが「威風堂々」辺りを当てていたら、ただのスポーツ奨励映画である。

で、次に「南極物語」の音楽なのだが、これも映像に音楽、ミュージック・ビ

デオ的要素が強いものに仕上がって・・。人間は脇役である。


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http://www.youtube.com/watch?v=5w0Xy_6WIY0&mode=related&search =

もの言えない動物を扱った作品でも、その躍動感と音楽が絶妙にあっていて、

もの言えない動物の心情を、ことさら気高い精神に昇華させえる旋律と、温かさ

を寒い風景映像なのに感じさせ、観客をじぃ~んと感動させる。

「太郎、次郎」のシーンは、映像と音楽の見事な融合の産物であった。

日本映画の映像的印象度で言えば、この「南極物語」の再会シーンと「砂の器」

の父子の海岸線を彷徨うシーンは、屈指の美しさだ。



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http://www.youtube.com/watch?v=ZDhWrLyXiyc&mode=related&search =

こちらは近未来の世界を描いた映画である。

この作品公開時は、客の不入りでコケてしまったが、その後レンタルに

回されると大好評となる。

そういった映画には、「ダイ・ハード」もあり「シルバラード」なんてのも・・。

ここでも「バンゲリス」は、本来の電子音楽の持つ先進性を・・・。

といいたいところだが、合っているとは思えない。

バンゲリスの音楽は、人間の極限や自然の神秘、そして動物の過酷な生

活ぶり等、生きているものの懸命さをテーマにした物の方が数段、印象

深い。それはジョージ・ウィンストンのピアノの旋律にも似たような気持ちを

持つ。何だか目を閉じていれば聞き比べても、同じ風景が浮かんでくる。

もっともそんな感想は、こちらぐらいだろうが・・・。


                  といったところで、またのお越しを・・・。