足立正生監督による現代の寓話 | じゃんご ~許されざるおっさんの戯言ブログ~

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このブログは、田舎で暮らすおっさんの独り言を日々書き綴っています。ブログタイトルの「じゃんご」とは秋田弁で「田舎」のことで、偶然にもマカロニウエスタンの主人公の名前でもあります。何となく付けてみました。お時間があれば、広い心で御覧になってください。

どうも。富裕層は高い新米や銘柄米を食べ、貧困層は安い備蓄米や輸入米を食べるという二極化が進むでしょう。令和のコメ騒動は、コメの格差社会という結果をもたらすのです。

 

それはさておき、映画の感想文を書きます。今回は『断食芸人』です。

 

ある日、街の片隅にどこからかひとりの男が現われて座り込む。男に興味を持った少年は、話しかけても反応せず虚空を見つめるだけの彼の姿を写真に撮り、SNSに投稿する。翌日から男の周りには、少年の投稿を見た者たちが続々と集まるように。人々は男の存在についてそれぞれ持論を展開し、やがて男は「断食芸人」に仕立てあげられていく(映画.comより引用)。2016年公開作品。監督は足立正生で、出演は山本浩司、桜井大造、流山児祥、本多章一、伊藤弘子、和田周、川本三吉、田口トモロヲ、吉増剛造。

 

フランツ・カフカの原作を足立正生が監督した現代社会派ファンタジーです。足立監督は元日本赤軍という稀有な経歴の持ち主です。

 

断食芸人に仕立て上げられる男役を山本浩司が演じています。山本は無表情でほぼ無台詞ながら、存在感を出す良い演技をしています。オフビートな山下敦弘監督作品に出演してきた経験が活かされたのでしょうか。

 

断食芸人は何も主張せず、ただ座っているだけの空虚な存在です。その空虚な存在の周辺に集まる人々の空騒ぎを描くのが本作の主題です。それは現代社会の戯画化となっています。

 

しかし、その空騒ぎのセンスが古く、見ていると羞恥の感情が生じます。足立監督が長らく海外にいて、日本の流行に疎かったからでしょうか。それとも足立監督が高齢なので、若者文化に疎かったからでしょうか。笑いを取ろうと意図したシーンがすべっているのは痛々しいです。

 

更に、ラストで断食芸人に政治色の強い台詞を言わせるのはガッカリします。断食芸人が最後まで謎で空虚な存在であれば、それが観客への問いかけとなり、思考の糧になり得るでしょう。断食芸人の謎を明らかにするのは蛇足であり、要らぬお節介です。

 

これらのセンスの古さ、要らぬお節介というのは、本作や足立監督を過剰に持ち上げる左寄りリベラル界隈の悪い部分が出ているような気がしてならないのです。

 

★★☆☆☆(2025年8月7日(木)インターネット配信動画で鑑賞)

 

 

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