【民話】滝の沢の三太 | じゃんご ~許されざるおっさんの戯言ブログ~

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このブログは、田舎で暮らすおっさんの独り言を日々書き綴っています。ブログタイトルの「じゃんご」とは秋田弁で「田舎」のことで、偶然にもマカロニウエスタンの主人公の名前でもあります。何となく付けてみました。お時間があれば、広い心で御覧になってください。

民話(他) 滝の沢の三太

 

 むかしむかし隣村の山奥の滝のサという所に、三太という正直者の夫婦が住んでいました。

 沢の水は冷たくて、米は少しも出来ません。毎日毎日かま焼き(炭焼き)をして、細々と暮しを立てていました。

三太夫婦にはわらし(子ども)が、九つを頭に五人もある上に、あば(妻)はもう少しすると又びっき(赤ん坊)が生れるので、これから先どうして暮せばいいかと話合っていたが、わらしは神さまのさずかり者だからとあきらめていました。

毎晩あばは、たき火のあかりでまなぐ(目)をくさらせて、わしゃど(子どもたち)のぼど(着物)をつくろっていました。

「あば、あば、わしゃど大きくなれば、んが(お前)も楽になるんて、がばてけれ」

と慰めてはいるものの、ひえ飯でも栗飯でも、がつがつとせり合って食うわしゃどを見ていると、腰おれしてしまうのでした。

でも人の好い三太は、あばとわしゃどのためうんと頑張ろうと、今日も山に来て働いていました。

 たばこ時分になると、いつになくつかれて来ましたので、木の切株に腰をおろしていると、とてもいい気持にうとうと眠くなりました。ふと気がつくと、白衣白髪の老人が現れて、

「これこれ三太よ、お前は夫婦仲むつまじくよく働くので、これなる小袋をさずける」とといったかと思うと、煙のように消えて見えなくなりました。

夢かと思ったが、夢でない証拠に紫の小袋をしっかり握っていたのです。

不思議に思った三太は、小袋の紐を解いた刹那、三太のけっつが奇妙な音で鳴り出しました。

びっくりして立ち上り、きつねかむじなの仕業だろうと思い、きせるで一服し、あたりを見まわしけっつ(尻)をつねって見ました。痛い、気持を落ちつけてきくと、それは奇妙な言葉がくり返されているのです。

「じゃーじゃー、しっぷくしっぷく、さくらくれんじのさーかほが、さーかほが、ほんがくじ、きよめしかんのんのーはらどぅ、たいことかーねのなーらばなーれ、とーふやでこでゃねゃでゃ、たーんきたーんき」

という奇妙な文句がくり返し鳴っているのでした。

「あっこれはそうどだ(大変)こっそり投げてしまえ」とつぶやき小袋の紐をしめると摩訶不思議その文句がひたっと止まったのです。あばに話しても本当にしません。そして袋の口を明けるとその拍子に、あばのけっつが鳴り出しました。締めると止まります。さあ大変な小袋です、正直者の夫婦は考えました。

 これは、わしゃどのもちあそびにちようどいい」と。

そこで隣村の庄屋様へ行って買って貰うべし」と三太は小袋を手に山を下りました。

村に着くと、おてんとう様は西へかたむいていました、おそるおそる庄屋様の裏門をくぐり入って行きますと、からころと下駄の音がしてかみさま(奥さん)が厠へ入って行きました。

かみさまが厠から出て来たらお願いすべと思った三太は、軒先へ佇(たたず)み待っているうちに、何気なしに小袋をあけてしまったのです。すると大変です、厠の中のかみさまのおしりがあのなんともいわれぬ奇妙な文句で鳴り出したのです。

どうてん(びっくり)して夢我夢中で家へ逃げ帰ったのです。

心配のあまり眠れぬ一夜をすごし、村へ下りて見ると、村中は大変なさわぎとなっていました。

かみさまは恥しさと苦しさで納戸へひきこもったきり、どんな名医も薬も効がなく、つき人はただおろおろしているということでした。そこで三太はおそるおそる「俺が直してさしあげたい」と者頭に申し出ました。

おぼれる者はわらをも掴むの諺通り、つき人は旦那様へ伺いを立て許しを頂き三太をかみさまの納戸へ通してくれました。

すると細く長くかきくどくようにかみさまのおしりが人々に語りかけるように鳴りつづけていました。

三太はもう高貴な人のお傍へよるだけでも身体がふるえます、一心に祈りながらかくし持った小袋の口をそっと締めました。

すると、ひたっと音が鳴りやんだのです。

旦那様、はじめかみさまは大変なおよろこび、お祝のごちそうを腹一杯食べた上高脚の膳に金銀の宝物を一杯頂いて、三太は大喜びで家に帰って行きました。

 

【私なりの解説】

阿仁町伝承民話第一集にある三枚地区に伝わる民話です。今も昔も下ネタは手堅くウケることが分かります。お下劣映画『ピンク・フラミンゴ』の「肛門で歌う男」の元ネタです(嘘)。

 

 

 

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