【映画評】巨根伝説 美しき謎 | じゃんご ~許されざるおっさんの戯言ブログ~

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このブログは、田舎で暮らすおっさんの独り言を日々書き綴っています。ブログタイトルの「じゃんご」とは秋田弁で「田舎」のことで、偶然にもマカロニウエスタンの主人公の名前でもあります。何となく付けてみました。お時間があれば、広い心で御覧になってください。

どうも。減反政策と後継者不足で米作の生産体制が脆弱になった責任を、インバウンド消費の微々たる増加を理由として外国人観光客に押し付けようとする農林水産省の役人どもは大馬鹿野郎です。百姓なめんなよ!

 

それはさておき、映画の感想文を書きます。今回は『巨根伝説 美しき謎』です。

 

二・二六事件の将校たちに心酔する作家、三谷麻紀夫が率いる憂士会に入隊した青年は同性愛の世界に溺れていく。1983年公開のゲイポルノ映画。監督は中村幻児で、出演は長友達也、首藤啓、山科薫、金高雅也、大杉漣。

 

日本初の商業用ゲイポルノ映画です。当時は薔薇族映画とも呼ばれていたそうです。さぶ映画でもサムソン映画でもなく、薔薇族映画です。

 

憂国の作家である三島由紀夫、ではなく三谷麻紀夫が私設の軍隊である楯の会、ではなく憂士会を率いて、決起した後に切腹するという、あの事件をパロディー化した内容です。何故センシティヴかつリスキーな題材を選んだのか分かりませんが、同性愛を絡めたことによってポール・シュレイダー監督の『Mishima: A Life in Four Chapters』と同様、日本では未ソフト化作品です。

 

三谷役を演じるのは大杉漣です。ルックスを本人に似せないことによって、遺族からの抗議を避ける工夫をしているようです。大杉は男同士の絡みシーンをしっかりと熱演しています。

 

結末も含めて右翼を茶化しているようでありながら、望月六郎はきちんと練られた脚本を書いています。劇中に「左翼は思想、右翼は心情」という台詞があり、これはそのとおりです。左翼を名乗るには最低でもマルクスの『資本論』を読まなければなりませんが、右翼を名乗るには熱い愛国心があれば十分ですから。バカでも右翼になれます。

 

また三谷が切腹をナルシズムを充たす性的なプレイとする点は、三島が自伝的小説『仮面の告白』において、主人公が「聖セバスチャンの殉教」の絵画で初めての射精をしたことを踏まえています。国を憂いて自ら命を絶つ自分を殉教者に重ね、究極のエクスタシーを体感しようとする常人に理解できない超変態チックなプレイです。

 

これらは、あの事件についての一解釈に過ぎません。それでも前述の『Mishima: A Life in Four Chapters』や、若松孝二監督の『11・25自決の日 三島由紀夫と若者たち』も併せて観れば、何か真実めいたものが見えてくるかもしれないのです。

 

★★☆☆☆(2024年7月24日(水)インターネット配信動画で鑑賞)

 

 

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