【映画評】八月の濡れた砂 | じゃんご ~許されざるおっさんの戯言ブログ~

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このブログは、田舎で暮らすおっさんの独り言を日々書き綴っています。ブログタイトルの「じゃんご」とは秋田弁で「田舎」のことで、偶然にもマカロニウエスタンの主人公の名前でもあります。何となく付けてみました。お時間があれば、広い心で御覧になってください。

どうも。他人の仕事の価値を下げれば、自分の仕事の価値が上がると思って実行するのは、仕事ができない無能です。

 

それはさておき、映画の感想文を書きます。今回は『八月の濡れた砂』です。

 

夏の湘南を舞台に無軌道な青春を、スピードとセックスと暴力を通して描く(映画.comより引用)。1971年公開作品。監督は藤田敏八で、出演は村野武範、広瀬昌助、テレサ野田、藤田みどり、隅田和世、山谷初男、地井武男、原田芳雄、渡辺文雄。

 

日活がロマンポルノ路線に変更する前の最後の作品です。当時の日活で活躍していた原田芳雄と地井武男が出演し、作品に華を添えています。

 

藤田敏八監督のオフビート演出は、人によって好みが分かれるところです。当時の社会の空気を反映させた演出でしょうが、一時代の終焉を表すのに相応しい演出でもあります。

 

湘南を舞台にした無軌道な青春映画である本作は、明らかに『太陽の季節』から始まった太陽族映画を意識しています。同作は石原慎太郎の小説を原作とし、石原裕次郎のデビュー作である反体制的な映画です。本作以後、裕次郎は国民的大スターになり、日活は戦後の黄金時代を迎えました。

 

それから15年後、慎太郎は自民党の国会議員に、裕次郎は石原プロモーションの経営者になりました。それらは反抗的な若者にとって敵である体制側の人間です。本作では渡辺文雄がその役割を演じています。

 

もう時代は変わって、あの頃の日活は過去のものです。本作はオフビート演出によって往年の熱気が冷め切ったことを表し、過去の日活にけりを付けたのです。

 

★★★☆☆(2024年4月13日(土)インターネット配信動画で鑑賞)

 

 

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