民話(動物) いじわるたぬき
じっことばんばがありました。じっこが畑へ出て豆まきをしました。
「一粒千粒なーれ、一粒千粒なーれ」といって豆の種を蒔いていると、いじわるのたぬきがやって来ました。そしていつものように木の根っコに腰をかけて、豆蒔きのまねをするのです。
じっこは知らぬ振りをして「一粒千粒なーれ」というと、たぬきは「一粒一粒なーれ」といつものようにいじわるをして「じっこ」をからかいます。
じっこは「この野郎」といって追いかけてもとても早くてかないません。あんまりくやしいので、たぬきの腰かける木の根っコに「あめ」をどろりとたらしておきました。何も知らない「たぬき」は又やって来て「あめ」をたらしておいた木の根っコに腰かけました。
じっこは知らぬふりをして「一粒千粒なーれ」と豆を蒔くと、たぬきは得意になって「一粒一粒なーれ」という、「この野郎まんつ」とさけんでじっこは縄を持ってたぬきにかけよりました。たぬきは逃げようとしても「けっつ」にあめがついて立てません。もがけばもがくほど身体にあめがくっついて身うごき出来ません。じっこは「このヤロ、ふてぇヤローだ」といいながら縄でしばり家へ持って来て「晩げ、たぬき汁をつくれ」と、ばんばにいいつけてたぬきを「えろり」の「かぎのはな」につるして畑へ行って豆まきをしました。ばんばは庭に出て臼で粉をついていました。するとたぬきは涙を流し「ばんば、おれ粉コつでけるんで、えとまが縄コ解いでけれ」とばんばに頼みました。「それなばやじがねゃ」とばんばは粉コをはたいていると、「さっとや、さっと、おれ粉コはだげばすぐ縄でまるがれるんて」というので、ばんばは可愛想になって縄を解いてやると、たぬきはいきなりばんばを臼の中に入れ、きねでついて殺してしまいました。そして、ばんば汁を煮てばんばに化けてじっこを待っていました。
じっこは畑からかえってきました。
「やれやれ、今日はたぬき汁食うにぇぇが」と、わんに盛って食いました。
すると、たぬきの化けたばんばは正体を現わし、「じっこのばか野郎、たぬきにだまされてばんば汁まぐらてら」とはやし立てながら山へ逃げて行ったど。
トッチンパリンノピー
【私なりの解説】
阿仁町伝承民話第一集にある三枚地区に伝わる民話です。「かちかち山・前編」という内容です。後編では、深い悲しみの底にあるじっこを見て義憤に駆られたうさぎが、たぬきに対して残酷な復讐を代行するはずです。

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