【映画評】この世界の(さらにいくつもの)片隅に | じゃんご ~許されざるおっさんの戯言ブログ~

じゃんご ~許されざるおっさんの戯言ブログ~

このブログは、田舎で暮らすおっさんの独り言を日々書き綴っています。ブログタイトルの「じゃんご」とは秋田弁で「田舎」のことで、偶然にもマカロニウエスタンの主人公の名前でもあります。何となく付けてみました。お時間があれば、広い心で御覧になってください。

どうも。YouTubeで昔の「空耳アワー」の動画を観始めると、なかなか止めることができません。誰が言ったか知らないが、言われてみれば確かに聞こえる空耳アワーのお時間です

 

それはさておき、映画の感想文を書きます。今回は『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』です。

 

日本が戦争のただ中にあった昭和19年、広島県・呉に嫁いだすずは、夫・周作とその家族に囲まれ、新たな生活を始める。戦況の悪化に伴い生活も困窮していくが、すずは工夫を重ねて日々の暮らしを紡いでいく。そんなある日、迷い込んだ遊郭でリンという女性と出会ったすずは、境遇は異なるものの、呉ではじめて出会った同世代の女性であるリンと心を通わせていくが……(映画.comより引用)。2019年公開作品。監督は片渕須直で、声の出演はのん(能年玲奈)、細谷佳正、小野大輔、尾身美詞、稲葉菜月、潘めぐみ、岩井七世、花澤香菜。

 

こうの史代の原作漫画を劇場用アニメ化した『この世界の片隅に』に新たなシーンを追加したバージョンです(前作のレビューはこちら)。その新たなシーンが約30分もあるので、本作の上映時間が2時間48分というアニメにしては長尺になっています。

 

追加されたシーンは、前作にも登場した遊女のリン(声:岩井七世)のエピソードが中心です。すず(声:のん)とリンの交流、すずの夫である周作(声:細谷佳正)とリンとの過去が描かれます。

 

主人公のすずは、ぼうっとした性格で少女っぽいキャラクターです(それ故に、のんの声がハマっています)。しかし、リン絡みのエピソードが加わることによって、すずにも大人の女の心理があることが見えてきます。リンの世界が描かれることによって、すずの世界が更に豊かになったのです。

 

またリンの生業である遊女の世界を描くことによって、今もなお(特に日韓において)話題となる「戦争と女性」というテーマも盛り込まれています。声高に主張するのではなく、さりげなく描くのが本作の作風です。

 

本作では、戦時中の庶民の日常生活を丁寧かつ淡々と描いています。人間は何かの大きな物語に沿って生きているのではなく、小さな日々を積み重ねて生きています。そして、その日々を積み重ねた人の世界が、それぞれ重なることによって大きな世界は出来ています。

 

大きな世界ばかりを見て、小さな世界を見ない人間は進むべき道を誤ります。それは政治的指導者についてだけでなく、個々人についても言えることなのです。

 

★★★★☆(2020年2月27日(水)秋田県大館市・御成座で鑑賞)

 

 

【おまけ】暖かいストーブの前で毛づくろいをする御成座の看板ウサギ「てっぴー」です。

 

にほんブログ村 映画評論・レビューに参加しています(よろしければクリックを!)