【映画評】組織暴力 | じゃんご ~許されざるおっさんの戯言ブログ~

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このブログは、田舎で暮らすおっさんの独り言を日々書き綴っています。ブログタイトルの「じゃんご」とは秋田弁で「田舎」のことで、偶然にもマカロニウエスタンの主人公の名前でもあります。何となく付けてみました。お時間があれば、広い心で御覧になってください。

どうも。不正疑惑があれば潔く職を辞する大臣がいる国と、不正疑惑があっても意地汚く職に居座る大臣がいる国では、どちらがまともな国でしょうね。

 

それはさておき、映画の感想文を書きます。今回は『組織暴力』です。

 

暴力団同士の抗争から国際的な拳銃密輸事件に発展し、それらを摘発しようとする警察の奮闘を描く群像劇。1967年公開作品。監督は佐藤純彌で、出演は丹波哲郎、千葉真一、渡辺文雄、松村達雄、小松方正、近藤宏、井川比佐志、見明凡太郎、内田良平、月形龍之介、鶴田浩二。

 

佐藤純彌監督の初期作品です。出演者の顔ぶれが後世から見れば凄いです。警察側を演じるのが、丹波哲郎、井川比佐志、室田日出男という濃さです。暴力団側には、渡辺文雄と小松方正という大島渚監督作品の常連俳優がいて、更に松村達雄が組長役を演じるという珍しい配役になっています。井川と松村では、山田洋次監督作品を想起させます。

 

佐藤監督の演出には、やりすぎな暴力描写が特徴的です。『実録・私設銀座警察』では、内田朝雄演じる中国人ブローカーが若いヤクザにボコボコにされた上、片手を高温の天ぷら油でカラッと揚げられ、殺された後は腹ペコの豚に食いちぎられて餌にされるという、やりすぎ描写を見せました。それには劣りますが、本作でも千葉真一が演じるヤクザに対する警察の拷問や、ヤクザ同士の私刑には、やりすぎの感があります。

 

本作はヤクザ映画というジャンルに属しながら、政治的な裏テーマがあります。警察が行く手を阻もうとするヤクザ集団に消防車で放水するシーン、そしてヤクザが撃った流れ弾が一般人女性を失明させたことにより暴力団排除の世論が高まる展開は、60年安保闘争を匂わせます。後者の元ネタは、機動隊とデモ隊の衝突により樺美智子が死亡した事件でしょう。

 

警察は拳銃密輸計画を突き止め、空港で運び屋を目前にしながら法律の壁に阻まれ、手を出せません。何とか運び屋を現物所持で逮捕することは出来ても、黒幕である大物右翼(月形龍之介)を逮捕するには至りません。拳銃を「武器」や「米軍」に置換すれば、日米安保に対する批判になり得ます。

 

ヤクザ映画やポルノ映画においては、会社側から示された条件を満たせば、政治的な裏テーマを入れる自由があります。佐藤監督は、後に『暴力団再武装』という「労働争議」が裏テーマになっているヤクザ映画を撮っているので、本作で「日米安保」を裏テーマとしても不思議ではありません。

 

そのような裏テーマを抱える難題を約90分という娯楽映画の尺に収めた、佐藤監督は只者ではないのです(後に『北京原人 Who are you?』という問題作を撮っていますが)。

 

★★★☆☆(2019年9月24日(火)DVD鑑賞)

 

 

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