【映画評】ブンガワンソロ | じゃんご ~許されざるおっさんの戯言ブログ~

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このブログは、田舎で暮らすおっさんの独り言を日々書き綴っています。ブログタイトルの「じゃんご」とは秋田弁で「田舎」のことで、偶然にもマカロニウエスタンの主人公の名前でもあります。何となく付けてみました。お時間があれば、広い心で御覧になってください。

どうも。どれほど偉大な記録を残した名競争馬でも「お亡くなりになりました」ではなく、「死にました」と言われます。所詮は畜生ということでしょうか。

 

それはさておき、映画の感想文を書きます。今回は『ブンガワンソロ』です。

 

終戦直前のジャワで日本人脱走兵と現地人娘が織りなすロマンス。1951年公開作品。監督は市川崑で、出演は池部良、森繁久彌、伊藤雄之助、久慈あさみ、若山セツ子、小沢栄、高橋豊子、田崎潤。

 

深見伍長役の池部良は二枚目で、武上等兵役の森繁久彌は三枚目と、芸風に合った配役になっています。現地人娘サリヤ役の久慈あさみは、後に「社長」シリーズで森繁が演じる社長の恐妻役をレギュラーで演じています。本作から縁は生まれていたのでしょうか。

 

予算やスケジュールの関係上、実際にジャワ(現在のインドネシア)で撮影しているのではなく、日本国内で撮影していると思われます。そうであれば、美術のクオリティーが高く、美術スタッフは頑張ったのでしょう。

 

監督は市川崑とクレジットされていますが、実は別の監督が半分以上撮っているそうです。新東宝と市川監督が撮影交渉で揉めている間に、新東宝がスケジュールどおりに完成させるため、市川監督に無断で行ったとのことです。このトラブルが原因で、市川監督は新東宝を去っています。

 

その別の監督は誰だか分かりません。しかし、何かと斬新なアイデアを入れたがる市川監督の作風と比べ、凡庸な演出になっていることが、作品を観易くしています。それでも、市川監督とその妻である和田夏十が書いた脚本の影響は残っています。日本軍の体育会系男社会に対する嫌悪感は、非体育会系の市川と和田に共通するものです。また気が強く、行動的なサリヤのキャラクターは、和田のフェミニスト的性格が反映されたものです。

 

市川監督が本作で実行できなかった構想やアイデアは、後の『ビルマの竪琴』や『野火』で実行したのでしょう。本作の撮影交渉において市川監督が新東宝に要求した海外撮影は、『ビルマの竪琴』で実現しましたから。そうした作品比較をするためにも、本作には観る価値があります。

 

★★★☆☆(2019年7月18日(木)DVD鑑賞)

 

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