
人間とロボットが共存する2035年のシカゴ。ひとりの科学者が謎の死を遂げ、刑事デルは一体のロボットに疑念を抱いて捜査を進めるが……(映画.comより引用)。2004年日本公開作品。監督はアレックス・プロヤスで、出演はウィル・スミス、ブリジット・モイナハン、ブルース・グリーンウッド、ジェームズ・クロムウェル、シャイ・マクブライド、シャイア・ラブーフ、アラン・テュディック。
主演のウィル・スミスが製作総指揮も兼ねているので、自分が主役だという俺様ムードを端々に感じてしまう作品です。トム・クルーズと同じことをやっていると思えば、大して気になりませんけどね。
本作はアイザック・アシモフの『われはロボット』にインスパイアされたとあります。しかし、単に同作のタイトルとロボット三原則を拝借して、作品に箔を付けたかっただけでしょう。ロボット三原則の説明が無くても、作れそうなストーリー内容ですから。
ここまで本作の悪口しか書いていませんが、私は本作のように「人間の心を持ったロボット」を描いた映画は好きです。『チャッピー』も好きです。人間の心を持ったロボットを描くことは、「人間とは何か?」という哲学的な問いを含み、知的好奇心をくすぐるからです。
実のところ、本作が描いている対立構図は人間対機械のようでありながら、人間対人間です。本作の黒幕は「人類のため」という善意を大義名分にしており、その黒幕に操られたロボット達は与えられた規則を順守して人間を「管理」しているだけです。これは全体主義社会の特徴と同じです。全体主義社会の支配者も「正しい」スローガンを大義名分に掲げ、従順で勤勉な部下達は規則や命令どおりに民衆を「管理」するのですから。人間同士だと生々しい政治的・社会的テーマを、ロボットSFという形で戯画化したのです。
本作は2004年製作で、2035年の近未来を舞台にしています、丁度その中間に当たる2019年現在、本作で描かれたキャッシュレス決済や電気自動車の普及は現実のものになりつつあります。本作のSF考証担当者は優秀なようです。それならば、科学技術の進歩のみならず、全体主義社会化まで予見的中ということになりはしないかと、少々怖くもなるのです。
★★★★☆(2019年2月16日(土)DVD鑑賞)
そこまで難しく考えなくても楽しめる娯楽作品です。