
世界最大手の検索エンジンで知られるブルーブック社でプログラマーとして働くケイレブは、滅多に人前に姿を現さない社長のネイサンが所有する山間の別荘に滞在するチャンスを得る。しかし、人里離れた別荘を訪ねてみると、そこで待っていたのは女性型ロボットのエヴァだった。ケイレブはそこで、エヴァに搭載されるという人工知能の不可思議な実験に協力することになるが……(映画.comより引用)。2016年日本公開作品。監督はアレックス・ガーランドで、出演はドーナル・グリーソン、アリシア・ヴィキャンデル、ソノヤ・ミズノ、オスカー・アイザック。
女性型ロボットのエヴァを演じるアリシア・ヴィキャンデルが美しいです。容貌の美しさだけでなく、ロボット故に感情表現を抑制し、無駄な動きをしない難役をこなしています。しかも終盤には生身のヌードまで披露してくれます。ありがたや、ありがたや。
人工知能(AI)の問題を扱うSFだと思えば、(特に文系人間には)難しそうで取っつきにくい話です。しかし、人間と機械が騙し合う心理戦スリラーだと思えば、ハラハラしながら観ることができる娯楽作です。
AIと聞けば、スティーヴン・スピルバーグ監督の『A.I.』を連想します。頭半分が機械丸出しの女性型ロボットは同作にも登場しました。また同作にはセックス・ロボットのジゴロ・ジョーが登場し、ジョーの仕事はネイサン(オスカー・アイザック)が女性型ロボットに求めるものと同じく、人間の性欲を充足させることです。
『A.I.』の原案はスタンリー・キューブリックによるものです。それと関係あるのか、本作にはキューブリック作品の影響があるように見えます。無機質で閉鎖的な別荘の作りは『シャイニング』のホテルのようであり、同作のジャックのように、ケイレブ(ドーナル・グリーソン)の精神が混乱に陥ります。別荘は時々停電し、その時に非常灯が点くと部屋が真っ赤になります。これは『2001年宇宙の旅』の宇宙船ディスカバリー号のシーンと同じ配色です。
『2001年宇宙の旅』では人間(ボウマン船長)と機械(HAL9000)が騙し合い、人間が勝利しました。『A.I.』では人類が絶滅し、ロボットたちが生き残りました。さて本作では、人間と機械のどちらが勝利するのでしょうか。
またネイサンが肉体トレーニングに励むマッチョ男で、精巧な女性型ロボットを自らの「道具」として支配する状況の下、エヴァがそこからの解放に挑むのは、今年の#MeToo運動を予見しているかのようであり、面白いのです。
★★★★☆(2018年12月12日(水)DVD鑑賞)
ソノヤ・ミズノは日系イギリス人の女優です。