
英国人マジシャンのスタンリーはニヒリストで毒舌家だが、天才的なマジックの腕前で人気を博していた。ある時、幼なじみのハワードから、ある大富豪が入れあげている米国人占い師の真偽を見抜いてほしいと依頼される。魔法や超能力など存在しないと信じるスタンリーは、ペテンを見抜いてやろうと自信満々で噂の占い師ソフィのもとへ乗り込む。しかし、彼女の透視能力を目の当たりにして価値観を揺さぶられ、さらには容姿も性格も完璧な彼女にほれ込んでしまう(映画.comより引用)。2015年日本公開作品。監督はウディ・アレンで、出演はコリン・ファース、エマ・ストーン、アイリーン・アトキンス、マーシャ・ゲイ・ハーデン、ハミッシュ・リンクレイター、サイモン・マクバーニー、ジャッキー・ウィーヴァー。
ウディ・アレン監督が得意なロマンティック・コメディです。主人公スタンリー(コリン・ファース)がニヒリストで毒舌家という設定は、アレン監督本人が投影されています。
エマ・ストーンは、『アメイジング・スパイダーマン』から本作を経て、『ラ・ラ・ランド』に至り、スター女優の座に就きました。あまり外国人の顔の区別が付かない私は、彼女とアマンダ・セイフライド(『マンマ・ミーア!』など)を間違うことがあります。ちなみに本作のストーンと『マンマ・ミーア!』のセイフライドは、同じ役名(ソフィ)です。
ストーン演じるソフィの母親である、ベイカー夫人をマーシャ・ゲイ・ハーデンが演じます。ハーデンは『ミスト』で狂信的な宗教気狂い女を演じ、その演技が強烈な印象を残します。本作では、娘の霊能力を信じる母親役ですから、そういう役が得意なタイプなのでしょうか。
本作の時代設定は、1920年代です。これはインターネットなど存在していない、科学が現在より進歩していない時代ではないと、物語が成立しないからです。ソフィが霊能力で大富豪やスタンリーの素性を言い当てるシーンは、今だったら、こっそりスマートフォンで調べていたとか難癖を付けられるでしょう。
自信満々の饒舌な毒舌家が、恋の魔法の前では無力になっていくという筋書きは、アレン監督の『ギター弾きの恋』と同じです。そういう恋がアレン監督の秘めたる願望なのかもしれません。
終盤でドンデン返しがありながらも、スタンリーとソフィの恋はハッピーエンドになるというのが、素直な見方です。しかし、スタンリーほどニヒリストではない私でも、こう思うのです。あのラストは、人生に幻想なんて無駄だと信じていたスタンリーが、幻想のある人生の豊かさを受け入れた瞬間なのではないかと。
★★★☆☆(2018年11月9日(金)DVD鑑賞)
何故か本作にも『ラ・ラ・ランド』にもプラネタリウムのシーンがあります。