明治二十年発行の『普通讀本四編上』を紹介します。なお、読み易くするため、地の文は平仮名に統一し、文字化けを防ぐため、漢字は所々新字体に改めます。
第二十五課 會社の營業。
商業極めて盛なる國に在ては、富商と雖も、一己の資金を本とし事をなさず、其資金は必ず衆商相結んで集合し、或は株券を發して、廣く之を公衆より募り、大に其業を營むを常とす、これを名けて會社と云ふ。會社に數種あれども、就中營業の大にして、最も世間に裨益あるものは銀行なり。銀行には國立と私立との別あり、我が國に於て國立銀行を建んとするには、五萬圓以上の資金を備へて、始めて官許を得、今日我が國銀行の盛なるは、日本銀行、第十五國立銀行、第一國立銀行等なり。
凡そ銀行の業は、自ら商業を營むに能はざるもの、若くは此等の業を執るに暗きものの金を預り、これを他の資金に乏しき營業者に貸附け、有無相通じて、世間に沈滞の資金なからしめ、或は爲替を組みて、賣買授受の煩を省き、或は紙幣を發して、貿易の便を謀る等、一切金銭融通の路を開くものなり。

【私なりの現代語訳】
商業が極めて盛んな国では、富める商人であっても、一個人の資金を資本として事業をなさず、その資金は必ず商人たちが相互に契約して集合し、あるいは株券を発行して、広く資金を公衆から募って、大規模にその事業を営むことが常であり、これを名付けて会社と言います。会社には数種類あるけれども、特に営業が大規模で、最も世間に役立っているのは銀行です。銀行には国立と私立の区別があり、我が国において国立銀行を設立しようとするには、5万円以上の資金を備えて、初めて官の許可を得て、現在我が国の国立銀行で盛んであるのは、日本銀行、第十五国立銀行、第一国立銀行等があります。
おおよそ銀行の業務は、商業を営むことができない者、もしくはこれらの事業を執行する知識が乏しい者の金を預かり、これを他の資金に乏しい営業者に貸し付け、金の有る者と無い者を相互に通じて、世間に沈滞している資金を無くさせ、あるいは為替を組んで、売買における金銭授受の煩雑さを省き、あるいは紙幣を発行して、貿易の利便性を図る等、一切の金銭が融通するラインを開設するものです。
【私の一言】
明治時代における富国強兵の「富国」について教えています。銀行の仕事が世間に沈滞している資金を無くすことであるならば、大企業が莫大な内部留保を蓄えている現状では、日本銀行を筆頭に我が国の銀行は仕事をしていないということになりますね。
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