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刑務所を出たばかりのスティーブは、建設現場に職を見つける。しかしそこは、劣悪な労働条件の下で働かされる掃き溜めのような場所だった。ある日彼は、歌手志望の娘スーザンと出会う。お互いに惹かれあった2人は一緒に暮らし始めるが……(映画.comより引用)。1993年日本公開作品。監督はケン・ローチで、出演はロバート・カーライル、エマー・マッコート、ジミー・コールマン、リッキー・トムリンソン、ジョージ・モス、デヴィッド・フィンチ、ギャリー・J・ラミン。
タイトルの「リフ・ラフ」とは、最下層の人々を意味する蔑称です。映画の始めと終わりに映るのが鼠であるのは、彼らが社会において鼠同然の扱いしか受けていないことを表しています。本作はマーガレット・サッチャー政権下のイギリス社会におけるリフ・ラフの現実を描いています。
主人公のスティーヴを演じたロバート・カーライルは、後に『トレインスポッティング』や『フル・モンティ』で出世します。本作の出演俳優は工事現場で働いた経験がある者なので、カーライルも売れる前はガテン系仕事をしていたことになります。カーライル、売れて良かったねえ。
出演俳優が工事現場労働の経験者であるのに加え、本作は実際の工事現場で撮影されています。こうした細部へのこだわりが、物語のリアリティーを強化するのです。
日雇い労働者のスティーヴと歌手を夢見るスーザン(エマー・マッコート)は出会って同棲を始めますが、やがて破局します。その原因は、スーザンが違法薬物に手を出したからです。スーザンは自らの夢と現実生活とのギャップに耐えられず、心が疲弊してしまったのです。夢や希望を持つことが破滅に至るなんて、どれほど過酷な現実なのでしょう。
破局する前、スーザンはスティーヴに「人を信頼しなさい」と言います。しかし、新自由主義の下、経済効率一辺倒で人間を道具として使い捨てする企業にとって、信頼など邪魔なものでしかありません。故に社会は人を信頼しないようにシステム化されており、スティーヴは社会で生存するために人を信頼しなくなるのです。
劣悪な労働環境に我慢できず、その改善を合法的に主張した仲間が、それだけで解雇されます。そんな聞く耳持たぬ経営者とは話しても無駄です。怒りが頂点に達したスティーヴたちは、経営者に破壊行為で実力行使します。
スティーヴたちの行動を捉えて、暴力行為の煽動だと批判するのは、実に短絡的思考です。ケン・ローチ監督は映画を武器にして、社会の底辺で抑圧された弱者の感情を映像表現することによって、彼らに寄り添う人間的な共感を求めているのです。
★★★☆☆(2018年9月28日(金)DVD鑑賞)
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