【映画評】女教師 | じゃんご ~許されざるおっさんの戯言ブログ~

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このブログは、田舎で暮らすおっさんの独り言を日々書き綴っています。ブログタイトルの「じゃんご」とは秋田弁で「田舎」のことで、偶然にもマカロニウエスタンの主人公の名前でもあります。何となく付けてみました。お時間があれば、広い心で御覧になってください。

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東京近郊の中学校で美人教師が、中学生の一団に暴行されるという事件をきっかけに社会の裏面を操る大人たちの性関係をも生々しく描く、清水一行の同名小説の映画化(映画.comより引用)。1977年公開のにっかつロマンポルノ作品。監督は田中登で、出演は永島暎子、砂塚秀夫、山田吾一、宮井えりな、絵沢萠子、樹木希林、久米明、古尾谷雅人、蟹江敬三、鶴岡修、穂積隆信、福田勝洋。
 
キャストの顔ぶれが、にっかつロマンポルノとは思えません。その上、監督が田中登、脚本が中島丈博、撮影が前田米造と後にメジャーな場でも活躍するスタッフが揃っています。濡れ場シーンがポルノ映画にしては少なく、アクションシーンまである本作は一般映画に劣るところはありません
 
清水一行原作ということで、エロより教育界の腐敗に重点を置いて描かれています。それに、後年にテレビドラマ『牡丹と薔薇』を手掛けた中島が脚色することによって、ドロドロの愛憎劇の味付けも足されています。
 
音楽教師の田路(永島暎子)は、放課後の音楽室で江川(古尾谷雅人)率いる不良グループにレイプされたにもかかわらず、逆に田路が江川を誘惑したとデッチ上げの噂を流されます。レイプやセクハラの被害に遭っても、女性がハニートラップを仕掛けたなどと虚偽のレッテル貼りをされる現代と変わりませんね。
 
腐敗する教育界を「ヘドロ」呼ばわりする同僚の瀬戸山(砂塚秀夫)は、田路がレイプされるのをドアの隙間から窃視します。その真実を知りながら、江川の母親(絵沢萠子)と金銭的にも肉体的にもズブズブの関係にあるので、瀬戸山はレイプの証拠隠滅を図ります。瀬戸山のような人間こそヘドロです。「膿を出し切る」と言い切る行政の最高責任者が膿そのものという構図と同じですね。
 
虚偽の噂を流布され、レイプの証拠も隠滅された田路は教職員組合に助けを求めますが、組合役員(蟹江敬三、樹木希林)は田路の訴えをロクに聞きもせず、何の役にも立ちません。労働者の味方であるはずの連合が、政府の側に付き、労働者にとって何の役にも立たない労働貴族であることと似ています。
 
精神的に追い詰められた田路が自殺未遂を起こし、教師を退職してから、事態が急展開します。ある登場人物に対する見方が一変するのです。その転機となるシーンのBGMが泉谷しげるの『春夏秋冬』であり、そこで物語の軸が「体制からの抑圧」から「体制への反抗」へ変わります。
 
田路を追い詰めてきた腐った大人たちが報いを受け、隠蔽してきた事件が明るみにでたことによって、結局学校側の自己保身や無責任がマスコミに叩かれるシーンで映画は終わります。マスコミが叩きやすい相手に対して強気な態度に出るのは、昔も今も変わらないのですね。真の巨悪に対しては忖度して沈黙しているくせに何がジャーナリズムだよ!
 
何かと現在の情勢とリンクするのは、日本の悪い部分が40年前から何も変わっていないからでしょう。それ故、本作は今でも観る価値のある映画なのです。
 
★★★★☆(2018年5月18日(金)DVD鑑賞)
 
古尾谷雅人が中学生に見えないのは難点です。
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