【映画評】暴力団再武装 | じゃんご ~許されざるおっさんの戯言ブログ~

じゃんご ~許されざるおっさんの戯言ブログ~

このブログは、田舎で暮らすおっさんの独り言を日々書き綴っています。ブログタイトルの「じゃんご」とは秋田弁で「田舎」のことで、偶然にもマカロニウエスタンの主人公の名前でもあります。何となく付けてみました。お時間があれば、広い心で御覧になってください。

イメージ 1
 
港湾利権をめぐる暴力団内部と労働者たちの抗争を描くヤクザ映画。1971年公開作品。監督は佐藤純彌で、出演は鶴田浩二、丹波哲郎、待田京介、吉行和子、渡瀬恒彦、内田朝雄、室田日出男、渡辺文雄、小池朝雄、近衛十四郎、若山富三郎。
 
東映が任侠路線から実録路線へ移行する過渡期に作られた作品です。鶴田浩二、丹波哲郎、若山富三郎はベテランの域に入っており、実録路線になってからは主役ではなく、特別出演枠での出演が多くなります(ちなみに鶴田、丹波、若山は東映の生え抜きではないという共通点があります)。
 
監督が佐藤純彌なので、お得意の拷問シーンがあります。下っ端ヤクザ役の小林稔侍だけでなく、大物の若山まで酷い目に遭わされるのは驚きです。
 
数年後に大工業都市となることが見込まれる東島の港湾利権を手に入れるため、菊名会会長(近衛十四郎)は幹部の若竹(鶴田)を派遣します。警察を利用して旧勢力の津金組を潰し、港湾荷役を請け負った若竹は、長時間の過重労働が原因で労災事故が起きても、被害者の自己責任だと言ってのけるブラック企業経営者ぶりを発揮します。
 
ところが、荷揚げ中の事故で港湾労働者の兄貴格である石堂(若山)に命を助けられてから、若竹は港湾労働者たちを「労働力」ではなく、「人間」として扱うようになり、彼らの味方をするようになります。
 
しかし、そのタイミングで若竹組の資金調達が上手くいかなくなり、菊名会の幹部会で責任追及されます。このシーンはヤクザ映画というより、企業物の重役会議のような感じです。会議の結果、会長は若竹を東島の担当から外し、ライバルの神崎(丹波)を派遣します。
 
金銭にシビアな神崎は港湾労働者を酷使し、彼らの不満を高まらせます。担当を外されて謹慎処分中の若竹は、それでも港湾労働者のために何とかしようとします。石堂が神崎組で拷問され、殺されたことにより若竹と菊名会と労働者たちの緊張関係は頂点に達します
 
本作はヤクザ映画の体裁を取っていますが、『戦艦ポチョムキン』や『蟹工船』などの労働映画に類するものです。港湾労働者たちが組合を結成し、ストを決行する流れに時間を使っていますから。にっかつロマンポルノやピンク映画がヌードや濡れ場の回数を守れば、どんなジャンルを撮っても良いのと同じで、ヤクザが出ていれば、中身が労働映画でも良いということです。
 
それでも本作はヤクザ映画です。ヤクザとは人の道を外れた日陰者です。きっちりと足を洗ってカタギにならず、ヤクザのままで日向へ出ようとすることは許されません。『仁義なき戦い』において、松方弘樹演じる坂井鉄也が襲撃されたのは玩具屋で買い物をしている最中であり、ヤクザが市民的な幸福を求めることは死を意味するという鉄則が働いているからです。
 
本作の若竹もヤクザでありながら、港湾労働者というカタギの人間に共感したがために、悲劇的な運命を辿り、遂にはヤクザとして決死のケジメを付けることになるのです。
 
★★★☆☆(2018年5月11日(金)DVD鑑賞)
 
近衛十四郎は松方弘樹と目黒祐樹のお父さんですな。
イベントバナー

 

にほんブログ村 映画評論・レビューに参加しています(よろしければクリックを!)